現在最も多くの卓球ユーザーが使用しているラバーが裏ソフトラバーです。ですが、裏ソフトラバーと一口に言っても、様々な種類があり、現在のラインナップは多岐にわたりすぎてよくわからなくなってきています。今回は、裏ソフトラバーをさらに細かく種別にわけて、徹底解剖していきたいと思います。
形は裏ソフトだが、搭載された技術はそれぞれ違う
あなたが思う裏ソフトラバーの代表はなんでしょうか?1つ挙げてください。
こんな質問をしたら、皆さんはどう答えますか?
これが仮に20年前に言われた質問であれば、答えはほとんど2択に絞られます。「スレイバー」か「マークV」です。これが、20年たった今、同じ質問をするとどうなるのか考えてみましょう。
答えとしては「テナジー」「ファスターク」「マークV」「キョウヒョウ」、、、挙げていったらキリがないですね。これほど、裏ソフトラバーと言っても、様々な銘柄が揃えられ、その技術も進化しています。
現在、裏ソフトラバーをカテゴリー別に括ると、こんな感じになるかと
・ハイテンション裏ソフト(テナジー、ファスターク、V15エキストラなど)
・ライトニングテンション裏ソフト(ファクティブ、V11エキストラ、ロゼナなど)
・高弾性裏ソフト(スレイバー、マークVなど)
・コントロール系裏ソフト(オリジナル、その他極薄裏ソフトなど)
・強粘着裏ソフト(キョウヒョウシリーズなど)
・微粘着裏ソフト(翔龍、VJC07スティッキーエキストラなど)
これらの中に、ハイテンションを粘着を掛け合わせた、粘着テンションなるものも出てきましたので、もはやカテゴライズも難しくなってきました。
ハイテンション、ライトニングテンション、高弾性の違い
例えばテナジー、ロゼナ、スレイバーの違いはなんでしょうと言われたときに、「弾み」や「回転量」などという答えが出てくると思いますが、これらはナゼ変化があるのか、そのような仕組みで違いを出しているのかを考えたことはあるでしょうか。
まずは、スレイバーやマークVに代表される、高弾性裏ソフトです。時は遡ること1980年代くらいまで戻ります。裏ソフトラバーの代名詞はヤサカブランドの「オリジナル」に代表されるような、単純に表ソフトのトップシートを裏返したラバー(なので裏ソフトといいます)が主流でした。
段々とユーザーが増えていき、より高品質で高性能なものを求めるようになり、高弾性裏ソフトが開発されます。
これは、これまでの裏ソフトラバーに使われていたゴムとは全く違う、弾性の強いゴムを使うことで、ボールをより飛ぶものにしたラバーです。ゴムの品質を変え、性質を変えた、高弾性ラバーは、のちのラバー製造に大きな変化をもたらします。
まずは、高弾性裏ソフトでも、十分に弾みを確保されているという点を覚えていてください。
次に、ブライスが登場します。これは、エネルギー内臓ラバーと呼ばれ、のちのテンションラバーの原型ともいえるラバーです。ラバーのトップシートやスポンジに対して、分子レベルでテンション(張力)を与えて、これまでの高弾性裏ソフトに対して、ラバー自体がエネルギーをもつようになり、ボールに与えられるエネルギーが大きくなりました。技術によって、ラバーを分子レベルで引っ張ることになるので、より強度のある強くて重いラバーが採用されるようにあります。高弾性裏ソフトよりもテンション裏ソフトが格段に重くなるのは、張力に耐えるために、ラバーを強く厚くしなければならないからです。
高弾性よりも弾みを、でもハイテンションでは重すぎるし飛びすぎるというユーザー向けに作られたのが、ライトニングテンションラバーです。ハイテンションよりも張力を少なくし、その分ラバーの張力に対する強さを保持させなくてもよくなり、軽量で薄くテンションラバーを作ることに成功しました。現在では、トップ層以下の一般層には、このライトニングテンションが一番ウケが良いラバーかもしれません。張力がそれほど強くなく、適度に弾み、軽いというのは、ユーザーを選ばないオールマイティなラバーになっています。
ここまでの説明でお判りいただけたかと思いますが、卓球ラバーとして変にテクノロジーを駆使していない素の状態に近いのは、高弾性裏ソフトです。そのためできることならば、高弾性裏ソフトを使って、ラバーの何も添加されていない味を確かめてから、調味料をかけてほしいです。
