2023年レビュー第二弾。粒高ラバーの連投です。
今回紹介するのは、JAP.TECというブランドから発売されているFickle(フィックル)というラバー。最近の粒高では珍しい布付きを選ぶことができます。
レビュー動画の中では「打てる粒高」として評価されることが多いですが、実際の使用感はどうなのか、確認していきましょう。
まずは製造元を確認
まずは聞き馴染みのないJAP.TECというブランドから紐解いていきましょう。
JAP.TECブランドを立ち上げているのは、茨城県に拠点をもつ華栄貿易株式会社(※栄は火を二つ並べた冠の旧字体)です。1981年から裏ソフトラバーを中心に卓球ラバーと卓球用スポンジの開発・輸出を行ってきた会社のようで、OEMの完成ラバーやラケット、その他ゴム製品を扱っている会社でした。
海外にはゴム成型工場があり、大連華榮塑膠有限公司という会社が中国にあるのではないかと思います。
粒高専門エンジニア監修とありますが、ゴムの専門家が作ったということなのでしょう。
パッケージにはMADE IN JAPANの文字が。ただ、ラバーにはITTFの認証(38-001)は記載がありますが、JTTAAの認証を受けている表示はありませんでした。(ドイツ系・中国系のラバーではよくあることです。日本の試合で使えないということもありませんのでご安心を)
日本の卓球界には、新しいブランドが続々と登場しています。JAP.TECも、その波に乗った一つのブランドと考えればいいのではないでしょうか。もしかすると、OEMでJAP.TECがかかわったラバーを知らず知らずのうちに使っていたなんてこともあるかもしれません。
特徴的なグリップ力のシートと布
それでは、Fickleのスペックをご紹介していきます。
Fickleは英語で(天候などが)変わりやすい、気まぐれな、移り気なという意味がある単語です。どんな変化が出るか楽しみな粒高ラバーにとってはピッタリの名前ですね。
粒高ラバーで、種類は3つに分かれているようです。OX、OXの布付き、そしてスポンジありの3種。ただ、私が購入したWRMさんではOXとOXの布付きしか取り扱いが無く、スポンジありがどこで購入できるのか、調べきれませんでした。
ではシートの評価です。
光沢感のあるシートは、粒高ではあまりみません。テンション系の裏ソフトのようなグリップ感の強いゴムになっています。
パッケージから開けた途端に、シートがクルンと丸まります。テンションのかかったシートになっているようです。ちなみに写真は2週間程度貼った後に剥がしたラバーです。この状態でもまだ丸くなろうとするFickle。
光沢感のある表面とは裏腹に、ラケットとの接着面はくすんだ黒となっています。このくすみの正体が「布」です。
布付きとか布目とか皮付きとか、卓球のラバーには専門的な用語が多くて困りますね。
この布ですが、簡単に言うと繊維を編み込んだシートのようなもの。つまり、粒高のゴムシートの上に、文字通りの布(繊維の編み込み)が付いています。これにより、ただのゴムよりは分厚くなり硬くなります。そのため、球持ちが長くなる方向にチューニングできるということです。
超極薄のスポンジよりは硬く、ゴム感が残るため、OXの打球感を残しながら、ボールを比較的長く持てるという特徴が出てきます。
最近では見かけなくなった布付きの粒高。老舗ラバーではファントム0012∞が布付きラバーの一つに挙げられますが、私はそれ以外だと、存在を知りません。
また、同じラバーで布付きと布無しを選ぶことができる粒高は、Fickle以外にないと思います。
粒形状は台形+円柱で、表ソフトのような見た目
Fickleは粒形状にも特徴があります。
拡大写真がコレです。一般的には円柱だけで構成されることが多い粒高ラバーですが、Fickleは粒の根元部分が広がり、台形になっています。(ただ、粒の高さが高いので、部類としては粒高です)
この形状、表ソフトに多いんですよね。インパーシャルやアタック8など、変化が出るけど攻撃しやすい系のラバーに多いです。
Fickleの粒配列は横目。円柱部分のサイズだけを見れば、グラスディーテックスよりも細く見えます。そのため、粒の密度は、少し小さく見えるラバーです。
カット前のラバー重量は23.1gでした。158×153の少し大きめのブレードのラケットに貼り、カットした際の重量は18.2g、シート全体の厚さは0.58mmです。
