ドイツ系ツルツルアンチの最終兵器として登場したder-materialspezialist社のE.S.P。その驚異的なスピン反転性能は、https://akaifuku-red29.com/2024/08/01/esp/でもお伝えした通り。でもマテリアルスペシャリスト社の野望はこれで終わりではありませんでした。
E.S.Pにブラックスピンエディションなるものが登場したではありませんか。何がブラックなのか、標準E.S.Pとどう違うのか、さっそくインプレッションしていきましょう。
効果的なスピン処理機が黒く進化した?
ラバー名になっている「E.S.P」は「Effective Spin Processor」の頭文字で、直訳すると「効果的に回転を処理する装置」です。E.S.Pはその名の通り、相手の回転を無効化ではなく「反転」処理するマシーンであり、今までに類を見ないくらい相手のボールの回転を残しまくる、スピン反転性能最強のアンチラバーでした。
そこに登場したのが、BlackSpin Editionなる新作。E.S.Pの特徴的なスロットのパッケージはそのままに、背景にはクマかライオンかトラか、いずれにしても獰猛な牙を持つ動物が描かれています。

E.S.Pの良さは知っていたので、発売と同時に3枚まとめ買いしちゃいました。それだけ期待が高いラバーです。厚さはノーマルE.S.Pと同じく、1.2mmにしています。
開封してみると、ツルツルシートは健在。

