卓球のコーチングをしながら、ふと思うことがありました。生徒さんに「得意な技術ってなんですか?」とか、「何をするのは自信ありますか?」と聞くと、大体が攻撃系の技術を口にします。
例えば「フォアドライブ」「バックドライブ」「スマッシュ」「チキータ」などなど。
逆に、苦手な技術を聞くと多くが守備系の技術を口にします。
例えば「ブロック」「ツッツキ」「レシーブ」といった具合です。
この現象、ちょっと不思議に思っていましたので、紐解いていきましょう。
攻撃だけが評価されることではないのに、高く評価される攻撃技術
プレーヤーの中でも、コーチの中でも、選手の評価をする際に攻撃系技術を取り上げて褒めがちです。
「あいつはドライブがうまい、一発の力がある」「バックドライブからの連続攻撃が上手いから勝てるんだ」など、勝利に直結する技術として、攻撃系技術が語られます。
間違いではないですが、これはある程度のレベルが高まった状態での話のこと、中級者層が上級者層に勝つためには、攻め込んでその確率を高めていき、勝っていくしかありません。上級者対上級者も同様です。
ただ、中学生や高校生の地区大会レベルではどうでしょうか?攻撃することに重きを置きすぎて、攻撃しすぎて自滅するという負け方を経験したことはありませんか?この層だと、ツッツキやブロックなどの守備系技術が上手い方が勝ちやすくなります。それでも、中学生のコーチや監督は、日頃から攻撃技術に目を向けて、そこに対して褒めることしかしない傾向にあり、選手の側からも、得意な技術として攻撃系技術しか思い浮かばない傾向にあるでしょう。
守備的技術に目を向ければ、卓球の幅が広がり、勝ちにもつながる
私の中高生の時のコーチの話になりますが、私は個人的にあまり攻撃面を褒められたことはありませんでした。
ヒョロヒョロの学生だった私、筋力はなく体の線も細い、握力は30kgもありませんでした。ドライブ、スマッシュにそこまで威力は無く、攻撃系技術はあまり褒められたものではなかったのです。
しかし、上手かった技術が二つだけありました。それが「ブロック」と「ツッツキ」です。
この二つの技術については、大変よく褒められました。次第に自分の武器は、派手なドライブやスマッシュではなく、ブロックとツッツキだという風に認識します。
相手のコートに一本でも多く返せる安定感のあるブロックと、低く切れたツッツキを磨き続けます。
ブロックに変化を生ませるために、フォア表ソフト(スペクトルスピード)、バック裏ソフト(マークV皮付)という、当時の中ではかなり硬めのラバーを貼って、相手を幻惑する様に言われます。
ツッツキも硬いラバーに変えたことにより、より切りやすくなりました。
当時の私の下回転に対する唯一の攻撃方法はツッツキに対する「角度打ち」だけです。ドライブはできませんでした。
この角度打ちのスピードと精度を上げるためにも、自分のツッツキが切れていないとダメです。
バックツッツキからのフォア角度打ち、相手に先に持ち上げられたら前陣ブロックで振り回す、という超前陣攻守卓球で、地区予選は楽に勝ち上がれるようになりました。
当時のコーチからこの視点をもらっていなければ、おそらく子供の頃の私は派手な技術に固執して、破滅型の卓球になっていたでしょう。
ドライブ練習ではなく、ブロック練習。目線を変えれば練習の質も変わる。
中高生のブロック対ドライブのワンコース練習を見ている時に、ドライブマン側しか練習にならない的な気持ちを見ることがありますが、これは全く逆だと考えます。
これはブロック側の練習なのです。
ブロック側がしっかりと一定にボールを返し続けなければ、この練習は旨味が出ません。つまり、ブロック側が上手くなることが、この練習のキモであり、最も重要なファクターです。
これをドライブ練習と取ってしまうと、ブロック技術は全く進歩せず終わってしまいます。
守備系技術を自信を持って自分の武器とする
様々なところに卓球教室があったりクラブチームがあったりと、卓球人口は増えていますね。その中で、コーチ紹介、先生紹介みたいな欄が、それぞれのホームページにチラホラと載っています。中には得意な技術な欄なんてのもあります。
そこにツッツキとか、ブロックとか言いにくいなぁって言う風潮がありますが、得意なものは得意と自信を持って言えるようになりましょう。
ブロック得意でいいんです。ツッツキ得意でいいんです。
これが武器なら、その武器を使って卓球を組み立てていきましょう。
両膝にガタが来て、バックドライブを振れなくなった私。でも原点に帰れば、バックドライブは使っていなかった。それはツッツキとブロックが武器だったから。
それぞれの選手には、それぞれの形があります。
それを金太郎飴を作るように、みんなドライブ型では、個性が死んでしまう人も出てくるでしょう。
自分の得意とか武器はなんなのか、それをじっくり分析すれば、自ずと自分の形が見えてきて、強くなる道が見えてくるのではないでしょうか。
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