レビュー・インプレッションの話は読んでいただけたでしょうか。まだ目を通していない方は用具に関する性能報告書は「レビュー」から「インプレッション」に【大事なお話】をご覧ください。
さて、しばらくぶりのラバー紹介ですね。使ったラバーはたくさんあるのですが、時間が作れず、レポート出来ない始末。なんとか予定をやりくりしたいもいのです。
今回は、昨年末に発売されたミズノの新作から、Q1をインプレッションしていきます。幅広い層が長く使えるという意味では、最も汎用性が高く、コストパフォーマンスが高いラバーなのではないかと。ビギナー用と括ってしまうのはもったいない、Q1の姿を明かしていきましょう。
ミズノが本気を出してきた
超一流のスポーツメーカーであり、卓球界では昔からシューズメーカーとして名高いミズノが、卓球のラバーやラケットに参戦し、はや幾年。GFTシリーズから、Q3、表ソフトではブースターシリーズを展開したのち、トップ層でも不自由なく使えるQ5が大ヒットとなりましたね。
もはや卓球シューズのメーカーだけではなくなったミズノ。その本気が2021年末に炸裂した形です。
登場したのはQクオリティ(QQ)、そして今回紹介するQ1。性能が高く表記されているQQに注目が集まっています。確かにQQは良いラバーでした。が、それほど驚きもしなかったのが本音のところ。お値段相応か少しコスパ良いかなくらいの感じだったわけですが、Q1はニトリを超える「お、値段以上」だったのです。
それでは、基本スペックから確認しましょう。
Q1
テンション裏ソフト
厚さ:1.7/1.9/2.1mm
スポンジ硬度:44度
メーカー小売り希望価格:4,620円(税込)
性能表ではQシリーズの最下層にいるQ1。それでもGFT40と同程度のスピン性能Q4に近いスピード性能を持っているようです。
驚いたのは、その価格。税抜き4,200円って。ネットなら税込み3,700円くらいで買えちゃう!(ミズノはちょっと割引率が渋いですが・・・。)
税込み4,600円程度の他社ラバーは
- VJ07スティフ(VICTAS)
- ファクティブ(ニッタク)
- マークV HPS ライガンスピン(ヤサカ)
- プラクソン400(アンドロ)
- ヴェガプロ(XIOM)
あたりですね。卓球初めたて~ちょっと打てるようになってきたよという層が使うことの多い、エントリーモデルが並ぶところ。柔らかくして、飛距離は適度に出ますが、スピードはほどほどにというラバーが並んでいます。
ミズノは、Q1を初中級者向けにQシリーズをアレンジと言っていますが。どのような仕様になっているのでしょうか。
ワンクラス上の質感!定価5,000円の間違いでは?
それでは、開封の儀です。
シートはツヤ抑えめです。モールドはミズノのシンプル仕様。先ほど挙げた他社ラバーよりも、触った感じは硬いです。フワフワブヨブヨではないので、入門用とは思えない感じ。
気泡は多めですが、穴は小さく適度に詰まっています。マークVのフワフワ高密度スポンジとは違いますね。見た目で近いところだと、TIBHARのクァンタムシリーズでしょうか。
今回は、あえて1.7mmを使っています。(後に1.9mmも試していますので、打感は後程両方で記載します)
カット前のラバー重量は60.6g、157×150mmのシェークハンドラケットに貼り付けたカット後の重さは41.4gでした。
硬度計で測定した、ラバー全体の硬度(トップシート+スポンジ)は、47.5HCです。
※参考硬度値
GEWO ネクサスEL PRO43:46HC
TIBHAR エボリューションEL-S:49HC
TIBHAR クァンタムXプロ:48HC
ヤサカ マークV:45HC
VICTAS VJ07スティフ:48HC
同一全体硬度で近いところはクァンタムXやVJ07スティフ。価格的にも、Q1の比較対象はVJ07スティフが良さそうですね。それでは、試打に移ります。
自然に回転がかかる気持ちよさ!エントリーラバー?いや違う
試打環境の紹介です。
ラケット:ヤサカ シナジー(バルサ材含む軽量洋材9枚+グラスファイバー2枚=11枚合板)
