粘着ラバーにも様々な種類が出てきて、選択肢が増えたことにより、使用するユーザーもかなり増えています。最近では粘着テンションと呼ばれる、従来の粘着ラバーよりも格段に弾みの強い粘着ラバーが登場し、より使いやすく、選びやすくなった印象があります。
今回は、粘着ラバーとはどんなものなのか、その仕組みを理解して、正しく使用することで、粘着ラバーの性能を、より発揮させることができるようになるはずです。粘着ラバーの特性について解説していきます。
回転がかかるラバーというのは間違いではないが
粘着ラバーに期待する性能、それは「回転量」ですね。粘着ラバーにすれば強烈な回転が生まれると思って手に取る人も多いと思います。確かにボールに与えられる回転量の最大値は大きくなりますが、これはあくまで最大値、絶対値ではないことを理解しなければなりません。
粘着ラバーとは、裏ソフトラバーのトップシート表面にベタベタする加工がされており、その粘着の強さはラバーによって異なります。強い粘着のものは、ラケットをひっくり返してもボールがラバーにくっついて落ちないものもありますし、粘着の弱いものには、ほとんど普通の裏ソフトと変わらない、言われてみれば粘着かなというものもあります。
全体的にラバーは硬めのものが多く、昔ながらの強粘着ではトップシートとスポンジが両方硬いものが多く、粘着テンションと呼ばれるものには、トップシートの硬さはそのままに、スポンジを柔らかくしたものや、ラバー全体の硬度を下げているものも一部ありますが、一般的に売られている高弾性裏ソフトやテンション裏ソフトに比べると、ラバーは硬いです。ラバーが硬いということは、ボールがゴムに食い込みにくくなり、強い力を加えてあげないと回転はかけにくくなるのです。
では、ナゼ粘着ラバーは回転がかかるラバーのように思われるのでしょうか。粘着素材が付いたトップシートは、通常のテンションラバーに比べると、ラバー表面の摩擦抵抗は大きくなります。この状態で、普通の裏ソフトラバーと同じくらい、ボールをラバーに食い込ますことができれば、摩擦抵抗が大きくなった分だけ、回転量は増えます。したがって、粘着ラバーの回転量は上限値がテンションラバーに比べると高いところにあります。
しかし、これは硬い粘着ラバーに対して、テンションラバーと同じくらいのラバーの使い方をした時の話です。硬いラバーに、同じ質量のボールが当たるわけですから、同じ食い込ませ方をするためには、より強い力、より速いスイングスピードでラケットを振り抜く必要があることはご理解いただけたでしょうか?
単純に摩擦抵抗が増えれば、ボールの回転量が増えるというわけではないのです。ラバーとボールが設置しているのはほんの一瞬です。ラバーの上でボールがコロコロと端から端まで転がれば話は別ですが、ボールは一瞬でラバーから離れます。その一瞬の間に、摩擦抵抗が大きくなり、硬くなったラバーを、食い込ませてラバーの引き攣れを起こせれば、粘着ラバーを上手く使えているという状態になるでしょう。
回転を生み出さないがためのクセ球もある
粘着ラバーの相手とラリーをしていると、相手がフラットにミートしてきたボールが、自分のラケットに当たって落ちるという経験をされたことは無いでしょうか?回転を生み出すための粘着ラバーが、反作用的に回転をかけずにボールを飛ばすという事象が起きることも理解しておきましょう。
ボールに与える回転は、ラバー表面の摩擦抵抗もありますが、ラバーのゴム自体が引き攣れて起きることがほとんどです。回転するボールが、ラバー表面に当たり、ゴムを引っ張っていきます。そのゴムが元に戻ろうとする力がボールに加わり、回転を与えるのです。特に上回転同士のラリー中には、この現象が頻繁に起こります。
高弾性ラバーや、テンションラバーの多くは、柔軟なゴムを使っているために、自然にラバーの引き攣れ現象が発生し、自然にボールが回転をして飛んでいきます。遅いスイングでも、速いスイングでもボールにはある程度の回転がかかっているのです。
では、硬い粘着ラバーではどうなるでしょうか。
強く速いスイングをしていれば、ボールは粘着ラバーに食い込み、強大な回転が発生する一方、当てるだけのブロックや、優しくゆっくりとしたスイングでボールに当てた場合には、粘着ラバーにボールが食い込むことが少なくなります。食い込みが少なければラバーの引き攣れ現象も起きにくくなり、自然にラバーがボールに与える回転の影響は小さくなります。
こういったことから、粘着ラバーでミート系の技術を使用すると、ナックル気味のボールが出たり、ボールが不規則な変化をしたりします。
オートマチックに回転がかかってしまう、高弾性やテンションラバーと違い、粘着ラバーでは意図的に回転量を調整したり、打ち出すボールの最大回転量と最小回転量の差が大きく出るので、粘着ラバーのボールはクセ球と言われたりもします。
粘着ラバーは、強いボールを簡単に打てるものではない
回転を強くかけたいので粘着ラバーを使いますというビギナー層やジュニア層が、コーチングをしていると多く見受けられますが、粘着ラバー自体は簡単に回転量を増やせる魔法の用具ではないということが段々と理解いただけたのではないでしょうか。
特に筋力の小さい子供では、粘着ラバーを使い切るだけの強いスイングはしにくい傾向にありますし、強いスイングをしにくいという面ではビギナーにも同じようなことが言えます。
単純に回転をかけやすくしたいというのであれば、敢えて硬い粘着ではなく、柔らかいテンションラバーの方が、抜群に回転はかけやすくなります。要は小さな力でも大きく変形するゴムのほうが、回転はかけやすいのです。
ただし、回転のかけやすいラバーは、同時にボールの回転の影響も受けやすくなります。
この点では、相手の回転の影響を受けにくいのが粘着ラバーでもあります。ラバーが薄く薄くなるほど、そして硬くなれば硬くなるほど、軽い接触をした際のゴムの変形率は抑えられるため、台上処理などでの小さなスイングをした際の、相手の回転の影響は受けにくくなり、プレーがしやすくなるものです。
ワールドラバーマーケットさんで取り扱っている極薄粘着ラバーは、レシーブしやすい裏ソフトラバーの頂点ですね。
まとめ
粘着ラバーのメリットデメリットをご紹介してきました。簡単に回転がかかる魔法の用具ではないにしろ、いくつかの特筆すべき特徴もあり、メリデメを理解できれば、利用する価値は高いラバーになります。安直な発想ではなく、きちんと特徴とメカニズムを理解して、粘着ラバーを使用していきましょう。
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