アシスタントコーチをさせていただいている、卓球ラウンジNOAが移転しました。これまでは天井の低い、お部屋の卓球場だったのですが、移転先は最大5m以上の天井高が確保されている施設で、卓球台も平場に5台配置できる、ちょっと小規模な体育館のような場所です。
卓球ラウンジNOAの移転情報などはこちらへ
http://www.takkyu-noa.net/
広い卓球場へ移転し、最初の練習で感じたのが、遠近感の違和感です。今回は、風景や視点と卓球について考えていきます。
サーブ・レシーブの際、どこに視点を置いていますか?
卓球台の大きさは、長辺が2.74m、短辺が1.525mで、地面からの高さが76㎝の高さに置かれます。卓球コートの広さは全日本の決勝戦などで使用される大きさで6m×12mです。ここまで広くなくとも、おおよそ試合会場などでは、卓球台同士が2m以上離れて配置され、後方には4m程度のスペースができるでしょう。
人間の目は幅や高さの違いは正確にとらえることができますが、奥行きや距離感については、かなりあいまいです。また、常時使用している場所の感覚を覚えてしまい、同じものが置いてあるにも拘わらず、別の場所に行ってしまうと、大きさや距離感に大きな違いを感じるものです。
普段の練習をどういった場所で行っているのか、考えてみましょう。
例えば、学校の体育館。これは試合会場に似た高さや奥行き感を感じることができるので、どこへ行っても違和感は感じないでしょう。
これが、天井が低い、教室横の広場や踊り場、会社の事務所のような場所で行っていると、広い試合会場に行った時に、大きな違和感を感じます。
練習環境は、試合会場に近いに越したことはありません。高さがあり広い場所で練習できる環境を見つけて、良い練習をしてきましょう。また、狭い場所での練習しかできない場合には、時々体育館などの天井が高い場所、しっかりと下がれる場所に卓球台を模したメジャーや板などを置いて、広い環境になった際のイメージを付けておくことが大切です。
狭い環境に慣れ切った目で、試合会場へ向かうと、大きな錯覚や違和感に苛まれ、実力を発揮できなくなってしまうかもしれません。
卓球台に目印をもつ
練習と試合の場所を同じ場所で行うというのは、現実的に不可能です。しかし、練習中と試合で絶対に変わらないものがあります。
それが「卓球台」です。
メーカーや色味の違いこそあれ、卓球台の規格は世界共通です。様々なプレーを行う際には、卓球台の中で目印を持っておくことが大切になります。
例えば、サービス
構えた際の目線の位置や手の位置などを、卓球台の中で目印をつけ一定に保ちます。狙いを定める際にも、卓球台のどこに落として、どこを通せばいいのか、と考えましょう。レシーブについても同様です。
私が今回の移転で大きな違和感を感じたのが、ドライブやスマッシュなどの攻撃技術です。無意識に相手の位置を見ている中で、その背景を認識しており、背景と台の遠近感をリンクさせて覚えていたようです。空間が広くなり、フェンスの位置や、壁の位置が変わってしまった時に、飛んでくるボールの遠近感に加えて、打ちだすボールの飛ばし方が分からなくなりました。
ネットの白線を目印にしていたスマッシュ系の技術は、まだ修正が早く済みましたが、ドライブ系の技術はオーバーミスが多発し、台の奥行きが凄く短く感じたのを覚えています。
ドライブについては、ネットの手前(自分の側のコート)のどのあたりに頂点を作って、ネットのどこを通すか、という台合わせの視点に変えたところ、普段のボールが打てるようになりました。
プレー中に見えている(認識は強くしていない)風景や背景も、ラリー中には目印にしていることが多く、場所が変わるとプレーが変わってしまう大きな原因となります。視点を台に合わせて、どこに行っても同じようなプレーができるように、日ごろから練習しておくことが重要です。
一点集中と、ラケットを使った遠近感の掴み方
現役を引退してしまいましたが、野球選手のイチロー選手をご存知でしょうか?
イチロー選手がバッターボックスに入って行うルーティンの中に、目の前にバットを立てて持ち、相手投手に狙いを定めるような動きがあります。これは、ただのルーティンではなく、自分の視野を狭くし、相手投手に集中するための動きであると聞いたことがあります。
人間の視野は広くなれば広くなるほど、動きのある物を追いかける能力が下がります。時速150キロを超えるボールを、正確にとらえて打ち返すには、視野を狭くし、一点に集中させるほうが、よりボールの動きが良く見えるわけです。
イチローのバットを立てて相手投手を狙い撃ちするような動きには、ボールを良く見えるようにするための秘密がかくされていたのですね。
さらに、視点を一点に定めることで、人間は集中力を高めることもできます。
卓球でおすすめなのは、レシーブの際に、相手をそのまま見るのではなく、自分のラケットを一旦見てから、相手へと視点を合わせる方法です。イチローのバットの原理と同じように、近いところから視野を狭く集中させ、遠くのターゲットに視点を集中する効果があります。ネットから相手に目線を動かしても良いです。
ポイントは近くの対象に視野を狭めてしっかりと視点をさだめ、その視点を近くから遠くへ動かすことです。こうすることにより、台とネット、そして相手プレーヤーに対して高い集中力で視線を送ることができ、さらに必要のない周りの風景や様子などが、視野に入りにくくなります。
プレーする環境が、試合会場と大きく違っても、相手選手と台とネット、そして自分のラケットというどこに行っても普遍的な対象を見て、視覚に捉えプレーできるので、場所が違う違和感を感じにくくなるでしょう。
まとめ
卓球は小さなボール小さな大ですが、プレーする領域は大きく、そのギャップに対応できなくなることが多くあります。特に、台から下がるようなプレーでは、その違和感が大きくなるので、普段の練習から、絶対に変わらないものを目印にして、練習するようにしましょう。周辺視野で認識しているものは、意外と多く、プレーへの影響も避けられません。良い環境は自分で作り出し、質の高い練習ができるといいですね。
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