前回に引き続き、実際の卓球用具の変更から、上手くいった例を使いながら、卓球用具の合う合わないの問題について考えていきたいと思います。新型コロナウイルスの影響で、実際に練習ができない日々が続いています。試合も当面延期でしょう。こんな時期だからこそ、ご自身の用具について、深く考えてみませんか。
前回記事はこちら
卓球用具の合う、合わないを考える 実際のラバーやラケットの組み合わせ例【卓球用具】
合う合わないという感覚と、良いボールが打てる、返球しやすいという使いやすさ
このラケットにこのラバーは合いますか?私の打ち方にこのラバーは合いますか?よく卓球ショップやSNS、掲示板やチャットなどで飛び交う質問ですね。この質問に対する正式な回答はありませんが、回答するならば
とまぁ、こんな感じになりますね。それくらい、意味のない質問になっていることを理解しましょう。数ある卓球メーカーが、お金を出して買ってもらっているラバーやラケットがヘンテコに作られていることは、まずありえません。
この質問をするならば、「私に使いこなせますかね?」の方がまだ先がありますね。
合うか合わないかというよりは、自分にとって最善か否かを考えないといけないので、技量、体格、その他もろもろの条件を加味して、自分にとって使いこなせる用具かどうかを考えるほうがいいでしょう。飛びすぎても飛ばな過ぎても、硬すぎても柔らかすぎても、自分にとって使いこなせなければ意味がないのです。
基準をつくるのが、正しい用具選びの秘訣
これがいいかもしれないな、と比較的長く使っている用具があれば、その用具についてこれでもかというくらいに調べます。
これが基準を作る第一歩になります。
そのラバーの硬さ、厚さ、メーカー公表のスピードや回転などの数値を記憶しておき、その数値を基準の0(ゼロ)とすればいいのです。
ラケットについても、合板数、特殊素材の有無、インナーかアウターか、板厚、板の素材、そしてメーカー公表のスピードや弾みの数値を記憶しておきます。
何かに書き出しておいても良いでしょう。
次に、同じラケットに、違うラバーを貼ってみます。そのラバーの数値も記録しておきます。そこに、打ってみた自分の感想を付け加えておきましょう。
そして、対外的に見た数値と自分の感触を擦り合わせます。例えば、明らかに張り替えたラバーの方が、スポンジ硬度が硬く、回転の数値もスピードの数値も高かったはずなのに、自分の打感としては、今までのラバーの方がスピードも出ていたし、回転もかかるような気がした。といった情報を集めておきます。
すると見えてくるのが、数値が明らかに上なのに、自分としてはイマイチとすれば「自分には使いこなせない、もしくは自分の技術とは適合しない」という結論になりますし、スピードも回転も、確かに公表値通り、今までのラバーよりも良いけれども、追い求めていたものとはちょっと違うという感想なら、自分の基準と、新しいラバーの数値を比べて、その間のものをまた新しく探してみたりすることができます。
闇雲に、ラバーとラケットを変え続けることは、お金がいくらあっても足りませんし、自分の技術も成長しません。ターゲットはどこにあるのか、その基準からどのくらいのパワーアップなのかダウンなのかを考えて、公表数値を比べていくと、新しく選んだ用具に対しての大外れは少なくなるでしょう。
ちなみに私の場合は、ラバーの全体硬度を記録に残しています。重量もこまめに写真で記録します。
自分の「良い」というものの基準がどこにあるのかを明確にし、それを数値化して誰しもがわかるようにしておくと、次の用具選びがスムーズに運んでいくでしょう。
実際の用具変更例
シェークバック粒の選手
ラケット:ミズノ:フォルティウスFT5
ラバー:XION:ヴェガアジア TSP:カールP3
粒高のブロックが非常に上手い選手です。用具としては大きな不満はなかったものの、フォアからの攻撃が、ミート系の技術になっており、ドライブ回転を強くかけることがあまり得意ではありませんでした。また裏ソフトでのレシーブが、回転の影響を大きく受けてしまい、安定しなかったことから、次のように変更しました。
ラケット:スティガ:オールラウンドエボリューション
ラバー:XION:ヴェガプロ TSP:カールP3
