WRMやっすんさんも動画で大絶賛の銀河「天王星」Uranusですが、じっくりと長く使ってみると、さらにいろいろなことが分かってきました。市場にあふれるテンション系表ソフトラバーとは一味違う、天王星を追加レビューです。
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チャック時代の表ソフトユーザー必見 銀河・天王星レビュー【卓球用具レビュー】
天王星(厚さ2.0)の重量スペック
カット前重量58.8g
カット後重量42.2g(157×150のブレードサイズ)
モチフワラバーが少なくなった、最近の表ソフトの傾向
昨今のテンション裏ソフト戦国時代の影響で、表ソフトラバーにも硬めのスポンジや目の詰まったスポンジが多く搭載され、球離れの良さを売りにするものが多くあります。しかしながら、表ソフトラバーと裏ソフトラバーでは、トップシートがスポンジに食い込む力が全く違い、力の伝わり方が変わってくることを理解しなければなりません。
裏ソフトの場合、トップシートの粒面がスポンジと接触しています。スポンジとトップシートは「点」で結ばれていることになりますね。これが表ソフトでは、粒面が表面にでており、スポンジとの接触は「面」で行われています。
この構造の違いは、トップシートがスポンジにかけられる圧力の差につながります。粘土に指を突っ込んで穴をあける場合と、手のひらを押し当てて穴をあける際には、指で押し込んだほうが深く刺さっていきます。同じ圧力をかける際には、力がかかるポイントが面よりも点の方が大きな力が伝わりやすくなるのです。
そのため、同じ硬度のスポンジに裏ソフトのトップシートと表ソフトのトップシートを貼り付けた場合に、裏ソフトの方がスポンジが変形しやすく、指で押してもトップシートの食い込みがわかるのに対して、表ソフトの場合は、スポンジの変形が目視できないケースも多くあります。ボールから受ける力をスポンジにどう伝えてくるのか、というのがだんだんわかってきたのではないでしょうか。
多くのテンション表ソフトでは、テンションスポンジの採用や、トップシートの強さを高めることで、全体的なラバー硬度がどんどんと高まっています。そのため強く当てた時のスピード感や、回転のかかり方は天井知らずにスペックが上がっていきますが、軽打の際にボールが食い込まずに落ちてしまうというケースも散見されるのです。
使いやすい、使える表ソフトのスペックとしては、ほどほどにスポンジが柔らかくて柔軟性があり、ふわっとしていて、スポンジでボールを持ち、弾んでくれるという条件が必要です。最近のスピード系表ソフトでは、トップシートの弾力を増やし、ゴムの力で飛ばすものが多く、回転系表ソフトでは、ゴムを柔らかくし柔軟性を持たせて、粒目を大きく密集させてボールとの接地面積を増やす傾向にあります。どちらもトップシートの改良は進むものの、スポンジには目が行っていません。
今から10年~15年前の弾む接着剤が使用されていたころの表ソフトは、軒並みモチモチ、フワフワのスポンジが多く、スペクトル、スピンピップス、クリッパ、オリジナルTバージョンに代表される、モチフワスポンジの表ソフトが大流行しました。これらの表ソフトは、打球時にしっかりとスポンジまで力が到達し、クッションとしての役割を十分に果たして、ボールを捕まえてくれるものが多く、優しく打てばゆっくりとしたボール、強く打つと超スピードボールが生まれる名品ばかりでした。
モチフワラバーは自由度が高く、プレーヤーの引き出しを多く開けてくれる頼れる相棒だったのですが、昨今はラバーにプレーヤーが支配されるものが多く、技術の幅が広く出せません。
せっかくの自分の技術を生かさないてはないので、ラバーを自分で支配する、様々な技術を使えるラバーというのは、表ソフトを選ぶ中では、重要なファクターになることを理解しておくといいでしょう。
掴む感覚は表ソフトにも必要、天王星はスポンジで変わっていく
天王星の最も特徴的な部分は、已打底のブルースポンジです。
弾むのに、打感が柔らかく、スポンジがボールをつかむ感覚があり、ブロックも強打も、ボールがスリップする怖さがありません。強烈な回転のかかるトップシートにも由来しますが、最も安心できるポイントは、スポンジを使ってボールを持ち、弾いているという点です。
最近のラバーの中では珍しい、ボールをつかめるラバーの存在は貴重なものです。バタフライのスプリングスポンジに代表されるように、スポンジにも弾き飛ばす力を加えるものが多いので、本来の意味での球持ちを体感できる環境が少なくなっているのも事実ですね。
