高校生、そして中学生の総合体育大会予選が進んでいますね。インハイ、全中へ向けて頑張ってほしいです。先日、私の住む仙台市でも中学生の地区予選が行われました。練習に励む選手たちを見ていると、自分の20年前を思い出します。
さて、最近は用具レビューが多くなっていましたが、今回は技術系のお話です。卓球を教わる際に、「バックスイング」をとって、と言われることがあると思います。この「バックスイング」という言葉、ちゃんと理解するのって難しいのです。多くの人はラケットを体の後方へ引くことと思っていますが、単純に引くだけでは卓球が上手くいきません。
色々な地域でコーチングする人を見ていますが、「はい、ラケット引いて」という言葉がバックスイングを取る際に使用されています。バックスイングを理解していない人に、ラケットを引けと言ってしまうと、本当に腕を使って引いてしまういます。これを避けるために、私は「バックスイングをとって」と伝えます。バックスイングを引く、バックスイングをとるというのは何が違うのでしょうか。
今回は、地味だけど改善すると上達が早くなる、バックスイングについて考えます。
バックスイングはスイングスペースを作るために必要なもの
題名にも書きましたが、スイングするための空間が自分の体の周りにあるときにはバックスイングを取る必要はないと考えます。1秒に満たない時間で、ボールを打って返球されてくる卓球において、無駄な動きをしている時間はないからです。
例えば、相手から強くボールを打たれて、ブロックをする際に、大きくバックスイングを取る選手はいませんよね。それは、自分が立っている状態で、すでにブロックに必要なスイングスペースが作られているからです。前陣でカウンターする際にも、あまりバックスイングをとりません。これは体の前方にスイングスペースがあり、そこへ向かってラケットを振るからです。逆にカウンターやブロックの際に、バックスイングを取ってしまう選手は、台とボールに対しての体の向きや足の向きなどを調整して、打球する空間を作ってみるところから始めると良いでしょう。
ここで、連続写真をご覧ください。
チキータをする際の3枚です。1枚目のラケット位置だと、回転をかけるための空間が足りません。そこで、胸元に空間を作るために、バックスイングを取ります。この時、肘から先だけでラケットを引くのではなく、肩から肘までの上腕二頭筋部分を使い、バックスイングを取っていきます。
肘の位置が前に来ることで、相対的にラケットが体に近づき、ラケットを引いているように見えますが、実際にラケットを引く意識ではなく、肘を出す、もしくは肩を出す意識をしています。これを、手首と上腕だけを引くようにバックスイングを取ると、思ったよりもラケットを引くことはできず、空間が作れません。そして手先を動かすため、スイング自体が安定せず空振りも多くなります。
バックスイングというのは、無い空間を作り出すために行うことであり、元々ある空間に対してラケットを引いてくることではないということです。バック系の技術では、どうしても体の前にラケットがあるため、窮屈になることがありますが、その状況を改善するために取るのがバックスイングになります。空間がもともとあるのであれば、その空間を使ってスイングすればいいだけです。わざわざバックスイングは必要ありません。
強いボールを打つためにバックスイングが必要だという方もいます。もちろんラケットを引いて、ボールにぶつければ、初速の速いボールは打てますが、それだけです。強く重いボールを打つためには、体の回転やキレなどが必要になるので、バックスイングだけでどうにかなるものではないです。バックスイングを引くことにより、体の回転や切り返しを使えなくなることもあり、強打の邪魔をしていることもあるんですよ。
フォアは無限に空間が広がる。引きすぎ注意の技術
バックスイングの指導をする際に、一番苦労するのがフォアハンドです。体の側面で打球するため、利き手の後方には大きな空間が広がるからです。腕を引こうと思えば、どこまでも引けてしまい、「引きすぎ」ている人が多いのがフォアハンドになります。
この連続写真は、ダメな例です。フォアハンドを引きすぎた状態になります。
最後の7枚目を見た時点で、引きすぎてフィニッシュ位置がおかしなことになっていますね。
