TIBHARラバーの最高峰にあるエボリューションシリーズ、中でも最新作のMX-Dは、性能の高さがトッププロから一般層まで、幅広く支持されているラバーです。そして、愛用者が多いのが回転重視のMX-S、バック面で使用する人が多いラバーになります。
フラップラバーとなるエボリューションシリーズで、DとSの違いはどこにあるのでしょうか。TIBHARと契約するYouTuberの「わった」さんも「ユージ君」も、フォアにMX-D、バックにMX-Sを使用しています。ハイブリッドACにDとSのラバーを貼り付けて、その差を比較していきます。
硬いMX-D、柔らかいMX-Sというイメージは正しいのか
まずはメーカー公表の基本的なスペックから確認していきましょう。
エボリューションMX-D(7,150円)
・回転系テンション OFF+
・スポンジ硬度51.5度
・厚さ1.9mm・2.1mm
エボリューションMX-S(6,600円)
・回転系テンション OFF+
・スポンジ硬度45.7~47.7度
・厚さ1.7mm・1.9mm・2.1mm
メーカー公表の数値では、スピードが10、スピンが5、MX-Dの方が高い数値を出しています。
実際のところ、このスポンジ硬度とスピード・スピンの値は、違いがどの程度あるのでしょうか。まずは、見た目の違いから検証していきます。
トップシートは、MX-Dの方がゴムの張り感が強めで、つるっとした印象です。また、シート自体はMX-Sの方が厚めでしっかりとした印象。大きな違いはありませんが、Dはラバー全体で弾みを出すタイプ、球離れは早そう。Sはしっかりとしたトップシートで、ボールをつかむタイプのラバーに多い見た目です。
スポンジ面を並べてみました。左がMX-D、右がMX-Sです。
色はDの方が少し暗め、Sが明るいオレンジとなっています。大きく違うのはスポンジの密度と気泡の感じです。
同じく左がD、右がSですが、スポンジ硬度の高いMX-Dの方が、ザラザラした見た目が目立ち、気泡も大きくなっています。接着剤を塗布すると、なおさらその差は大きく見えます。MX-Dの方が吸い込みがよく、MX-Sは薄く塗っても接着剤の吸い込みが少ないスポンジです。
公表されている硬度の差とは、逆の印象を受けるスポンジ面。Sの方が柔らかいのに目が詰まり、Dが硬いのに気泡がたっぷりと、一般的に柔らかめと言われるラバーに多く見られる所見が、硬質なMX-Dにあり、ハードラバーに見られる所見がMX-Sにあります。ここには、私も「それ逆じゃない?」ってツッコミたくなりました。
同じ厚さで、ラバー全体(トップシートとスポンジを合わせた)の硬度を計ってみると、MX-Dが50HC、MX-Sは51HCでした。差はわずか1ですが、スポンジ硬度の数値とは真逆になった全体硬度の数値。それだけ、MX-Sのトップシートが、厚く硬めのシートになっていることを意味するのでしょう。
同じ大きさに切った、ラバーの重さはMX-Dが50.3g、MX-Sは51gでした。接着剤の量はほとんど同等にしていますので、わずかにMX-Sが重いということになるでしょう。
ボールを打つと、硬さの印象はほとんど同じ
ボールを打つ前の数字上では、メーカー公表値と、実測値の印象が違うエボリューションMX-D・MX-S。実際にボールを打ってみると、どんな違いが出るのでしょうか。
ラケットはハイブリッドACインサイド、ラバーはMX-DとMX-Sの1.9mmを使用します。
対上回転
フォアバックともに、軽打ではそこまで違いが大きく出ません。若干ボールの飛び出し方向が変わり、MX-Dは前方へ飛ぶのに対し、MX-Sは上方向に飛んでいきます。それに伴い作られる弧線の大きさは、MX-Sの方が大きくなりました。
対して、強くボールを打っていくと、MX-Dの直線軌道は少し上方に修正されます。MX-Sのボールの上がり方は変わりません。比較すると、MX-Dの方が弧線が低く深いドライブになり、MX-Sの方が弧線が高く、浅めにコートに収まっていきます。
元々表ソフトユーザーの筆者は、ボールの飛び出し方向が上になると、ちょっと違和感が出ます、その点、MX-Dの飛び方は、表ソフトから乗り換えても、違和感が少なく、自分のイメージと近いボールを打つことができました。
どちらのラバーもしっかりと山は作ることができますが、自然に山ができるのがMX-S、直線にも山にもできるのがMX-Dという感じをフォアハンドでは受けます。
インパクトの小さいバックで比べると、MX-Dの直線弾道は少々不安になる高さです。コートに収まる安心感は、抜群にMX-Sの方が高まるでしょう。ボールを持つ時間の長さ、与えられる回転がオートマチックに加わっているのがわかり、当てるだけになった時でも、ボールは弧線をしっかりと作って飛んでいきます。MX-Dだと、当てるだけになった時に、ボールが失速してしまうことがしばしば。バックハンドを常時スイングできる方であればいいですが、私のようにブロックメインや離れてもミートで粘る系の選手は、MX-Dのスペックを使いきれないのでしょうね。フォアに表ソフトを使っていた時には、バックにMX-Dを貼っていましたが、使い比べてみると、バック面ではMX-Sの方が個人的な使いやすさが高いです。