強く打った時のパチーンという気持ちいい音はもちろん、薄くボールに触った場合や、体が準備できていない状態でのブロック(ボールの後ろにラケットが置かれるだけ)の状態でも、ボールがラバーの上で粘ってくれるので、返球出来るのが素敵なところです。
ボールコントロールがしやすいのも魅力で、カットブロックや、ナックルブロックを意図的に出しやすくなっています。ラバーがオートマチックにナックルを作り出すのではなく、スイングを変えたり、当て方を変えて、自分でナックルを作り出す必要はありますが、その分、自分でナックルボールを作れるプレーヤーにとっては、意識的に打っている球と球の質がイコールとなるため、使いやすさや攻めやすさは倍増します。
表ソフトユーザーの多くは、ラバー自体のボールの飛び出しが早すぎて、とりあえず当てれば入るけど、ミートの仕方が上手くつかめなくて当てるだけのボールになってしまう、強打するとミスが多くなるといった悩みが多く、実際に私が教えている表ソフトの選手でも、落ちる・飛びすぎるといった理由で、表ソフトのボールが安定しない、使いにくさを抱える選手も多くいます。
早くボールを離す感覚と、食い込ませてボールを殺す感覚が両方自在に使えると、表ソフトで打てるボールの幅が広がり、その球種の多さは裏ソフトにも負けません。天王星は、往年の表ソフトの良さを引き継ぎながら、高性能裏ソフトラバーにも負けない球種の多さを出せる、万能ラバーです。
天王星とスーパーキム
天王星のスポンジの感覚、最近では何が一番近いだろうと考えた時に、球持ちの良さと自在性を考えると、超軟質スポンジを搭載した粒高ラバー、スーパーKIMに似ているなと感じました。そもそもの弾みの良さや、攻撃性、ラバーのキャラクターは異なりますが、ボールを自在に扱える、ラバーの自由度の高さでは、モチフワスポンジは、スーパーKIMのスポンジを、弾み良く適度に弾力を持たせたような感じになっているなと感じました。
スーパーKIMは時間の魔術師 自分の時間を作り、相手の時間を奪う 【スーパーKIM】
スーパーKIMを表ソフトの代わりに使ってみた(フォアハンド編)
卓球は感覚のスポーツです。やみくもに強く打つ、ボールのスピードや回転を多くすればそれでいいというわけではありません。スーパーKIMが登場したときに、回転のかかりは良くない、スピードもそこまで高くない、でも大きな話題になりました。表面的なスペックよりも、打ちやすさの感覚に優れた商品は、ユーザーの心をひきつけます。スーパーKIMの打ちやすさは、完全に特別なスポンジの恩恵ですが、それと同じように、スポンジでの恩恵を受けているのが天王星でもあると考えます。
ミスする怖さがないというのは、プレーヤーの心理には大きく働き、いいプレーを量産するきっかけともなります。特にラバーを自分が操っている感覚は、卓球プレーヤーとしては、一度は味わっておきたい感覚です。
このラバーのおかげで、すごいボールが打てているというのではなく、このラバーを使って自分の感覚や技術が高まっているから、自然と良いボールが出ていくというのが、感覚スポーツである卓球が上手くなっている要素でもあると思います。
まとめ
めちゃくちゃ速いボールが出る、ゴリゴリの回転がかかるという、ラバースペックの高いものではないですが、天王星はプレーヤーとの呼吸を合わせ、プレーヤーの進化を促すハイクオリティマネージメントラバーです。天王星、使えば使うほど、自分自身のスペックが上がっていくことを感じられる、一緒に成長できるラバーになっています。
コメント
いつも楽しく拝読しております。私もシェークバックではありますが、表ソフトユーザーですので、今回の天王星レビューも含め、大変参考になります。
表ソフトでは前陣でしっかりとパチンと弾けることなどに加えて、特有のナックルボールをいかに上手に織り混ぜて相手を惑わすかも重要と考えています。
最近では、某有名卓球サイトでDr.ノイバウアーのキラーシリーズが特集され、重いナックルがフォア打ちでもバンバン出るラバーとして紹介されていました。
変化表ソフトユーザーとしてはかなり興味深いのですが、いかんせん高額な上に、在庫が思うように手に入らない商品です。
もし、赤井さんがご興味あれば、赤井さん目線のキラーシリーズのレビューをぜひ読んでみたいです。
長々と失礼しました。今後もご健筆を願っております。
いつもご覧いただきありがとうございます。
ノイバウアーのキラーシリーズは、まだ使用したことがありませんでした。
今後の記事作成の参考にさせていただき、キラーシリーズのレビューも行っていきたいと思います。