テンションラバーは、いわば食材を調理したあとの状態で、調味料も添加物も入っている状態です。ここから素材の味はどんなもんだ?と聞かれても、もう塩の味やしょうゆの味しかしません。初めからテンションラバーをつかうということは、ジャガイモの本来の味を知らない状態で、じゃがバターを食べて美味しいといっているようなものです。
さらに言うのであれば、素材の味がわからなくなったユーザーが、一度立ち返る場所としても高弾性裏ソフトは活躍します。テンション、粘着、いろいろ試しすぎて、何が良いのかわからなくなったというユーザーには、一度マークVのような素材に戻ってください。すると、自分が求めていた性能は何だったのかが明確になり、その後のラバー選びがスムーズに進むでしょう。
粘着は一口では語れなくなった
粘着ラバー、中国ラバーと言えば、とりあえずトップシートがベタベタするやつという定義でしたが、もはやその簡略的な定義では、粘着ラバーは語れなくなりました。
粘着ラバー=硬い、弾まないのイメージはどこへやら、現在販売されている粘着ラバーの多くは、柔らかく弾むものが多いです。
粘着ラバーの中でもカテゴライズが必要となり、
・強粘着テンション
・微粘着テンション
・強粘着
・微粘着
という4種類くらいには分けておかないと、ボールの変化についていけません。
昔ながら非テンション粘着ラバーは、直線的にボールが飛んできますし、ブロックされるとボールが揺れます。裏ソフトなのにナックルが出る、さらに回転量の上限も高いという変化の大きなラバーでした。強粘着では、その変化の度合いがさらに大きく、微粘着では、強粘着と比べるとボールが揺れにくいという感じでした。
これが、テンションのかかった粘着ラバーになると、ボールの質が全く変わってきます。テンション技術により、直線的に発射されていたボールが、弧線をしっかりと描くようになり、ボールにしっかりと回転がかかります。
従来までの非テンション粘着では、ある程度の腕力やスイングスピードが無ければ、粘着ラバーで強い回転をかけることは難しく、軽打した場合や、体格にあっていない粘着ユーザーのボールは棒球でしかなかったのですが、テンション技術により、弱い当たりや遅いスイングスピードでも、しっかりと回転をかけられるようになりました。
今まで粘着ラバーをあまり使用することが無かった女子選手の中でも、フォア面に粘着テンションを使用するようになっているのは、強靭な体を持ち合わせなくても、粘着ラバーの良いところを使えるようになったためでしょう。
フラットに打った際のナックルボールは少ないですが、回転量が多く、打球時に弧線が出て、コートに落ちると沈み込むような独特の弾道は、これまでの粘着ラバーとは全く違いますし、テンション裏ソフトとも違います。
スポンジ厚も確認しよう
現在の裏ソフトラバーの主流のスポンジ厚は1.8㎜から上ですが、これより薄い裏ソフトラバーも多分に存在します。裏ソフトラバーのスポンジ厚を薄くしていくと、回転に敏感だった裏ソフトが、回転に対して鈍感になっていきます。WRMで取り扱っている極薄裏ソフトは、スポンジの厚さを極限まで薄くして、スポンジの食い込みをほとんど無くすことにより、木の板で打ってるような感覚に近い状態で、ボールを打球できるラバーです。かといって、回転がかからないわけではなく、しっかり裏ソフトラバーなので、回転はかかります。極端に弾みが悪いだけです。
相手のラバーがどんな種類のモノなのか確認する際に、必ずスポンジ厚を確認しましょう。ここで極薄裏ソフトを使用されていると、その面に強烈な回転のサーブなどを出しても、ことごとく返されてしまいます。裏ソフトだから、回転で攻めていけ!という定理が成り立たなくなるので、スポンジ厚で裏ソフトの性能が変わってくるということも考えなければなりません。
まとめ
一口に裏ソフトといっても、回転のかかりやすいもの、そうではないのも、回転の影響を受けるもの受けにくいもの、さらにはスピードの出るもの出にくいものなど様々です。ラケット交換の際に、しっかりと相手の裏ソフトラバーをチェックして、各カテゴリーの代表的なものを覚えておき、ボールの質をイメージできると、試合での戦略も立てやすくなります。
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