ドライブ=裏ソフト、スマッシュ=表ソフトというイメージありませんか?
表ソフトはスマッシュが打ちやすい、弾く技術がやりやすいという風に考える方もいると思いますが、表ソフトだからスマッシュが打ちやすいとは限りません。
今回は、シェークフォア表ソフト・バック裏ソフトを20年間使い続け、前陣で弾くプレーをメインにやってきた筆者が、弾く打ち方でも使いやすい裏ソフトを紹介していきます。
そもそも、なぜ表ソフトはスマッシュのイメージがあるのか
表ソフトラバーの特徴は、球離れが早い点や、ボールとの設置面積が小さくなるため回転の影響を受けにくくなる(対裏ソフト比)という点にあります。下回転の球に対して、強く上回転をかけなくても、ボールが持ち上がってくれるので、下回転の処理は楽になり、比較的スピードの乗ったボールを打ちやすくなるのは事実です。
ボールが自分のコートに落ちてから、跳ね上がり、バウンドの頂点を迎えるまでにボールを触ることができれば、ボールの上昇運動も相まって、表ソフトでは楽にボールを持ち上げられます。しかし、頂点を過ぎて下降線をたどるボールに対しては、ラバーの摩擦力の低さが仇となり、ボールの処理が難しくなってくるのです。
下降途中のボールを持ち上げるためには、回転をかけ、ボールに弧線を描かせて相手コートに送る必要がありますが、裏ソフトに比べて摩擦力の小さい表ソフトでは、そもそもボールを持ち上げにくくなりますし、弧線を描かせて相手コートに入れたボールも、回転量が少なく、カウンターを食らうこともしばしばです。
よって、表ソフトの選手は、台に近いところでプレーし、ボールがバウンドしてからの上昇期に打球することで、返球率を高め、より攻撃的なプレーができるようになります。
この、上昇期にボールを打つことと、表ソフト特有の球離れの早さが相まって、スマッシュを打ち続けているように感じるわけです。返球する、もしくは攻撃的なボールを打ち続けるという面では、裏ソフトの方が処理は楽であり、打球するポイントが限られる表ソフトでは、高い技術力が求められます。
表ソフトラバーの特徴を生かすために、早い打球点で、球離れの早さを生かした弾く技術を多く使う選手が多いことから、表ソフト=スマッシュのイメージがついていったのではないでしょうか。
単純に、スマッシュのやりやすさから見ると、自然に回転がかかり、ボールが相手コートに落ちてくれる確率が高い裏ソフトの方が、やりやすさを感じる点も多くあります。
それでは、裏ソフトでスマッシュを打つ場合に、注意する点はどこにあるのでしょうか。
自分の打ち方は「押し付けるのか」「弾いているのか」を考える。
スマッシュを打つときに、プレーヤーが打球するわけですが、その打球方法には大きく分けて2種類存在します。
一つ目は、表ソフトユーザーに多い、ラケットとボールの接着時間を短くし、弾く方法です。ラバーが回転の影響を受ける前に、ボールから離し、タッチを短くしてあげることで、全身回転の少ない、直線的なボールが生まれます。
もう一つは、ラバーとの接着時間が長い、押し付ける方法です。ボールをラバーの引き攣れを起こし回転を生むわけではなく、トップシートからスポンジまで、しっかりと食い込ませ、弾き出す打ち方になります。表ソフトユーザーの中にも、こうした押し付けて強打を打ち込む選手もいます。イメージとして、伊藤美誠選手や張本智和選手が使用する「パンチ」のような打ち方です。ボールの上昇軌道に対して垂直にラケット面を作り、ラバーに押し付けて相手コートへ直線的にボールを打ち出していく方法といえば想像がしやすいでしょうか。
どちらの打ち方でも、パチンと乾いた良い音が鳴り、ボールは回転量が少ない状態で、直線的に飛びます。自分が押し付けているのか弾いているのかを考えて、次の章のおすすめラバーを選んでみてください。
押し付けタイプはトップシートの強さを、弾きタイプは軟質なラバーを選ぶべし
それでは、タイプ別にスマッシュにおすすめのラバーをご紹介していきます。
押し付けタイプにおすすめの裏ソフト(3選)
