SwingⅣ-Sは軍配?六角形のサイバーシェイプ!異形・変形ラケットを使う意味【卓球ラケットコラム】

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ラケット

卓球のラケットは、85%以上が木材で出来ていて、ラバーを適切に貼ることができる平面を持っていれば試合で使用できます。(国内の試合ではJTTAAマークの刻印があるラケットを使用可能、JTTAAマークが無ければ事前に審判長などに確認を取る必要があります。)

意外とルール上の細かい規定が少ない卓球のラケット。ラバーよりも自由度が高く、様々な商品がラインナップされていますね。近年で大きな話題になったのが多角形ラケットのサイバーシェイプではないでしょうか。

それ以前にも変な形をしたラケットは数々存在してきました。卓球のラケット=丸いものというイメージがありますが、ざっくり言ってしまえば、どんな形でも大きさでもOKとなるのがラケットのルールです。

オーソドックスな約157mm×約150mmの丸形ブレード以外のラケットを使うのには、どのような理由があるのでしょうか。実際に、変な形のラケットを使用する筆者が、その謎を解き明かしていきます。

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変形・異形ラケットのいろいろ

スティガが発売したサイバーシェイプ。丸以外のラケットを大手メーカーが販売するのは、しばらくぶりの事です。ブレードは7つの直線と6つの頂点で構成された多角形となっています。(6角形と言われますが、グリップ部分への連結を考えれば8角形です。6角形は直線6つで構成されますが、サイバーシェイプは直線が7つ、どちらかというと8角形に近いカタチになります。)

スティガ公式サイトより引用(https://stigasports.jp/product/サイバーシェイプ-カーボン/

楕円であることが、卓球ラケットのアイコンのようになっていますが、歴史を遡ると、変な形のラケットは、定期的に登場していました。

かつて、ヤサカが発売していたピストル型のグリップを持つ「ハンドソウラケット」、TIBHARは相撲の行司が持つ軍配のような形のラケット「SwingⅣ-S」を発売しています。

いずれも現在、試合会場で見かけることはほとんどなく、試合相手が使っていたら、間違いなく「それなんですか?」と聞きたくなるラケットです。

ニッタクでは、グリップがぐにゃりと曲がった「テナリー」や、通常よりも大きくて重い「剛力シリーズ」といった、特徴のあるラケットを現在も取扱っています。

ニッタク公式サイトより引用(https://www.nittaku.com/products/rackets/tenaly/?release=ASC

さらに、近年ではWINGSPANというメーカーが、グリップ部分に球体をあしらったラケットを登場させました。名前は「カーブライン」と言います。見た目だけでもかなりインパクトのあるモデルがたくさんありますね。

よりマニアックな部分に目を向ければ、使用されている木材や特殊素材の希少性、表裏面が非対称になった合板構成(片面にカーボン、もう片面はカーボン無し)、単板・3・5・7枚合板が主流の中11枚合板という圧倒的枚数の合板構成を持つラケットなど、通常のカタチをしていても、特徴があるラケットというのも多いものです。

こうした一般的ではないラケットを使うユーザーは、何を目的にしているのでしょうか。実際にSwingⅣ-Sを使用する私を例にとり、考えていきましょう。

軍配のようなラケット「SwingⅣ-S」を使用する理由

私が現在使用しているのラケットは、TIBHAR(ティバー)のSwingⅣ-Sです。バイオリン型、ひょうたん型、軍配型などと呼ばれる、ラケットサイド部分が大きく内側にえぐられたラケットになります。

フランス代表だったエロワ選手(当時はTIBHAR契約、現在はアンドロ契約)が使用しており、35歳以上の卓球人であれば、活躍当時の事を覚えているのではないでしょうか。板厚で軽量なスロベニア製ラケットで、5枚合板ですが、弾みと球持ちが良いのが特徴です。

SwingⅣ-Sを使用し始めて半年が経過しました。様々なラケットを試しながらここまで来ましたが、既に私は変なラケットの虜になってしまい、この仕様をしばらく変えるつもりはありません。

私のラケット遍歴は、このブログを読んでいただいている方ならお判りでしょう。ここ10年で、かなりの数を打ってきました。使用しては取り換えを繰り返し、特徴のあるラケットも多く購入してきました。そうした中で求めた性能は

