トップ選手の名前が付くラケット、使用しているラバーは、間違いなく性能が高く、良質なギアです。高い性能があるからこそ、選手たちが使い、活躍しているわけですね。
誰でも張本選手のバックハンドを打ちたいですし、丹羽選手のカウンター、伊藤美誠選手のスマッシュに憧れます。こうした技術を習得したいと、同じラバー、同じラケットにする人も少なくないはずです。
こうしたトップ選手が使うハイエンドラバーには、ひと癖あるのも事実。性能が尖っているからこそトップ選手のお眼鏡に叶うのですから。そこで、私を含めた一般の中流プレーヤーが、ハイエンドラバーと相対するための注意事項や、ハイエンドラバーとの付き合い方を、お伝えしていくのが本稿です。
今回は、VICTASブランドのフラッグシップラバー、裏ソフトのV15エキストラ、表ソフトラバーのVO102を代表例として、ラバーの何が誰にとっていいのかを考えていきます。
VICTAS契約選手の多くが使用するV15エキストラとVO102
V15エキストラは、VICTASのフラッグシップラバーです。VICTASアドバイザリースタッフの多くが使用しており、高い性能と実績を持つラバーになります。
使用選手(一部抜粋、敬称略):丹羽孝希、吉村和弘、松平賢二、リアム・ピッチフォード、木原美悠
シェーク裏裏の選手は両面V15エキストラのケースが多いですし、異質選手でも裏ソフトはV15エキストラを使用していますね。ヴェンタスエキストラもいいラバーですが、アドバイザリースタッフの使用は無いようです。ジュニアトップ層にはV15スティフが人気ですね。トップレベルの選手が好む質感のラバーは、VICTASだとV15シリーズになるということが分かります。
表ソフトのフラッグシップラバーはVO102です。木原選手の天野選手などがバック面に使用し、フォア表バック粒の出澤選手はフォア面にVO102を使用します。VOシリーズには101・103がありますが、アドバイザリースタッフの人気は102に集中していますね。VICTAS(TSP)といえば、表ソフトの銘盤スペクトルも3種類ラインナップされていますが、村松選手がS1を使うのみで、S2・S3をアドバイザリースタッフで使用する人はいません。スピンピップスもスペクトルと同様です。
こうした状況をみると、VICTASのラバーを選ぶときには、第一候補にV15エキストラ(スティフ)、表ソフトならVO102が挙がってきそうですが、本当にこの選択が正しいのか、それとも違う選択をするほうがいいのか、プレーの内容を具体的に示しながら、使えそうな選手と違うラバーを選んだほうがいい選手に分けていきたいと思います。
使いこなせない可能性もある?V15エキストラ
スポンジ硬度47.5度、厚めで硬めのトップシートで全体硬度は55HCにもなるV15エキストラ。特に、シートの硬さが目立つラバーなので、速いスイングスピードと強いインパクトが無いと、ラバーの性能を引き出すのは難しいです。
157×150のラケットに貼り付けた重量は、56.4g(2.0mm、ブルー)、カット前のラバー重量は72.2gです。
私自身は硬いラバーが好きですが、それでもV15エキストラは硬く感じます。フルスイングできた時には良いですが、振り切れない場面では、ボールが中途半端になったり、滑ってしまったりするので、安心感が出ません。
また、シートだけで擦る技術(タッチ)を持っていればいいのでしょうが、こうしたタッチが苦手な人には、扱いにくいラバーです。私は、サービスを出す際に、やりにくさを感じてしまいました。
少しスポンジに食わせながら切ることが多いので、シートだけでのタッチはあまり得意ではありません。スポンジに食わせようとすると、その前にラバーがボールを打ちだしてしまい、回転がかかる前にボールが出ていきます。
ラバー表面で滑ったような感じになり、サービスの出しにくさを感じました。プレー中にも、この滑るに近い感覚が何度かあり、あまり気持ちよくないというのが印象です。
打ち方を変えて、シートだけで回転を作り出し、速いドライブを打つと、ボールは走ってくれるのですが、私自身は全てのボールを、このようには打てないので、使いこなせないなと判断。
