2020年4月に発売された、VICTASのニューラバー「V11」は、軽さと性能の高さを売りにした裏ソフトラバーです。丹羽孝希選手も使用するV15 と比較して、かなり軽量となったV11 をさっそく使用してみました。何が同じで何が違うのか、解剖していきます。
V11ラバー概要
VICTASのフラッグシップラバーV15エキストラのDNAを継承しつつ、V15のようなトップ層が使用するラバーよりも10%軽量化に成功したのがV11エキストラです。
ライトニングテンション技術を搭載し、トップシートは柔らかく作られているものの、最大のグリップを得られるようになっているようです。
パッケージはVICTASカラーのブルーで、シリーズのV15、VJ07、V01と大きく変わりません。スポンジ硬度はエキストラということで47.5度を使っているようです。
トップシートの光沢は少なめ、これはV15エキストラでも同じような光沢が見られました。VICTASのラバーは、輝きを少なめにしている印象がありますね。
スポンジはクリーム色のスポンジで、気泡は小さめ、スポンジの目は少々粗目となっています。触った感じでは、明らかにV15エキストラの方が硬いスポンジを使っているのではないかと感じるのですが、メーカー公表値では、V11もV15もエキストラは同じスポンジ硬度です。
メーカー小売り希望価格は5,720円となっており、店舗での実売価格は4,000円強といったところでしょうか。
同じエキストラでも少し柔らかい、V11エキストラの硬度に注目
VICTASでは、エキストラ、スティフ、レギュラー、リンバーというスポンジの硬さを示す表記がラバー名の後ろにつき、それぞれのスポンジ硬度を表しています。
したがって、V15エキストラとV11エキストラでは、同じ「エキストラ」となるので、スポンジ硬度は47.5度で統一なのですが、触った感じが明らかにV11の方が柔らかいのです。
ラバー全体硬度を計ってみると、V15エキストラは2.0の厚さで55.0HCなのに対して、V11エキストラは2.0の厚さで46.0HCとなりました。やはり軽いV11は、全体の硬さも柔らかいようです。
ラバーの重さは、カット前で59.4g(厚さ2.0)となっており、157×150㎜のブレードサイズに貼り付けたところ、カット後の重さは42.4gとなりました。かなり軽量なラバーであることがわかります。
直近で軽いなと感じたのがGEWOのネクサスEL Pro43ですが、こちらがカット後重量で45.4gでした。個体差はありますから、ほとんど同じくらいの重さです。ちなみに、ネクサスEL Pro43も全体硬度は46HCでしたので、数値上では似た感じのラバーになるのでしょう。
弧線は期待しないほうがいいが、弾道はV15エキストラと遜色ない
最近のハイパフォーマンステンションラバーは、テナジーやディグニクス、ファスタークなどに代表されるように、弧線の作りやすさを売りにしている部分が多くあります。
ユーザー側も、自動的に弧線を作り出してくれるラバーは使いやすく、ボールが台に収まりやすいので、人気も高いですね。
対して、VICTASのVシリーズは、V01からV15、VJ07と使い、今回のV11まで多種多様に打ちこんできましたが、弧線が自動的に発生するようなラバーではないということを、初めにお伝えしておきます。同社のラバーで弧線を作ってほしいのであれば、TSPブランドのスーパーヴェンタスあたりをお勧めします。
今回の試打環境について、ご紹介です。
ラケット:丹羽孝希WOOD ラバー:V11エキストラ ネクサスEL Pro43
ラケットの総重量は179gです。
まずはフォアでの使用感からです。
一発目の打感が、ちょっと違和感がありました。球離れが遅い感じがするのですが、ラバー全体でボールを包み込む感じの遅さではなく、トップシートに粘ってから飛んでいくような感じをうけました。スポンジまで食い込むラバーであれば、ボールを運ぶ感覚が出るのですが、V11はトップシートの上でグリップしている時間が長く感じます。そのため、球離れは良いのですが、ラケットとの接地時間が長く感じて、コントロール性も高く感じられます。
フラットにフォア打ちをしていくと、ボールは飛びすぎることなく、また手元で自然に上に上がるでもなく、スイングの方向に対して真っ直ぐ飛んでいきます。他社のテンション系裏ソフトとは全く違うボールの飛び方と打球感です。
V15シリーズを好きで使っている方には、この直線的な打球方向は馴染みのある物だと思います。私も個人的には好みの飛び方です。ただし、弧線系のラバーを使っていて、これに乗り換えると弾道の違いに初めは戸惑うかもしれません。
対上回転に対してのドライブは、ボールをしっかりと押さえることができ、さらにしっかりと回転もかかるので、スマッシュ系のような直線弾道で、強い回転のボールを打つことができます。ループ系の技術もやりやすく、前陣から中後陣まで幅広く対応できるラバーです。
対下回転の持ちあげやすさも上々です。グリップ力の強いトップシートは、しっかりと回転を与えることができますし、ボールの持ちが長いので、スイングをしっかりとしてあげれば、軽い力で持ち上がります。柔らかめのトップシートですが、相手のボールの回転に対してはさほど敏感ではなく、回転の影響も受けにくいでしょう。
バック面での使用も問題なしです。エキストラ硬度のスポンジですが、ラバー全体として柔らかめになっており、打感は43度のスポンジを搭載したネクサスEL43と似ています。スポンジで飛ばすというよりも、トップシートで飛んでくれるラバーになっており、前陣でのハーフボレーからブロック系の技術で振り回すのも容易です。バリバリに回転をかけて擦り上げるというよりも、軽いタッチでミートするほうが、よりラバーの素性が出やすいのかと思います。
カウンターが気持ちいい
丹羽孝希選手が使用し、稲妻カウンターを打ち込むV15エキストラですが、V11も負けてはいません。相手の回転に対して鈍感なトップシートと、直線弾道の球離れが、カウンタープレーを容易にしています。
非常に気持ちよく前陣でのカウンターが決まりますし、下がったところからの引き返しも、ライトニングテンションとは思えない強いボールを打つことができます。あいてのボールの勢いをそのまま利用する打ち方は、このラバーの最大の強みかもしれません。
スイングが大きく取れないバックハンドや、力の小さい女子選手のフォアなどで、気持ちよくカウンターを決めることができますし、スピードの速い現代卓球で、前陣に張り付いてプレーする選手にもおすすめです。
ライトニングテンションという言葉に、「V15エキストラよりも性能低いんでしょう?」と感じるかもしれませんが、トッププロ以外の選手層では、V11の方が良いボールが打てる可能性は高いと思います。ラバースペックとしてはV15の方が高いのですが、このスペックを全て使い切るには相当の腕と力が必要です。対して、V11は、一般層が使いきれる性能の高さを備えており、ラバースペックをしっかりと使い切ったプレーができます。使いこなせない高価な包丁よりも、使いやすいお手頃な包丁の方が料理は捗ります。これと同様に、やみくもにスペックだけが高くて使いこなせないのでは、宝の持ち腐れとなってしまいますから、一般層が使用するにはV11がちょうどいいラバーになってくれるはずです。
まとめ
他社のスタンダードラバーとは、ちょっと方向性を変えたV11エキストラですが、VICTASらしい個性の立ち上がったラバーです。ジュニア層から使えそうですし、女子選手でも強いボールを打ちこめる、「使いこなせるハイスペックラバー」を実現しています。強いボールから相手の意表を突く抜いたボールまでをしっかりと操作でき、ラバーに合わせてプレーヤーが卓球をするのではなく、プレーヤーの意思を汲んでラバーが仕事をしてくれる、良いラバーに仕上がっています。
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