カラーラバーが一般化してきましたね。中高生の試合会場でも見るようになりましたし、先日の全日本選手権や、トップ32などでもトッププロが積極的に使用する姿も見えています。そこで今回は、特に欧州メーカーの力の入れようが半端じゃないカラーラバーを2種、インプレッションしていこうと思います。
ラバーはJOOLA(ヨーラ)ダイナライズAGRとDONIC(ドニック)ブルーストームZ1ターボです。他にもandro(アンドロ)のラザンターシリーズ、TIBHARのクァンタムシリーズなど、欧州メーカーのカラーラバーラインナップは素晴らしいです。こちらは、過去に取り上げていますので(カラーラバーになる前ですが)、気になる方は、過去記事をチェックしてみてください。リンク貼っておきます。
進化ここに極まる andro RASANTER R48 至高のテンション裏ソフト【卓球用具レビュー】
中級者も使えるテナジーのようなラバー? QUANTUM X PROレビュー【卓球ラバーレビュー】
唯一のパープルは魅力的 ダイナライズAGR
JOOLAのダイナライズシリーズには、バランス重視テンションのCMD、スピン系テンションのミディアムハードスポンジであるACC、そして今回紹介するスピン系テンションのハードスポンジ搭載AGRがあります。
ピンク・ブルー・グリーンは、いろいろなメーカーで用意しているカラーラバーですが、ダイナライズでは、他社にはないパープルがあることが一番の魅力でしょう。試合会場でパープルラバーを使っていたら、目立ちますし、一目置かれますよね。
パープルは、国内販売を行っているお店が限られています。そのため、パープルラバーに出会う機会も少なくなってしまっているんですよね。是非、広く一般的に置かれるラバーになってほしいです。
それではいつもの通り、メーカー発表の情報から整理しましょう。
ダイナライズAGR(DYNARYZ AGR)
スピン系テンション ハイパーバウンススポンジ
スポンジ硬度:50度
厚さ:2.0mm、MAX
本体価格:7,600円(税抜き)
銀色のパッケージがただならぬ雰囲気を醸し出しています。
それでは開封していきましょう。
トップシートは、当たり前ですが紫(パープル)です。光沢系ではなく、マットな質感で、シート自体も分厚くしっかりとした作りになっています。スポンジも紫で統一されているのが美しい。この辺りは、VICTASのヴェンタスエキストラも同じですが、トップシートとスポンジ色を合わせられると、コーディネートの幅が広がる気がします。サイドテープを貼らない派にとっては、ラバーの切断面って結構重要で、その色味によって、カッコよさも決まってきますし。
スポンジは、しっかりと目が詰まった感じです。ところどころに大きめの気泡は見えますが、接着剤が落ちていくほどではないと思います。表面はボコボコしており、スポンジの硬さを感じられますね。
アンドロのターボフィックス(シャバシャバ系接着剤)を塗った後はこんな感じ。気泡の中に接着剤が落ちていく現象は少なく、どろどろ系を使用しなくても、皮膜はしっかりと出来上がります。
カット前のラバー重量は69.4g(厚さは2.0です)、157×150のラケットへ貼り付けた後の、カット後重量は48.8gでした。
ラバー全体硬度(スポンジとトップシートが組み合わされた状態で硬度計で測定したもの)は、51HCでした。近い数値のラバーは、スティガのDNA PRO H(52HC)、VICTASのVS402リンバー(50HC)、エボリューションMX-S(51HC)となります。ハードスポンジの代名詞といえばVICTASのV15エキストラですが、これは55HCとさらに硬いため、ここまでのハード感は無いというのが、数値上の感想です。
名前の通り、青い嵐を巻き起こす?ブルーストームZ1ターボ
続いて、DONICのブルーストームシリーズから、スピン系テンションのハード系になるZ1ターボを紹介します。ブルーストームシリーズも種類が多く、Z1からZ3、ビッグスラム、さらにはPRO、PRO AMとスポンジ硬度やシートの種類を変えて展開されています。
メーカー公表のスペックです。
DONIC ブルーストームZ1ターボ(bluestorm Z1 Turbo)
スポンジ硬度:50度
厚さ:1.9mm、2.1mm、MAX
メーカー小売り希望価格:6,820円(税込)
ミッドサイズの気泡を持つスポンジを、硬度を上げて搭載したモデル。トップシートはテンションを掛けながら、薄く軽量化しています。
こちら、写真を撮り忘れた箇所があります。ごめんなさい。
まずは、トップシートから
ブルー(青)のシートは、V15エキストラよりも、少し暗く濃い目の印象です。カラーラバーの中では珍しく、若干光沢感が感じられるシートになっています。