布付きの分、一般的な粒高よりも3~4g程度重くなる感じ。シートの全体硬度は49.0HCでした。
49HCは粒高としては硬めの数値です。グラスやヘルファイアが35~38HC、トリックマスターで45.0HCとなっていますので、粒がふにゃふにゃに倒れるという感じは少なくなります。(ちなみに、打てる粒高の代名詞、カールP5V(旧カールPH)は62.0HCと圧倒的な硬さですが。)
打ちやすい粒には違いない
打球感のインプレッションについては、動画も作っておりますので、そちらでもご確認ください。
テンション粒という感じを受けていましたが、実際に打ってみると、それほど弾みは大きくありません。打球を受けて飛び出すボールのスピードは、グラスなどの方が速いように思います。
ボールの飛び方は、普通の粒高と同じ。下にスイングすると、ボールが上に持ち上がるというもので、使いやすいものでした。
粒自体はやはり硬く、若干細めですが、勝手に倒れて変化が付くというものではありません。また、切るブロックをしたときに、粒を自分で倒そうとしても、復元力の方が強くて、粒を倒しながら回転をかけるという使い方には向かないようです。
強いインパクトでフォアドライブをかけた時も、回転の感覚は同様で、粒が倒れる粒高なら、弧線が生まれるドライブを打てるし、結構回転もかかるのですが、Fickleはそれなり。布目で球持ちが長く、グリップ力の強いシートでボールを掴んでくれるのですが、それ以上に回転がかかるという感じはありませんでした。
アタック8のOXで、フォアドライブ振っているのと同じ感じ。直前に打ったBrutalの方が、ドライブの回転は綺麗で大きいです。
弾く系の技術はやりやすいですし、ブロックした時にボールが滑るという感じもありません。スポンジ付きの粒高や、変化表からの移行なら、違和感なくできるのではないでしょうか。
ナックルも出ますが、種別としては上ナックルが基本。相手がポロッとネットミスするようなナックルは多くなく、自分も打ちやすく相手も打ちやすいという系統のラバーです。
動画でも出ていますが、台上処理のツッツキが曲者です。相手の下回転に対して、裏ソフトのような角度とスイングでツッツキができます。しかし、このボールは下回転が切れることなく、上ナックルに近くなるので、スイングに相手が騙されることが多くなりそう。ツッツキのスイングでも、ボールが真っ直ぐ前に飛ぶので、ボールの軌道としては切れたツッツキなのですが、見た目と回転が合わないという現象が起きます。
ミート系の技術もやりやすいため、台上の低いボールで相手を崩し、ボールを上から叩きに行くという形が理想的です。ただし、OXのシビアさは残っているので、攻撃に関しては、相応の練習量と我慢して使い続け、ラバーを自分のモノにする根気強さが必要ですね。
粒にしたから勝てるという系統の粒高ではないのでご注意を。
ここからは、個人的な感想ですが、非常に近しいラバーを挙げるとすれば、ヤサカのコバルトX-2かなと。ただ、布がある分コバルトよりも飛距離が出やすくなっています。前陣で触った時に、少し長い飛距離が、プレーの邪魔をすることもあるので、この辺は好みかなと。
そもそもノンテンションのアタック8という、極めて弾みの少ないラバーを使う私なので、Fickleの飛び(飛距離)性能は、ちょっと邪魔な感じもありました。反面、OXにしては細かな面調整が必要ないので、気楽に打ち込めるラバーであることは間違いないですね。
どうしても弾みの少ないマニュアル感のあるラバーが個人的には好きなので、ちょっとテンションと布がある分、扱いにくさを受けてしまいました。布無しの方が、OXや薄めの表を使って、ラケットの打球感で調整する人には合っていると思います。
逆に、スポンジの恩恵を受けて、ラバーに任せて振れる人には、Fickleの布付きが良いかなと。スポンジありよりは、ナックルになりやすく、また止めやすさが出ますね。
Fickleに関して言えば、通常のOXはカキーンと弾いてラケットの硬さを感じながら打っていける人(元々OXの表を使っている人や薄めのスポンジの表ソフトユーザー)、布付きはスポンジありの粒高を使っている選手が好みそうだなと思いました。
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