問題点は3枚目の写真です。2枚目までは、非常に良い感じなのです。
何が問題かというと、2枚目までは体とラケットの位置が同じ状態で、テイクバックを取っているのがわかりますか?ラケットの位置はもちろん動いていますが、自分の体に対しては、ニュートラルの位置を守っています。腰と左肩が右後ろに向かって回転してバックスイングを取っているため、腕でラケットを引かずとも、空間を作れている状態です。
ここから2枚目の位置で、前に向かってスイングを開始すればいいのですが、3枚目では、腕を使ってさらに後方へとラケットを引いています。これが「引き」です。この動きを取ることで、
・打球点が落ちる(打つまでの時間が長い)
・ラケット面が開く(腕を後ろに引くということは、手のひらを上に向ける動きにつながります。手のひらを上に向ければ、より後ろに引けるようになるのです。)
・ラケット面が開くから、回転をかけにくくなる。またボールが打ちあがる。
といった具合に問題だらけです。この写真の結果として、ボールは相手コートに入っていますが、無駄な動きの多いスイングですね。できるだけバックスイングを取る(空間を作る)という行動は、2枚目の写真までに収めるべきでしょう。
2つ目の連続写真です。
ループドライブの写真ですが、先ほどとはバックスイングの取り方が変わりました。
厳しいコースに来ているので、時間的な余裕もない中でのつなぎのドライブになりますが、先ほどのフォアドライブよりもボールの質は高いです。
2枚目までは先ほどと同じですが、3枚目では腕を使ってラケットを引かずに、より後ろに空間を作るため、腰を回して左肩を入れています。この時右手は何もしていません。体の向きが変わることにより、自然にラケットが後ろに行っているだけになります。引くという動作を起こさずに、バックスイングを取り、打球に必要な空間を作っているわけです。
打球時には、腕をぶつけるように打っておらず、体の回転運動をしっかりとボールに伝えられています。ラケット面が変化することも少なく、シートで回転をかけることもできる打ち方です。フォロースルーは、小さく収まっていて、ここでも腕の力を使って打っていないことがわかりますね。腕で振ると、フォロースルーは顔の左側まで行き過ぎてしまいます。体の回転運動だけだと、しっかりと体の中心に収まり、コンパクトに触れて次の打球にも追いつくことができるでしょう。一発ドライブになりにくい方法です。
このスイングの改善点としては、右肩が下がりすぎているので、ループ系で打球点を落とす際には、自分の重心を下げたいところです。両肩の高さをできるだけ差がなく打ち込むことで、ボールはさらに安定するでしょう。
私の場合は「巻き込み」気味のドライブ(カーブ系)なので、右肩が下がり気味になります。20年この形でドライブを打っているので、容易に改善はできませんが、地道に改善中です。
ちなみに、この右肩の下がりが原因で、学生時代にはフォアドライブをあきらめました。ここまで右肩が下がるとスピードドライブが打てないためです。ドライブを使わなければ、肩の位置は下がらなかったので、当時はフォア表ソフトに転向し、ドライブを使わなくてもいい方向へとプレーを変えていきました。
バックスイングの意味、わかりましたか?
体の後ろにラケットを引くことがバックスイングではないということが、理解いただけたでしょうか。腕だけで引くスイングは、ラケット面を狂わせて、ボールの飛び出す方向も狂わせます。できるだけ、体のラケットの位置関係は、固定した状態で打球空間を作っていくことが大切です。
トッププロの連続写真や動画を見ると、かなり後ろまでラケットが行きますが、これは体の捻転が大きく、それだけ柔軟性と大きなねじりの力が働いているということです。全員が、同じバックスイングを取れるわけではありません。
バックスイングにここまで引くとか、ここまで後ろにという指標はありません。できることなら、バックスイングを取らないほうが、卓球は安定します。打球できる空間がないために、バックスイングを取る、この理由を忘れないようにし、必要最低限のバックスイングで、強い球を打てるようにしていきましょう。
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