対下回転
下回転に対しても、ボールの飛び方の印象は変わりません。直線的なMX-Dと弧線の高いMX-Sです。ただし、回転に対する敏感さは、MX-Dとの方がダルに感じます。トップシートの持ち感が少ない分、回転を食らう割合が少なく感じ、スイングスピードの乗るフォアハンドでは、MX-Dの方がボールを持ち上げやすく感じます。下回転を食らいにくく前に飛んでくれるので、回転で落ちるというのを感じにくいのかもしれません。
ただし、回転をかけやすいのはMX-Sです。ラバー自体の引き攣れを強く感じることができるので、シートだけで強い回転をしっかりとかけられます。台から出るか出ないかのチョリドラや、スピードを殺したループ系の技術は、MX-Sが格段にやりやすいです。また、台上処理に関しても、切ったツッツキ、チキータといった回転をかけて返球する技術は、MX-Sの方が安定します。勝手に弧線が出るので、ネットに近い位置でスイングしても、ネットを超えてくれるのが良いところですね。
個人的にはバックで使う技術でスピードを出したいと思うものはほとんどないので、MX-Sの方が合っている気がします。チキータもバックドライブ(ほとんどチョリかループ)も安定感は高まりました。シートがしっかりとしたMX-Sなので、唯一スピードを出す技術、バックハンドスマッシュは、スピードを落とすことなく、安定感をプラスできている印象です。
対下回転のバックハンド技術に限って言うと、MX-Dを使用して、そのスペックを体感できるのはごくごく一部の上位層になるのだと思います。スイングスピードが相当速く、インパクトも強くない限りは、MX-S、もしくはエボリューションシリーズでもEL系を使用したほうが良さそうです。
総括!両方いいラバーだが、使用方法に注意が必要
最近の裏ソフトラバーは、本当に良くなりました。プラボールに変わり、スピードや回転量の低減がささやかれますが、スピードグルー世代でも低減が気にならないくらい、スピードも回転量も高まっています。
蝶々さんが出す、「テ」や「デ」の付くラバーとは、ちょっと違う飛び方をしますが、エボリューションシリーズは、より自然に、プレーヤーの操作に忠実にボールが飛んでいく印象を受けますね。ラバーはしっかりと仕事をしながら、あとはお前の腕だろう、と言われている気分です。
MX-Dに関しては、良くも悪くもマニュアル的な味を残した高性能ラバーです。飛び、弾み、回転は文句なく良いものがありますが、それも使い手次第といったところでしょう。ラバー自体にいい意味で遊びがあるために、使い方次第でいろいろな味が出てきます。山を作る、直線的に飛ばす、回転をかける、残すという操作が、やりやすいです。蝶々さんラバーだと、全部のボールが良いドライブ回転がかかり飛んでいきますが、エボリューションMX-Dだと、意図的にナックル系のドライブ、また強く回転をかけたドライブなど、変化が出しやすいですね。
逆にMX-Sは、蝶々さんの「テ」に近いオートマチック系のラバーです。MX-Dのようなマニュアル操作ではなく、ラバーにお任せでボールを入れてくれる感じを受けます。強く触っても、弱く触っても、ボールを持っている時間が長いので、一定の回転数を維持しながら、安定してボールを飛ばしてくれます。ただし、回転も食らいやすいので、上下回転の見極めや、横回転に対してはしっかりと角度を作れることが前提となります。それでも、自分がかけたい回転がしっかりとかかってくれるので、基本技術と回転を与えられる打ち方さえわかっていれば、使うことに抵抗は少ないはずです。さらに言うなら、意図的に回転量を調整できるくらいのレベルの方が良いですね。弱と強の差が出せれば出せるほど、MX-Sを使う意味が出てくると思います。よりその強弱に幅の出るラバーです。
最後に、裏ソフトとしては、重めの部類になる両ラバー、重量オーバーには気を付けましょう。個人的に感覚が似ているなというラバーを3枚ずつ挙げて、レビューを終わります。卓球に味が出る、TIBHARのエボリューションMX-DとMX-Sでした。
MX-Dと似た感じ:VICTAS V15エキストラ、ヤサカ ラクザX、ミズノ Q5
MX-Sと似た感じ:ニッタク ファスタークG1、スティガ DNAプロH、アンドロ ラザンターR48
用具選びの参考にしてみてください。
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