2021年3月、ラケットを変える決断をしました。浮気はするものの、一本のラケットを長く使う私、20年以上の卓球人生で、愛したラケットは2本だけです。一本はヤサカバッチのクリッパーウッドWRB、もう一つはOSPラケットのタイニーダンサー01をひと回りブレードカットしたラケット。
クリッパーウッドは、かれこれ30年以上前のものになり、ラケットとして限界を超えています。タイニーダンサーは、バック粒用として作られたラケット。バックで下回転を持ち上げる時に、グリップ形状からヘッドが上手く返せないことが気になっており、今回の変更に至ります。
条件は2つ、「表ソフトユーザーが使っていて気持ちいい」「コニックグリップがベスト、アナトミックでもいいか、でもフレアはダメ、ストレートはギリギリ許容」というものです。
国内海外と様々探した中で、タイニーダンサーを使っていて思ったのが、OSPラケットって、やっぱりいいよね、という点。そして条件に合うラケットは、
ウルティメイトカーボン
となりました。
カーボン嫌いがカーボンを選ぶ理由
WRMさんが取り扱うOSPラケット、ハンドメイドラケットで、その緻密な仕事ぶりは、ラケットの美しさにしっかりと反映されています。ハンドメイドだから出来る、多彩なグリップ形状もいいですね。今回紹介するウルティメイトカーボンは、既に廃盤が決まったラケットだそうで、ちょっと残念。ただ、在庫はまだ少しあるようなので、気になる方は早めにチェックしましょう。
今回届いたウルティメイトカーボン、ピッタリ90グラム、グリップはアナトミックにしました。いつもの茶色く豪華な箱に入ってくるOSPラケット
さて、ラケットの特徴は
- 特殊素材3枚(カーボン)
- 上板がリンバ材
という2点です。この2つが何を示すかというと、
「アウターカーボンだから、しっかりスピードが出るけど、リンバ材とラケット形状が適度なしなりを生んで、コントロールができるラケット」
こういうラケット、探してもないんですよ。
アウターカーボンのラケットの場合、その性質を生かすために硬さとスピード感を追求します。そのため、木材自体も硬く締まったモノが使われる傾向にあり、飛ぶし速いけど、ちょっと度が過ぎるというラケット多いんです。昔で言うとプリモラッツカーボンとか、現在では張継科 SUPER ZLCや水谷隼 SUPER ZLCなんかが、その類のラケットですね。技術があり、腕がありなら最高ですが、一般層が使うには、ちょっと荷が重い。子供に真剣を持たせるみたいな、なんだか危なっかしい状態になってしまいます。
それ故に、インナー系の特殊素材が多く支持され、弾みとしなり、そして適度な球持ちは多くのユーザー、特に裏ソフトユーザーに支持されるわけです。
ただ、表ソフトユーザーとして、インナーを使うのであれば、素直に7枚合板で良いだろうという結論が出ていたので、個人的にインナーはパス。そして、アウターカーボンの「伊藤美誠カーボン」を試打した際に貼ってあったモリストSPの打感が、今までにないくらい、気持ち良く感じたため、表ソフトにアウターはありかもなと考えていました。本来、モリストの打感が好きではなかったのですが(食い込んでボールを持ってしまうため)、カチンと弾けるアウターカーボンのラケットと組み合わせると、違和感が無くなりました。
そこで、嫌いだった特殊素材に、これを機に挑戦してみようと考え、ウルティメイトカーボンを選択しました。
中芯がカーボン!?あり得ない3枚使い
ウルティメイトカーボンの驚くべきところが
わかりますか?合計7枚で構成されているラケットですが、木材が4枚、カーボンが3枚なんです。真ん中に来ているのもカーボンですよ。
一般的な特殊素材ラケットは木材5枚で特殊素材が2枚。この組み合わせが圧倒的多数であり、
インナーラケットは左から木材・木材・特殊素材・木材(中芯)・特殊素材・木材・木材の順
アウターラケットは左から木材・特殊素材・木材・木材(中芯)・木材・特殊素材・木材・と並びます。
ウルティメイトカーボンだと
木材・カーボン・木材・カーボン(中芯)・木材・カーボン・木材
固定概念をぶっ壊すとは、こういうことを言うんですね。
このカーボン中芯のせいなのか、リンバ材のせいなのか、軽打時にはポコポコと頼りなさげな音が鳴ります。木魚みたいな、ちょっとカッコ悪いかも。ニッタクのレッドシャンクもこういう音なってたなと、回想。
打感は、硬めですが、手に微振動が伝わる感じは、ボールを打つ感覚を残しておいてくれていて、操作はしやすいです。強く打つ弱く打つの調整がしやすく、勝手に飛んでいくイメージはほとんど無いです。