フォルティウスFT5とカールP3の打球感をできるだけ残しながら、フォアの攻撃をミートでしっかり叩けるように硬めのラバーに変更、合わせて硬度を高めることで回転に対する裏ソフトの敏感さを少なくし、レシーブのしやすさも向上しました。これまでの粒高での変化ブロックとプッシュの感覚はそのままに、フォア面の攻撃のしやすさを追求したセットアップです。ドライブをかけられないことを逆手にとり、回転をかけやすくするのではなく、あえて回転をかけにくくしてその技術を取っ払ってしまうことにより、やることも少なくなりスマートに前陣攻守を行えるようになった一例です。
シェーク異質攻撃型の選手
ラケット:スティガ:クリッパーウッド
ラバー:TSP:スペクトルレッド ヤサカ:ラクザ7
フォアバックの切り替えしが早く、ラリーをしっかりとこなせる選手です。前陣で張り付きながら、しっかりと返球していく、ラリーが得意なタイプ。スマッシュやドライブ一発で決めることが不得意で、速いボールを打ちこむと、逆に自分が忙しくなってしまう。バックは前陣からでもしっかりと振り切れて、ドライブもミートも上手いです。前でプレーをしながらいかに点を取っていくのか、また自分の不用意なミスを減らしながら、相手がミスしてくれるような形を考えました。攻撃の基点はバックハンドですから、こちらの安定感も必要です。全体的に飛びすぎる用具で、弾みを持て余している感じもあったので、ここも用具で改善してあげる必要がありました。
ラケット:TSP;スワット
ラバー:TSP:カールP1 VICTAS:VJ07スティフ
硬めの打感は残しつつ、ラケット全体の弾みを少なくしてスイートスポットを広くとり、ボールがラケットに当たれば返球できるという安心感をプラスしました。攻撃の起点になるバック面は、こちらも弾みは抑えながら軽さと柔らかさを意識し、全力で振ってもボールが飛びすぎないラバー、裏を返すと全開で振ってしっかりボールが収まるラバーをチョイス。硬度を下げ、弾みを抑えることにより、ボールの持ちを長くし、安定したバックハンドを突き刺すことができるようになりました。
フォア面は、表ソフトの状態で回転をかけることが多かったのですが、弾みに負けてしまいボールが飛んでいってしまう、さらには、試合中にはブロックや軽打が多くなり、棒球になるという点から、変化系表ソフトを検討しましたが、使いやすさと素直な打球感を目的とし、カールP1のスポンジあり(薄)を選択しました。粒高ドライブで回転をかけながら返球し、ブロックや軽打はナチュラルに変化する、粒高という嫌らしさを使いながら、自分の苦手な強さのある一発を打たなくても、嫌なボールが打ちこまれて相手がミスをしてくれる、さらには粒高を使うことで弾みを格段に抑えることに成功し、フルスイングをしてもボールが収まるフォアハンドを作り出せました。
シェーク裏裏の選手
ラケット:VICTAS:丹羽孝希WOOD
ラバー:ニッタク:ファスタークS1 ミズノ:Q4
こちらも飛びすぎ注意の形です。フルスイングするとボールはホームラン、いつも攻撃の時には気を使って調整をしなければなりません。また、回転をかける時にはループ系のドライブになってしまい、スピードドライブが上手く打てないという問題も。ラケット全体重量が重く、戻りが遅くなるのも改善が必要でした。
ラケット:VICTAS:丹羽孝希WOOD
ラバー:VICTAS:V11エキストラ GEWO:Nexxus EL Pro 43
軽めのラバーに変更し、ラケット全体重量を10g前後下げることに成功しました。ミート系の技術を安定させるために柔らかめのスポンジ硬度を選び、トップシートは強めのラバーをチョイス。しっかりと回転をかけるループは残しながらも、軽い力でラバーの力を使い切れる状態にすることで、強く大きく振る必要が無くなりました。スピードドライブは、ミート系の攻撃でカバーし、下回転に対するボールの処理をしやすくすために柔らかいラバーで安定感を出しました。全体的にプレーが落ち着き、前陣でのピッチの速さも出せるようになるとともに、バックハンドとフォアハンドの打感を似せることにより、スイングの一貫性も出てきました。
まとめ
卓球ができない今だからこそ、今までの用具を見直すチャンスです。試合がある、練習が詰まっている状態では、分析も研究もできませんし、用具を変える勇気も出てこないと思います。最適解を見つけるべく、基準を明確にし、自分のスタンダードを見つけたうえで、新しい道がどの方向に伸びているのかを見つめながら、卓球用具との対話を楽しんでください。
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