ラバー:ミズノ Q1(1.7mm)、DONIC ブルーストームZ1ターボ(1.9mm)
ラケット総重量168.8g
軽打(上回転)
選択したのは1.7mm、ラケットもグラスファイバーなので弾みは落ち着いたものですが、ラバー自体の飛び感は十分に感じます。エントリーラバーを打った時の「自分の力で飛ばさないと」という感じは全くなく、中位層のテンションラバーと遜色ありません。
ボールの食い込みは少し深めで、その分持ち上がりも大きく感じられます。インパクトの瞬間に手元でボールが持ち上がり、弧線を作ってくれるのは、どのレベルのプレーヤーにとっても安心感がありますね。
弾く打ち方をしても、自然に上回転がかかってくれるので、直線で飛んでオーバーミスは少ないです。また、私の場合だとどうしても表ソフトの感覚が残った状態でフォアハンドを触るので、テンション裏ソフトだと弾みを抑えるのに一生懸命になることが多いのですが、Q1は強すぎる弾みが無く、表ソフトからの移行でも、違和感なく触れるのが良いところです。
表ソフトから裏ソフトへ移行しようとしているプレーヤーが、裏ソフトの特性に慣れるのにも、うってつけのラバーだと思います。(その際には1.7mmをおすすめします)
強打(上回転)
適度に弾むので、プレーヤーが頑張らなくていいのがGOOD。エントリーラバーで、スピードや回転を乗せようとすると、腕力と体の切り返しでラバースペックを超える動きをしなければならなくなるのですが、Q1では反対面に貼ってあるブルーストームと同じ感覚で、強いドライブを打てます。
回転量はブルーストームにもちろん負けますが、少ないという感じは無く。中高生相手であればブロックをオーバーさせることも十分可能。カウンター系の技術も、シートが良く小さなスイングでスピードが乗ってくれるので感覚は良いですね。
初中級層向けラバーに求めるのは酷ですが、インパクトとスイングスピードを上げていくと、やはりシートは負けてしまい、ポロッと落ちるシーンもあります。ただ、粒足が長めになっているQ1のシートは、ボールを掴む力が強く、比較的スリップは発生しにくくなっています。
中高生男子の県大会に出るか出ないかのレベル、中高生女子のインパクト強めのプレーヤーまでは、強打でのスリップに悩まされることは無いでしょう。一般男子層だと、平気で190g程度のラケットを振り回す層には不向き。逆に軽量ラケットを素早くコンパクトに前陣で振るレベルなら困りません。(ただし、相手の強い回転のかかったドライブをインパクトでカウンターする際には、スリップします)もちろんレディース層にもピッタリでしょう。
対下回転
最近多い、薄めのシートにテンションスポンジというセットアップではなく、あくまで足の長いしっかりとしたシートに軽テンションスポンジなので、下回転の打ちやすさは抜群に高いです。スイングの力を、しっかりとボールに伝えてくれるので、軽い力で強い下回転が持ち上がります。
力む必要が無く、体も大きく沈ませなくてもボールが上がるので、3球目をしっかりと入れてラリーを作る展開にはハマるラバーです。腕力が無くてもボールは上がり、さらに回転もプラスしてかかっているため、体が小さく線が細いプレーヤーに使ってほしいですね。
弾みの小さいラバーで基本打法を覚えたら、すぐにQ1に変え、回転の力でボールを入れることを覚えるのも良いでしょう。今までのビギナーラバーだと、どうしても持ち上げて回転がかけにくかった点を、大きく改善しています。
回転はある程度かかりますが、鈍感さもあるので、レシーブ技術にはあまり神経を使わなくてもいいですね。
総評・おすすめの人と使ってはいけない人
全体的に平均点以上、可もなく不可もなく、特に広いレベルで不可の技術がないのが良いところでしょう。インパクトの許容範囲が広く、ある程度適当でも打てるし、シビアに性能を引き出しても応えてくれる、初中級層でも、中級層の範囲が異常に広いラバーです。