このタイプは、トップシートにある程度の硬さがあるほうが打ちやすく感じます。筆者もこちらのタイプです。インパクトの力が強く、ボールがラバーを変形させる力が強いため、ある程度衝撃に強いラバーを選んだほうが、気持ちよくスマッシュを打てるでしょう。
ヤサカ・ラクザX
ヤサカのノンスリップラバーとして有名なラクザX。両面裏ソフトでスマッシュを武器に戦う手塚 崚馬選手も使用するラバーです。滑りにくいトップシートは、弾く技術でもボールをしっかりと捕えてくれて、ボールが安定します。トップシートは硬く引き締まっており、相手の強い回転に対しても、インパクトの強さでボールを持ち上げ、打ち込むことが可能です。
TIBHAR・エボリューションMX-D
最近発売して、ドライブマンからも絶賛されるMX-D、インパクトの強いスマッシュを打ちやすいラバーでもあります。ボールが勝手に持ち上がる感覚が強く、下回転に対しても弾き打ちができるラバーです。自然にかかる回転量も多く、ボールはやや弧線を描いて飛んでいきますが、相手コートに収まる確率も上がります。回転をかけてもよし、弾いてもよしの万能ラバーです。トップシートは厚めで強く、スポンジ硬度も高いのが特徴です。スマッシュを中心に戦うプレーヤーの中でも、スイングスピードが速く、強いインパクトを出せる選手におすすめの一枚です。
VICTAS・V15エキストラ
VICTAS契約選手の多くが使用する、フラッグシップラバー。前陣で戦う選手としては丹羽孝希選手が使用しているものです。裏ソフトラバーの中では、ボールが直線的に飛び出す部類に入り、弾く技術の飛球線がイメージしやすいラバーになるでしょう。こちらもトップシートは厚め、強いインパクトににもしっかりと耐えられます。完全に弾く打ち方にすると、少し滑る感覚が出ることもあるので、回転を付けながらも速いボールを打ち出す、ドライブスマッシュのようなイメージで打ち込んでいくといいでしょう。
弾きタイプにおすすめの裏ソフト(3選)
弾きタイプは、ラバーが全体的に柔らかめの方が、コントロールも付きやすく、前進回転も適度に入るため、スマッシュが安定します。トップシートはやや強め、スポンジは柔らかめのラバーを紹介します。
VICTAS・V11エキストラ
VICTASの中でも軽量でライトテンションに分類されるラバーです。V15の性能を残しながらも、ラバー全体を軽量化させることで、使いやすさを加えています。スポンジ硬度は高めですが、フワフワ・モチっとしたラバーになっており、弾いた際の初速の速さはしっかりと確保されるラバーです。
GEWO・ネクサスEL Pro43
トップシートの強さがありながら、43度という軟質なスポンジと組みあわせた使いやすいラバーです。弾き打ちと「カキーン」という気持ちのいい音が鳴るのも特徴の一つになります。柔らかいラバーで回転もかけやすいのですが、トップシートはネクサスELシリーズのしっかりと回転がかかる強いシートを採用しており、弾き打っても気持ちいい一枚です。筆者のバックスマッシュは、このラバーが一番打ちやすく感じました。ラバー重量も軽く、両面に裏ソフトを貼っても、ラケット総重量が重くならないのも良いところですね。
VICTAS・ヴェンタスエキストラ
スーパーヴェンタスの写真しかなくてすみません。現在はVICTASブランドで、ヴェンタスエキストラとして販売されています。スポンジは固めですが、トップシートが柔軟で、弾く技術の際にボールが滑らず、持ちが長く感じられるラバーです。押し込んでしまうと飛びすぎな感じもありますが、タッチを短く弾く際には、使いやすさを感じられるラバーになっています。スマッシュ多用の女子選手のフォアにもお勧めできるラバーです。
このほかにも、スマッシュに適した裏ソフトは多くあります。今回は、打球イメージ別に3種類ずつ紹介しました。プラボールになり、ドライブの回転量が減っている中、スマッシュに注目が集まってきています。裏ソフト=ドライブだけではなく、スマッシュも攻撃技術に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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