ワールドラバーマーケット(WRM)さんとのコラボで、Xiaさんと卓球用具や、卓球の教え方の教科書、クロスステップ(卓球シューズ)についてなど、様々な話をさせていただいています。
様々な、普段聞けない情報、どんな卓球指導書や教本にも載っていない情報を多々話しているので、是非ご覧ください。
その中で、「23年前と現代用具購入の違い」という題目でトークをしています。今回は、ここでも出てくる話ですが、卓球の打球感覚の必要性について考えていきます。
昔は薄、今は厚から、なんで?
みなさんの使っているラバーの厚さはどのくらいでしょうか。また、初めて使ったラバーの厚さを覚えていますか?
今の30歳より上の世代では、初めて使ったラバーは「極薄」「薄」が多いのではないでしょうか。対して、最近の10代の選手は、2.0㎜や1.8㎜の厚さを初めてのラケットでも使っていることが多いのではないでしょうか。
どちらが偉い、どちらが良いというわけではないのですが、卓球というスポーツは「ボールを飛ばさないようにするスポーツ」ということを忘れてはいけません。卓球が上手くなるためには、「ボールを飛ばさない感覚」を養うこと、つまりはボールタッチを良くすることが必要になってきます。
では、この感覚を養うために何が必要なのかというと、弾まない体験です。
2.0㎜くらいのラバーを使っていると、ボールはある程度当てるだけで飛んでしまいます。相手コートに簡単に返球できるのですが、ここで問題なのは、自分の意思とは関係なくボールが飛んでいってしまっていることです。この状態では自分でボールを操っているとはいえず、ラケットに打たされている感覚に近いです。すると、強く打つ分にはいいのですが、台上処理やブロックなどの繊細な技術を覚えるための打球感覚が養われず、結果遠回りになってしまうことも多いです。
卓球の始まりはサービスであり、そのサービスをレシーブするためには、台上処理を中心とした、弱いインパクトを使ったものが多いのです。弱く当てて飛ばさない、これが結構難しいのです。
弾む用具=良いものというイメージがありますが、これは、ある程度の打球感覚を覚えて、しっかりスイングできるようになった人が、より強いボール、より速く回転のかかったボールを打ち込むために必要としているものになり、もちろんその人たちは「飛ばさない」という感覚をしっかりと持っています。
スポンジのない一枚ラバーや、極薄裏ソフトを使用すると、しっかりとスイング、インパクトをしないとボールは相手コートに入ってくれません。しかし、一度その感覚を覚えてしまえば、分厚いラバーはいくらでも使えます。
逆に分厚いラバーしか使ってきていない人は、楽に返球できる卓球ができているかもしれませんが、一枚ラバーや極薄裏ソフトを使うとミスが目立つはずです。そのミスは、自分がボールに対してしっかりとアプローチできていない証拠であり、ラバーによってボールを入れてもらっている証でもあります。ボールタッチは磨かれることなく、小技が不得意になる傾向が多いですし、台に近いところで卓球をするのが下手になってしまうのです。
卓球を簡単にするために、厚いラバーを勧めるショップも多いですが、逆に上手くなるためには遠回りになる可能性があることを認識しておかなければなりません。
このラバーいいですか?は無くなる
薄いラバーで磨かれた打球感は、ラケットとラバーの違いをすぐに感じることができます。例えば合板枚数の変化や、ラバーのゴム質や硬さの違いなどを感じることができ、自分の打ちやすい、使いやすい用具の傾向を早く知ることができるのです。
ラバーとラケットの組み合わせは、何千通り以上にもなり、すべての組み合わせを体験することは不可能です。その中で自分のベストマッチを探さなければなりません。よく、「このラバーいいですか?」とショップ店員に聞いたり、SNSで質問したりする人がいますが、この質問に対する回答は「卓球メーカーが自信を持って出している用具だから良いですよ」としか言えません。
自分の打球感覚と、ボールの飛ばし方、回転のかけ方などを総合して、硬い柔らかい、弾む弾まない、といった用具のカテゴライズのどこら辺を選べばいいのかがわかってきます。そもそもの感覚がなく、ラバーにまかせて打たされている人には、正直どんなラバーを与えても、厚くてある程度弾めば同じです。自分にとって良い用具を選ぶためにも、打球感覚を磨きあげることは重要なファクターになってきます。
マークV AD(極薄)にエクスター これを半年は使い続けた
私が初めて使ったラバーとラケットです。今の多くの卓球ショップでこれをお願いしたら「?」という顔をされることでしょう。
とにかくこの用具は弾みません。しかし、当時は弾まないのか弾むのかなんてことはわからずに、そのラケットで精いっぱいボールを返球できるように練習しました。
その後、プリモラッツ(廃盤)に、スペクトル(薄)とマークV(薄)を使って、中学校生活はほとんど終わります。中学の3年間で、中以上の厚さを使うことはありませんでした。
高校に入り、ここでボールの大きさが38㎜から40㎜へ変わったこともあり、用具変更を余儀なくされ、クリッパーウッド(薄板の廃盤)にスペクトルスピード(中)とマークV皮付き(中厚)を使用することになります。
正直、厚以上のラバーを使い始めたのは、社会人になってからです。
当時は、ラバーを厚くすることにより、オートマチックにボールが飛んでいくことがとても嫌で、自分で制御できないこともあり、厚くしなかったのですが、今では難しいといわれる薄いラバーで修業した結果、用具の変化やボールタッチには自信があります。
卓球が成長しなくなった、成長の度合いが遅くなったと感じる場合は、薄いラバーと飛ばないラケットを使って、ラケットとラバー、そして自分の体を使う感覚を磨いてみることで、扉が開くこともあるのではないでしょうか。
まとめ
卓球の上達には、とにもかくにも打球感覚です。これは、人に言われてできるようになるものでもないですし、自分自身だけで磨き上げられる自分の努力の結晶でもあります。打つ、当たる、響く、食い込むといった感覚を磨き上げ、一つ上のレベルに上がってみてはいかがでしょうか。
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