2021年も赤井福のラバーレビューです。年明け一発目は今回はスティガから発売されている裏ソフトラバー「DNA PRO H」(後述はDNA)を打っていきます。年末に注文したラバーが、年をまたぎ、大雪で遅れ、やっとのことで到着しました。いつものように、自腹購入したラバーレビューですので、忖度なしで評価していきます。
気泡の大きな硬いスポンジ、ただものではない予感が漂う外見
スティガ社はどうしてもラケットのイメージが強いメーカーです。オールラウンドエボリューションやクリッパーウッドなど、高品質で万能なラケットを数多く提供してくれています。筆者も現在のタイニーダンサーを使うまでは、ずーっとスティガラケットのユーザーでした。
ラバーのイメージが強くありませんが、ジェネシス、マントラ、エアロックなど多くのラバーを出しています。縦目の粒高バーティカルシリーズや、35歳以上のスピードグルー世代の表ソフトユーザーにはクリッパなどでもおなじみですね。
縦目の粒高? バーティカル20レビュー【卓球ラバーレビュー】
そんなスティガラバーのフラッグシップともいえるDNAプロシリーズ、スポンジ硬度別にS(42.5度)、M(47.5度)、そして今回レビューするH(50度)がラインナップされています。スポンジ硬度50度と聞くと、ちょっと硬すぎでは?と敬遠してしまう方も少なからずいますが、一体このラバーはどんなものなのでしょうか。早速外観から見ていきましょう。
ブラックのパッケージに包まれて、高級さも出ていますね。
トップシートは、くすみのある赤です。光沢感は少なく、ヤサカのラグザXあたりのシートに似ています。ラバーの中央を示す矢印があるのが、貼り付けるユーザー想いのラバーです。
スポンジはオレンジ色です。写真で見てもわかりますが、かなりザラザラとしていて気泡が大きいスポンジとなっています。一般的に硬めのスポンジは引き締まった表面をしていることが多く、気泡も少なめです。逆に柔らかいスポンジの方が、ザラザラ感が大きいことが多いですね。
接着剤を塗った後の写真です。ポツポツと気泡が目立つのが分かります。表面はザラッとしているのですが、接着剤の吸い込みは少なく、この辺りは硬度の高いラバーの性質をそのまま反映しています。
今回は厚さ1.9mm(厚)を使用しています。カット前のラバー重量は69.2gでした。
157mm×150mmのラケットへ貼り付けた、カット後のラバー重量は48.5gです。
ラバーのトップシートとスポンジを合わせた全体硬度は52HCとなります。
同程度の全体硬度のラバーは、ファスタークG1(52.5HC)、マークV皮付き(52.5HC)
一例としてですが、VICTASのV15エキストラはスポンジ硬度が47.5度で、全体硬度は55HCです。また、スポンジ硬度が同じ50度である、GEWOのネクサスELプロ50の全体硬度は54.0HCとなります。
スポンジ硬度50度と聞くと、硬すぎて使えなさそうと思いますが、全体硬度で見るとファスタークG1とほぼ同じでした。数値から見る印象としては、そこまでのパワーヒッターでなくても使うことができるのではないかと思います。トップシートが適度にしなやかなラバーということにもなるでしょう。
この価格で、この性能?DNA侮ることなかれ
では、試打に移ります。ラケットのセットアップは下記の通りです。
ラケット:ヤサカ ギャラクシャ(7枚合板・特殊素材無し)
ラバー:DNA PRO H
ラバー:ティバー クァンタムXプロ
ラケット総重量191.1g
まずはフォアロングから
スポンジ硬度50度というのは嘘のような打感です。フラットにボールに当てても、カチンという音はせずに、しっかりとボールを捕まえて離してくれるので、安定して前方へ飛んでいきます。硬度50度に近いラバーは多く打ってきましたが、ミート系の軽打だと、ボールを掴みきれずに落ちてしまうことが多いのですが、DNAではそういった不安がありません。強く当てなくても、ボールはしっかりと飛んでいく、この辺りが全体硬度の低さとマッチングしている感じです。
ボールを掴みはするものの、そのまま持ち上げようとする力は大きくないので、比較的直線弾道で飛んでいきます。テナジーのような手元でグッと持ち上がって、高い弧線が出る感じではなく、弾道的にはV15エキストラ等に近いです。