まとめると
V15エキストラを使って大丈夫な人
- ボールタッチが優しい人
- シートだけで擦れる人
- 筋力、スイングスピードが十分に確保できる人
V15エキストラを使わない方がいい人
- スポンジに食い込ませて打つ人
- 擦るより弾く技術を多く使う人
- 力が弱い、ラケットが重くスイングスピードを確保できない人
となります。かなり上級者向けというか、トップアスリート、もしくはその予備軍であれば気持ちいいラバーだと思うのですが、一般ユーザーにはオーバースペック(というか性能を引き出せない)ラバーになってしまいそう。V01やヴェンタスエキストラの方が、使い手を広く想定していますね。
縦目のユーザーには、ちょっと難しいVO102
VO102は打球感が最高です。このスポンジとシートで、スペクトルの粒配列を作ってくれないかなと思う次第。無印スペクトルにフェアチャックを塗っていた頃の音、打球感そのものです。
全メーカーの表ソフトの中でも、パキパキ感が一番強いのではないかと感じるラバー。とにかく弾く技術が気持ちいいです。
157×150のラケットに貼り付けたラバー重量は34g、カット前のラバー重量は52.3gです。
ただし、非常に横目の表ソフト感が強いラバーで、回転がしっかりとかかって弧線を生み出す反面、回転に対して敏感で、回転を食らってしまう一面もあります。表ソフトの中でも、常に攻撃し続けるタイプに向いているラバーで、ブロックマンには使いやすいのですが、表のいやらしさが出にくいラバーになってしまいます。
さらに、ラケットを縦に使ったときに引っ掛かりが弱く、横づかいでは回転がかかるという特性があるので、縦目に慣れているユーザーには使いにくいかなと。ヘッドを上げて弾きにいくと、スリップが起こり、ボールが落ちてしまいます。シェークフォアで使う人は要注意。普段からヘッドが横を向く方は問題ありません。
ペンやシェークバックの場合には、ヘッドが横、もしくは落ちる形になるので、VO102の性能を最大限に発揮できるでしょう。こうしたユーザーにはおススメです。
昔ながらのモチモチスポンジに、ハッキリとした粒目の正統派表ソフトを選ぶなら、まずVO102になります。
VO102をぜひ使ってほしい人
- ペン表、シェークバック表の人
- 表ソフトは攻撃あるのみ!と強く心に決めている人
- 表ソフトでも弧線を作り、安定感を出したい人
VO102を使うには注意したほうがいい人
- シェークフォア表の人
- ラケットヘッドが立ち気味で打っていく人
- ブロックやナックルでかわすのが持ち味の人
とにもかくにも、攻撃性能に優れた表ソフトです。この利点を生かせるユーザーに使ってほしい表ソフトですね。さすが表ソフトのTSP(VICTAS)です。
ハイエンドラバーと付き合っていくために
卓球のラバーは価格が高くなるほど性能が高まっていくのは間違いありません。ただし、その性能を引き出し切れればの話です。自分の能力が3~6のラバーを使いこなすところまでしかないのに、10の力があるラバーを使ってもあまり意味は無いでしょう。そもそも10のラバーは10の力がないと性能が引き出せないわけですから、これまで使っていた6のラバーよりもボールの質が落ちる可能性だってあります。
ラバーの価格は年々高くなり、1枚5,000円~6,000円(さらに上もあり)します。安い買い物ではないですし、数か月で寿命が来るものでもあるので、その選択は慎重に行ったほうが良いでしょう。
自分のモチベーションとして、トップ選手と同じラバーを使うほうが練習にも身が入るという場合には、その選択でいいと思いますが、自分なりの良いボール、いいプレーがしたいと思う場合には、身の丈に合ったラバーを選ぶ方が得策です。
必ずしもハイエンドラバーが正解というわけではありません。その下のランクのラバーが、自分にピッタリきて、成績が高まるということも多くあります。
高い=良いものであることは間違いありません。ただし、自分にとって良いものなのかは別物。そこを見定めるのが用具選びになるでしょう。
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