強くミートすると、ラケットが豹変します。カキーンと気持ちのいい音が響き渡り、ボールが走る走る。さっきまでのポコポコラケットはどこへやら、途端にイケメンな音と、意外過ぎるボールが飛んでいきます。
ラケット重心はグリップ寄りで、前陣でコンパクトにスイングすると、綺麗にヘッドが返っていきます。90gという決して軽くはないラケットですが、その重さは感じにくくなっています。
特殊素材ラケットは一定の打感しか味わえないと思いきや、ラバーのように飛ばしたり飛ばさなかったり、硬く弾いてナックルにしたり、回転をかけるためにしならせたりと、使い手の思い通りに変化してくれる打感は、木材合板、特に7枚の均等合板のような、幅のある打球感を楽しむことができるでしょう。
ラバーを選ぶラケットではないですが、粘着ラバーと使うと、かなりのテクニックが必要です。技量が付いてこないと使いこなせない、そんな感じになります。テンション系の裏ソフトなら、気持ち良くドライブが振れるでしょう。
表ソフトは、天王星のようなフワフワ系も、ヘキサーピップスフォースのようなカッチリしたものも、どちらも気持ちいです。バックでブロック主体なら、少し柔らかめの表ソフトの方が、プレーしやすそうですが、フォアバック共に攻撃的に弾きにいくのなら、硬めのしっかりした表ソフトの方が、軽快な球離れと、快速スマッシュ、そしてナックルの出やすさをより体感できるのではないでしょうか。
個人的にラバーは色々と試してみましたが、攻撃的に行くならフォアはヘキサーピップスフォースがピタリでした。変化表を使うには少し硬すぎるので、その場合は7枚合板を選ぶと良いでしょう。
裏ソフトとの気持ちいい組み合わせが、まだ見つからず、現在は三維のGEAR HYPERを使っています。ミート打ちのしやすさ、ナックルの出具合や、台上処理でも弾みにくく台に収めやすいテンションなので、飛ぶカーボンラケットでも、気持ち良く使えているのですが、たぶん、もう少し柔らかいラバーの方が、良いような気もします。
クァンタムXやエボリューションMXS、V11エキストラあたりでも良いのかなと。回転かけやすく、下回転を持ち上げやすい方が、ラケットの良さをもっと引き出せるような気がします。(これはバック裏ソフト限定の話です。)
アナトミックグリップが素敵
一時期、ちょっと流行りがあったアナトミックグリップです。
長いことコニックグリップしか使ってこなかった私、フレアでは中指が当たるところが細すぎてしっくりこないし、ストレートだとラケットが抜けていきそうで、そしてグリップが自由になるのが好きじゃない。結果間をとってコニックだったわけですが、今回はコニックグリップがありません。
そこで選んだのがアナトミックグリップ。フレアのような形をしながら、グリップの中央部分が膨らんでいます。手の小さい女子選手に、よく好まれるグリップ、私も男としては手は小さいのです。
このグリップの握り心地が抜群です。スイング時に打球面が動かないのが、表ソフトとしては良くて、フォアハンドを打つときに手首を捏ねたくならない、一定の角度を出してカチンと弾ける気持ちよさがあります。
バックもラケットがぐらぐらせずに、鋭角にヘッドが入っていくので、自然に擦れて、回転が生まれたボールを弾ける。アナトミックグリップにしてよかった。少し削るとコニックにもなりそうですが、今回はもったいないので無加工でいきます。
天然の木の触り心地を適度にのこし、ザラザラとツルツルのちょうど中間で、磨きを仕上げてくるOSPさんの仕事も素晴らしい。ずっと触っていたいラケットになっています。プラボールでは、表ソフトに特殊素材はありかも
プラボール時代、表ソフトにはアウターカーボンが良いかも
ずっと、表ソフトには7枚合板と言い続けてきましたが、プラボールに変わり、ラバーの質も変わってきた昨今、攻撃的な表ソフトには、特殊素材がハマるかもしれません。特にアウターカーボンのラケットが、表の打感の良さをさらに際立たせます。硬い×硬いの組み合わせが、回転量の減ったプラボール時代で、表ソフトの使いやすさと、鋭角に入るボールの攻撃性を際立たせるものになりそうです。攻撃重視に転換したい表ソフトユーザーは、アウターカーボンラケットを探してみてください。
ウルティメイトカーボンは、現在在庫のみで、廃盤商品となりますが、必ず後継モデルが出てくるのではないかなと思っています。この3枚カーボン技術は、後世にも伝えてほしいなと、個人的な願望です。良いラケットはOSPから、職人の技が光る、特別なラケットでした。
↑ウルティメイトカーボンは、こちらのリンクから商品ページへ行けます。
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