粒高ラバーですが、裏ソフトのようにも表ソフトのようにも使える「スーパーキム」を、シェークフォア表ソフト、バック裏ソフトの私が、フォア面に使ってみたらどうなるのか、張り替えてみました。
若干の打ちにくさはあるものの、違和感は少ない
今回使用したのは、スーパーキムの1.9㎜スポンジです。ラケットは7枚合板のタイニーダンサーを使用しています。これまで、変化系表ソフトのアタック8や、正統派のブースターEVを使用してきましたが、これらのラバーと比べて何が変わるのか、検証していきます。
まず、特筆すべきはスーパーキムのラバー全体の硬度です。多くのテンション系表ソフトが50HCを超える硬さを持っており、打った時のボールの走りや速さは素晴らしいものの、硬さが大きく球持ちが悪いという問題も抱えています。最近の表ソフトの多くは、ユーザーがシェークハンドのバック面で使用することが多く、シェークバック表の打ち方を基準に開発されているように感じてしまいます。
フォアハンドで表ソフトラバーを使う場合に、ハードにヒットできる強ドライブやスマッシュ系の技術では、優位に働いてくれるテンション表ソフトの性質が、軽打やブロックの際に邪魔をしてしまうケースも多くあります。バックハンドと違いフォアハンドでは、毎回打球ポイントが少しずつ変わり、さらにラバーに対して厚く当たることが多いため、硬すぎるラバーでは、ボールが落ちてしまったり、コントロールが難しくなってきます。ラバーの性質を上手く利用しようとすると、早い打球点で、ボールとの接地時間を短くしてあげる必要が出てくるので、スイング軌道の大きなフォアハンドで使用する際に、使い方に難しさが出てくるのです。
したがって、回転系表ソフトのような、ボールとの摩擦抵抗が比較的大きい表ソフトの方がフォア面に好まれる傾向があります。ただし、横目の回転系表ソフトを使用することにより、ナックルボールの出が悪くなったり、表ソフトの「回転に影響されてにくい」という特徴が薄らいでしまうことも多いでしょう。
スーパーキムの場合、ラバー全体の硬度は31HCと、これまでのラバーでは類を見ないほど柔らかく、ラバー自体がボールを食って運ぶ力が高いです。そのため、しっかりとボールに対してラケットをぶつけて食い込ませていくフォアハンドで使用する場合に、ボールを包み込んで運んでくれるため、安定感が高まります。
ただし、回転をかける技術(ドライブ)や、レシーブの際に、ラバーのトップシート表面だけを使用して打とうとすると、硬さと反発力のないラバーなので、ボールが前に飛ぶことなく、滑ったような状態になります。常に、ラバーに対してボールをぶつける、食い込ませる打ち方ができると、前でも後ろでも、自分の力の調整を素直に受け入れてくれるラバーになってくれるはずです。
回転の影響はほとんど受けない、しかも飛ばないから安定する
スーパーキムの最大の特徴は、柔らかいスポンジで受け続ける限り、相手のボールの回転の影響はほとんど受けません。強いドライブが来ても、面を垂直にして待っていれば、相手のコートにボールは返っていきますし、相手の強烈な回転がかかっているサービスでも、押し込むようなツッツキやフリックをすれば、そのままボールは返球できます。
相手の回転が強ければ強いほど、自分の打っているボールの回転もかかっていき、オートマチックにすべてがナックルボールになるわけではないのが、安定感の秘訣です。特に裏ソフトのドライブに対してのブロックは、しっかりと前進回転がかかっているため、ボールは相手のコートに落ちてくれます。ただし、超柔らかいスポンジで、相手のボールの強い勢いはなくなるので、ブロックの球足は遅くなります。相手に到達するまでには、球足はかなり遅くなり、連続ドライブをする側からは、「ボールがこない」状態になるため、タイミングを合わせるのが難しいでしょう。正統派の粒高と違って回転の反転性能はなく裏ソフトと打っているのと変わらない回転方向ですが、ボールの勢いを自然に殺してくれるので、ブロックはとてもやりやすいです。
カウンター系の技術ももちろん使うことができますが、前記の通り、ボールは遅いので、巻き替えされる可能性も高いです。カウンターをする際にも、ボールの回転軸を外すことなく、しっかりとラバーに当てることで、ボールは前に飛んでくれます。通常であれば飛ばされてしまいそうな強いボールでも、ラバーにショック吸収する機能が備わっているので、打ち手側が勢いの調整をする必要はありません。
台から離れた引き合いもこなせるラバーなので、常にしっかりと当てる、ラケット角度は被せずに、真っ直ぐ当てることを意識すると、相手のボールの質を気にすることなく、安定した返球をすることができます。
両ハンドブロックの技術が高ければ、スーパーキムはアリ
スーパーキムは、一撃で決められるラバーでも、変化が凄くて困惑するラバーでもありません。このラバーから生み出されるボールは、何の変哲もない、普通の勢いの、普通のボールです。パチンと気持ちよく攻撃したい、ブロックで相手を幻惑してチャンスを作りたいという方は、正統派の表ソフトやOXの粒高ラバーを使用することをお勧めします。
このラバーは、返球が楽というのが最も利用すべき性能です。前陣から中陣の比較的前の方で、ラリーの中から攻め手を見つけていくプレーヤーや、とにかく返球し続けたいブロックマンにはうってつけのラバーだと思います。
まだまだ知名度が低い中で、見た目はスポンジの厚い粒高ラバー、でも粒高の性能はほとんどなく、得体のしれないラバーという点では、初見の相手は面食らうこと間違いなしです。普段は相手のブロックを弾き飛ばせるドライブ、相手のミスを誘えるサービスで、相手は点数を取れなくなり、ラリー戦を余儀なくされる中で、自分の打ちミスを起こす確率が低いラバーは、安定したラリー戦での戦い方を提供してくれます。
私は、バック面にスピードの出る裏ソフトを貼り、多く使うフォアハンドで安定感を、バックは固いブロックからのカウンターや、弾くバックハンドを使い、フォアとバックのギャップをつけています。
使用してみると、攻撃にも守備にも中途半端、ですがこの中途半端が逆に良いラバーです。使い手によって、どのような形にも変わるこのラバーは、ラバーによって戦型を選ばない、固定されない、頭の柔らかい指揮官のような存在です。エースストライカーや名ゴールキーパーではないですが、中盤でしっかりとボールキープができて、時には守備を、時には攻撃にしっかり参加してくれるユーティリティプレイヤーのようなラバーでしょう。特出した性能は無いので、使い方は自分次第ですが、プレイヤーの引き出しが多ければ多いほど、性能が高まっていくラバーです。
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