フォアでドライブをしてみます。
対上回転のドライブでは、手元で弧線を作ることができます。弾みすぎるラバーでは、弧線のコントロールが難しいですが、自分の飛ばしたいイメージに近いボールが連続して打てるのは、ユーザーとしても安心感がありますね。基本的にはスポンジまでしっかりとボールを食い込ませて打ちこむのがベースの打ち方となりますが、トップシートだけでチョリった時でも、シートが柔らかめである程度の弾みがあるため、不完全なスイングでもボールを運んでくれました。
ドライブの回転量は、平均するとそこまで多くはないですが、かければしっかりかかるラバーです。相手コートで伸びるボールというよりは、空中で伸びていく力が強いボールが出ていき、落下点に近づくほど急激にボールが沈んでくれるので、思った位置よりも深くボールが入っていきます。
後に下がった状態からでも、高さを出して持ち上げるドライブをする必要はなく、弾きかける打ち方で、ボールが進んでいくので、中陣からの引き合いで、コースを変えてストレートという場面でも、速く低いボールが入っていきました。
対下回転のフォアドライブ
トップシートは柔らかめのため結構回転をくらいます。ただし、ボールによるラバーの引き攣れよりも、スイングによるラバーの引き攣れをしっかりと受けてくれるラバーなので、ボールは比較的簡単に持ち上がります。ハード系のラバーの中では、対下回転は持ち上げやすいラバーでしょう。ボールの回転なりに入れることもできますし、引っ掛かりの強いシートなので回転の上書きでボールを入れることもできます。
バックロング
スポンジで飛ばすというよりも、シートで飛んでいる感じが強くなります。フォアのようにインパクトが無くても、ボールは安定して返球されていきました。少し回転をかけながら打てる人は良いのですが、完全ミートのバックハンドとなると、ちょっとスポンジの硬さが顔を出してきて、ボールを持つ前に落ちるという感じが数回ありました。
バックドライブ
回転をかけるには良いラバーです。食い込みも適度で、球離れもよく、バックハンドをしっかりと振っていくスタイルで使えば、鬼に金棒状態でしょう。やや直線的な弾道に慣れてしまえば、相手にとって刺さっていくボールが出ていきます。飛距離も出るので、バックで引き返すことも容易です。
対下回転のバックドライブはちょっと注意が必要です。決して柔らかいラバーではないので、しっかりとしたスイングスピードと当て方が必要になります。初級者から中級者でもバックハンドがあまり得意でない方が手を出すと、難しい卓球を強いられる可能性があるでしょう。
台上処理
ボールを掴みきる前に、トップシートで弾むので、軽く当てたツッツキや、当てるだけのストップは浮きやすくなります。また、自分から回転をかけない限りは、回転に対するラバーの反応は敏感なので、ミスも多くなるでしょう。
対してチキータや切るストップ、切れたツッツキはやりやすく、ボールは安定します。自分が回転をかけようとすると、ラバーが自動的に上書きモードに入る感じです。センシティブさと鈍感さを場面によって使い分けている感じがします。
まとめ
特徴がないのが特徴といったようなラバーです。オールマイティさは凄く好感触でした。打感としても50度という硬さは感じず、フォアにもバックにも、このくらいの硬さがベストなんじゃないかなと思うくらいです。DNA pro Mがスポンジ硬度47.5度ですが、もしも同じトップシートが貼ってあるとすれば、こちらは柔らかすぎるように感じる気がします。それほどに50度が使いやすい。
硬いラバーはちょっと、と敬遠してきたユーザーでも一度試してみる価値があると思います。お値段もメーカー小売りで5800円+税、市場価格では4500円程度で、高価すぎるラバーでもありません。この価格でこの性能はちょっと驚きました。
本格的な裏裏のドライブマンにも使ってもらいましたが、そちらの評価も上々です。バランスの取れたハイスペックラバー、トップ選手だけでなく、一般ユーザーにも使いやすい一品でした。
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