これではブラックスピンエディションなのか、標準タイプなのかは判別できませんが

ノーマルでは黄色の鮮やかなフカフカ(もうスカスカに近い)スポンジだったのですが、ブラックスピンエディションはスポンジも真っ黒。さらにスポンジには弾力が増し、しっとりでモチっとした硬めのモノへと変わっています。
スポンジ硬度等の記載は無いので、何度という表記はできませんが、明らかに変化したスポンジ。ノーマルは‘‘激落ちくん’’みたいなサラサラスカスカだったのですが、ブラックスピンエディションは‘‘アルカンターラ’’(クルマのシート表皮です、分からない方スミマセン)のような触感になり、スポンジ自体がしっかりしているのです。
ラバー全体硬度は、E.S.P(ノーマル)が62.5HCだったのに対し、ブラックスピンエディションは66HCとかなり硬くなったことが分かります。全体硬度だけで言えば、ディアボリックスペシャルの1.0(65HC)よりも硬くなり、打感も近くなっていそう。
ちなみに、カット後のラバー重量は26.6gとノーマルよりも1.2g軽くなりました。個体差もあるかもしれませんが、スポンジが硬くなった分のラバー重量増は、さほど気にすることは無さそうです。
これを待っていた!粒高OXのような打球感!
バックにアンチラバーを貼るようになって、明らかな格上にも初見殺しで勝ってきた私。それほどまでに暴力的なアンチラバーがE.S.Pなのですが、その打球感には少し悩まされていました。
もともと硬いラバーや薄いラバーが好きで、カチンという木で打った感触が好きだったのですが、アンチラバーを使うようになってから、どうしてもモサっとした打球感になってしまい、ブロックやプッシュの感覚が掴みにくくなっていたのです。
最もアンチで打球感が良かったのは、マテリアルスペシャリスト社のディアボリックスペシャル。これは粒高の1枚ラバー(OX)のようにカチっとした打球感が伝わってきて、ある程度操作も滑らず自在に出来ます。しかし、アンチラバーの最も美味しい部分のスピン反転能力(相手の回転を残す能力)は、E.S.Pに勝るものは無く、自分も使いにくいが相手も嫌がるからと、E.S.Pを使い続けてきました。
「E.S.Pがディアボリックスペシャルみたいになればいいのにな」
そんな思いを常に持っていた私に、ブラックスピンエディションは期待を大きく超える答えを出してくれたのです。
硬質になったスポンジは、E.S.Pのスピン反転性能を残したまま、はっきりとした打球感をプレイヤーに伝えます。それはまさに、粒高OXのアノ感覚。木の板で掴み、木で弾く、木でボールを打つ感覚が鮮明に出ていました。
これが1.2mmというアンチの中では標準的なスポンジ厚で出ているのが奇跡とも思える代物。ディアボリックスペシャルは1.0mmでコントロール性能を高め、前後の距離感をイメージしやすくしているのですが、E.S.Pブラックスピンエディションは1.2mmでスローなアンチ特有のプレーができ、強烈なスピン反転性能がありながら、イメージ通りのボールコントロールがめちゃくちゃやりやすくなりました。
何もせずに当てるだけなら安定して返球できる長い飛距離が出ますし、短く返したい時にはスイングを作ってあげてラバーを動かせば、スピンは反転しながらボールは短くなる。この出し入れが、ノーマルE.S.Pよりも圧倒的にやりやすい。
さらにカチッとした打球感が角度打ちを容易にし、粒高OXで出来るような対上回転でのハーフボレー打ちも可能にしています(結構ムズカシイですが、ノーマルE.S.Pでは絶対に無理)。これを打たれると、相手はほぼ詰みです。ある程度の球足の速さで、低く長く飛んでくる、スイングだけを見たら上回転のボールが、強烈な下回転なのですから。
もちろんプッシュもやりやすい。低弾性スポンジではない分、ボールの遅さもありませんし、何より押し感が良いのです。
こんなアンチラバーを待っていました。粒高慣れしている人が、アンチを使うなら、ディアボリックスペシャルかE.S.Pブラックスピンエディションで決まりです。
ノーマルとの大きな違いはブロックの長さ
とはいえ、ノーマルE.S.Pも良さが無いわけではありません。アンチに慣れている人なら、かえってノーマルの方が安心感があるかもしれませんし、どっちがアンチラバーらしいかと言われれば、迷わずノーマルE.S.Pを挙げます。
ノーマルE.S.Pの良さは、何もしない当てるだけのアンチブロックが、絶妙な遅さと短さ(ハーフロング)で飛んでいくこと。アンチラバーらしい低弾性スポンジが、ボールの速度と飛距離を落とします。相手は思ったよりも遅く、回転がめちゃくちゃ残ったボールに苦労するはず。勝手にツーバウンドブロックになりやすいのも、圧倒的にノーマルE.S.Pの方です。
ブラックスピンエディションは硬い分だけ、飛距離が出やすい。意図的に短くしようとしなければ、ツーバウンドブロックは出ないでしょう。バックのカットブロックで何もせずに嫌らしい球を出すことは、ノーマルE.S.Pよりも難しくなります。労せず短く切れたボールを出すなら、ノーマルE.S.P一択です。
ではブラックスピンエディションはどんな人におすすめかというと、やはりバックにピンプルアウトの変化ラバーを貼ってきた人たちでしょう。例えば、388C-1やアタック8の48度スポンジ以上の硬度帯を使っていた人。粒高でもフリクションスペシャルやスペクターなどの硬めのマニュアル系粒を好んできた人。これらに近しいアンチラバーの打球感を求めるなら、ブラックスピンエディションに勝るものはありません。
硬めのマニュアル系変化ラバーを使ってきた人は、自分で回転を作ったり消したり、ボールを長くしたり短くしたりができる人だと思います。こうした技能がある程度あって、暴力的な回転残りを体感したいなら、E.S.Pブラックスピンエディションが最適解。
逆に「勝ちたい!だからアンチ」とか、「変化系使ったことないけど凄そうだからアンチ(これから慣れていく予定)」といった、変化系ラバーに予備知識やイメージ、実際の使用感がほとんどない方は、ノーマルESPを使った方が楽に勝てるはず。特にドライブマンの攻撃を無効化し、守備が自分の攻撃になるのは黄色スポンジの低弾性ESPの方です。
このあたりの感覚や予備知識や技術の有る無しで、ノーマルかブラックスピンエディションかの選び方を考えると良いと思います。
53度M粒のアタックエイトやファントム、スピンファイアのOXなど強烈に硬くて薄いラバーを使い続けてきた私にとっては、低弾性スポンジは邪魔だったので、ブラックスピンエディションがドハマりしただけです。ノーマルE.S.Pが違和感なく使えるなら、そっちの方がアンチ使いとしては楽に成長できるのかなと思います。私の場合は、粒高の使用感が体に残ってしまっているので。
ということで、新作のE.S.Pブラックスピンエディションは、一言で表現すると「スピン反転性能を強烈にしたディアボリックスペシャル」です。ディアボリックスペシャルユーザーの方、またOXの粒高ユーザーでさらなる強烈な変化を求めている方は、E.S.Pブラックスピンエディション、一考の余地ありかと思います。
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