特殊素材無しの純木材合板であること、軽量なこと、コンパクトなブレードであること

(ボールが)しっかりと弾むこと=飛距離が出ること、しっかりと止まること、球持ちが長いこと

の6つです。相反するも性能があり、ラケット選びは何かを諦め、何かを得るという繰り返しでした。

最近の硬式使用ラケットでは、こんな違和感が並びます。

  • 通常よりもコンパクトなブレードの「ハイブリッドACインサイド」を使用→特殊素材が打球感を狂わせ、さらに自分としては飛びすぎるラケットで断念(現在はラージボールで使用)
  • 好みの打球感だったOSPラケットのタイニーダンサー01→重量がありすぎ、飛距離の出にくいラケットだったので、ブレードカットを行うも、重すぎて使用を断念
  • 圧倒的長期間使用したYASAKA印のクリッパーウッド→スペクトルスピードとマークV皮付きとの組み合わせは最高でしたが、弾む接着剤の禁止で用具変更。アタック8と粘着テンションでは打感が大きく変わってしまい、変更を決断

といった具合です。

フォア面に硬めの変化が強い表ソフト、バック面にはシートのしっかりしたスポンジの硬い裏ソフト(現在は粘着系)を使用するため、ラバー自体の重さがどうしても大きくなってしまいます。加えて、硬いラバーは球離れが早いため、ラケットで球持ちを調整しないといけません。ブロックを主体に戦いますが、前陣で攻撃もするため、弾みと弾まなさの両面を備えて欲しいのが希望です。

弾みを取ればコントロール不能になり使いこなせず、弾まなさを取れば球離れが早くなったり、重量増が気になったりと難しい。こうした問題を一手に解決してくれたのが、異形ラケットの存在でした。

ラケットのスイートスポットは、ブレードのカタチで決まります。多角形で大きなブレードを実現したサイバーシェイプは、スイートスポットを大きくし、使いやすくしたのが最大の特徴です。

対して私の使うSwingⅣ-Sはラケットサイドを削り取ることで、スイートスポットを極端に小さくしています。また、2つの円形から生まれるスイートスポットが合わさった部分が、従来の円形ラケットよりも大きな弾みを生み出すのも特徴です。

これにより、しっかりとスイートスポットで打てば十分に弾んでくれる、そこを外せば弾みにくくボールを止めやすくなるという、これまで両立しなかった性能を併せ持つことになります。さらに、ブレードを削ってあることで、コンパクトで軽量、ラバーの重さがあっても十分振り抜けるラケット重量にすることが出来ました。

シェークラケットで81.6gはかなり軽量な部類。一般的なラケットよりも10g以上軽いことになります。

これまでの円形ラケットでは、絶対に実現されなかった、相反する性能を実装したラケット。変なラケットだからこそ、満足のいく結果が生み出されたと思います。

しかし、良い面ばかりではないのも事実。小さく削られたブレードでは、打球が難しいです。カーブ系の技術はほとんどがラケットのフチにあたるなど、使いにくさがあります。こうした面ではデメリットもありますが、変なこだわりの強い男には、変なラケットが似合うと思います。いつかこのラケット共に、全国規模の大きな大会に出場する実力を身に着けて、卓球王国さんに取り上げてもらう。それが今の目標です。

フォアにアタック8、バックに粘着性ラバーという難しい環境を緩和するのは、変な難しいラケットなのかと思いながら、日々研究を続けていきたいと思います。

下に、最近撮影した試合の動画を埋め込んでおきます。相手は超格上で、敗戦試合ですが、弾みの良さと止めやすさという相容れない性能が生み出されていることが、要所要所で確認できるはずです。あまり私の試合動画が出ることは無いので、変な用具の変な戦い方を見てみたいという方は、是非ご覧ください。

NOAちゃんねる

カタチ、大きさ、重さ、材質などで大きく変わるラケットの世界

ラケットの世界は非常に奥が深いです。同じラケットでも天然の木材を使っていることから、個体差というものが大きくなり、全く同じラケットはこの世に2本と存在しないというのが現状。この先、木材85%ルールが改正されれば、天然素材以外のラケットが生まれ、個体差ゼロの生まれる可能性がありますが、今のところこれは撤廃されず、木材を使っている以上は個体差が生まれるのが必然です。

ブレードも大きく括れば円形ですが、サイズの違いや円の形状も少しずつ違い、それぞれに個性が出るのがラケット。さらにグリップ形状、重さ、木材の材質や特殊素材の材質、合板構成などで、無数の性能を生み出すのがラケットという存在でもあります。

一本1万円前後から3万円を超えるものまで、ラバーと比べると高価なものが多いですが、消耗品のラバーとは違い、長く使用できるのがラケットの良さです。頻繁に交換することは難しいですし、その中で特殊なラケットを選ぶというのも博打のようなものですが、従来のラケットでは満足できない方は、紹介してきた少し変わったラケットを使ってみても良いのではないでしょうか。卓球ラケットの可能性は無限大です。

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