実際に2022年の初めから私も使い始めて、コーチングをするときの相手用ラケットに貼っています。コストの兼ね合いもあるので、あまり良いラバーは貼れない(本職用ではないので)わけで、これまで幾多のエントリー価格帯ラバーを貼ってきましたが、結局は弾みや回転量に不満が出るのと、生徒のレベルが上がってくると、回転にラバーが負けてしまうので、用具レベルを落としても中位層ラバーまでと考えていました。
VJ07スティフ、ヴァルモ、マークV、ヴェンタススピン、ファクティブ、クレイジーブル、ヴェガプロなど、比較的安価なラバーは、「飛距離が出ない」「回転が乗らない」(俗にいう飛ばない)感覚が強く、サブ機ではありますが、練習相手用ラケットでもクァンタムXやV11エキストラ、ヴェンタスエキストラなどを使ってきした。
こうしたラバーと比べると、Q1は中位層に近い打感や性能を出してくれるので、安心して返球できるのはもちろん、要望に応じて強いボールも打ち出せるのが良いですね。(開封から3か月。フルに練習相手からハードな球出しまでこなしていますが、まだまだ使える長寿命。他のラバーなら既にへこたれているレベル。寿命も長くコスパはさらに高まります。)
基本的にQ1がハマらないプレーヤーは少ないと思います。フォア面でもバック面でも、学生から一般男女まで、広く使える(使いこなせる)ラバーです。Q1の性能をフルに引き出して、ボールが止まらない・スリップするというのは、かなり上の層(県大会常連、オープン大会でも上位のレベル)なので、そこまでは、Q1の性能を信じて、自分の技術レベルを上げていくのがいいのではないでしょうか。
普段から沈み込む、唸るようなドライブを打てるレベル(試合中もしっかり打てて勝てる)は、弱インパクトでは性能が発揮できない、上位層ラバーを使ってください。
Q1は、試合中にビビッて触れなくなってしまう人、それほど体力や筋力が発達しておらず、硬いラバーではインパクトが負けてしまう人を広く拾い上げるラバーです。良い(凄い)ボールを打つのではなく、良い確率でボールを収め、勝ちにつなげたいプレーヤーが選ぶべき1枚だと思います。
※ちなみに、VEGAプロやVJシリーズではトップシートが負けてしまい、ボールがスリップするプレーヤーに、シートの強いラクザX(後にラクザXソフトに変更)をおすすめしていました。ラクザ自体が高額ということもあり、試しにQ1を貼ってみたところ、ラクザXソフトと遜色なく使いこなしています。
本人の言葉では、「ラクザより軽い力でボールのスピードと距離が出る」から省エネで前で小さく振ってもボールが走っていくと、高評価。受け手としてはボールの重さはラクザの方が出ますが、台に収まる確率はQ1の方が高くなり、低く沈むボールが増えました。
これは、用具変更の成功例です。ハイスペックラバーで良いボールは打てるけど、確率が・・・。という方は、その高いラバーから、Q1に乗り換えるのも良いでしょう。
最後に、個人的な感覚ですが、様々な技術の精度が上がり、ボールの質が上がってきて自分が上手く強くなっていることを実感できるのと同時に、ラバーの硬度がどんどんと下がっていくのが、最近の不思議ポイント。これまでは、上手くなればラバーを硬くしていくものだとばかり思っていましたが、柔らかくしていくほうがやりやすく、プレーの質も上がっていく。
おそらく、これを超えると、段々用具を硬くしなくてはいけない領域に入るのかと思います。ここを体感できるまでは、下手に硬いラバーに手を出すのは控えたほうが良いかと。自分が柔らかさに対してプレーの気持ちよさを高められている状況を作り、その上のレベルを目指していきましょう。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
赤井福 Instagram始めました(フォロワー1,000人突破です。ありがとうございます。)
サクッと読める卓球の技術や知識、考え方を発信しています。
ブログでは紹介していない、ココだけの情報もありますので、
是非、フォローしてみてください。
Twitterも更新中
ブログの更新状況はもちろん、ちょっとしたつぶやきから
ラバーやラケット試打のリクエストも受け付けていますので
チェックしてみてくださいね。
コメント