スポンジは、こちらもブルー。気泡は大きめですので、少し接着剤が落ちていく感じがありました。シャバシャバ系を使う場合は、自然にしっかりと乾かすこと(ドライヤーなどは使わない)をお勧めします。強制的に乾かす場合は、ドロドロ系のグルーを使いましょう。
カット前重量は測定し忘れました。ごめんなさい。今回は1.9mmを使用し、157×150のラケットに貼り付けたカット後重量は47.6gです。
また、ラバー全体硬度は50HCでした。同じDONICのブルーファイアJP01ターボが54HC、アクーダブルーP1ターボが53HCですので、過去のトップ向けラバーと比較すると、柔らかさを持ち合わせていますね。
同程度の全体硬度でここまで違うか!ダイナライズAGRとブルーストームZ1ターボを試打
それでは打球感等を詳しく見ていきましょう。ラケットはヤサカのシナジー(バルサ材を含む軽量洋材9枚+グラスファイバー2枚)、ラバーはそれぞれの反対側にミズノのQ1を貼っての印象になります。
軽打(上回転)
まずはダイナライズから。極厚のトップシートはスイングスピードを出さないと、ボールが落ちてしまうレベル。テンション系のゴムですが、ゴム自体の反発力は軽打では感じにくく、しっかりとしたインパクトや擦る技術が必要です。自然に返球できるラバーではなく、性能上限が思いっきり上に設定されている印象を受けました。
とにかく硬い打球感で、軽打で食い込ませることは殆どできず。相手のボールの力を最大限に利用しながら、落ちないようにと気にして打つことが精一杯です。特にバックハンド側で使うと落ちる印象が強いですね。擦れればまだいいのでしょうが、自分のようなミート系の人間だと、非常に使いにくく感じます。感覚としては、硬質な粘着ラバーを使っているような感じです。
ブルーストームZ1ターボは、素直にボールが飛び出してくれます。前述のダイナライズとスポンジ硬度や全体硬度がほとんど同じながら、こちらは軽く打っても食い込みを感じますし、滑らない安定感があります。
シートが非常に薄いため、軽い力でラバーの引き攣れを起こしやすいのが要因でしょう。これくらいの上位ラバーとなると、中級者層が使うには、トップシートの厚さを基準にラバー選びしたほうが良いことを痛感しました。出来るだけ薄く、変形しやすいシートのラバー(ラザンターR48のような)が、扱いやすいラバーに感じられるでしょう。
強打(上回転)
自分から打ちに行って入れやすいのは、ブルーストームの方です。弧線の高さはさほどありませんが、真っすぐ飛びながらもしっかりと回転が乗っているので、相手コートでボールがお辞儀します。打球点が落ちたところからでも盛り返しやすく、振った分だけ飛ぶ感覚が素直に出るので、扱いやすいです。相手の回転にも負けないシートとスポンジなので、カウンター系の技術もやりやすい。対上回転に関しては、ほとんどパーフェクト(文句なし)というラバーです。
ダイナライズは、強いボールに対して強く打つには良いのですが、私のスイングスピードでは、ボールに力を加えてスピードドライブするのは非常に難しいラバーでした。まず、トップシートが引きつれてくれない、スポンジまでボールが食い込まない(食い込む前にトップシートが弾み返してしまう)ので、コントロールも難しく、スリップしてしまうような感じになります。超ハードヒッターがつかえばそんなこともないのでしょうが、本当に助走をつけて、フルスイングしてあげないと、ラバーの性能が引き出せない、超上級者向けのラバーですね。一般ユーザーは、スポンジ硬度を落としてACCあたりから使い始めるがおススメです。
対下回転
ハードヒットできれば球持ちが良いダイナライズ。対下回転では、強いボールを出すことができますが、これも選手のレベルを選びます。簡単なラバーではないので、体を作り、スイングを作り、一気にインパクトを集中させることが必要です。すると、びっくりするような一撃必殺ドライブが生まれます。
台上処理は、硬くシートが厚いラバーなので、回転の影響を強く受けにくく、やりやすさがあります。フリックやストップ、ツッツキに関しても回転をかけながら、低く収められるでしょ。チキータは、高い技量が必要です。
ブルーストームは、上回転の好印象から一転、下回転は結構シビアなラバーになっています。ドライブはしっかりと擦るチョリ系の方が威力が高く感じました。回転の乗りは大きいのですが、上にボールが出ていかないため、スピードドライブがネットミスというケースが増えます。薄めのシートが敏感に回転を感じてしまうため、ボールが落ちる前にスイングスピードの最も速いところで触り、振り抜くというドライブが必要です。
チョリ系のループは安定感があり使いやすいですね。出来るだけ下回転打ちは簡単に終わらせ、上回転対上回転のラリーにしていくほうが、ラバーの良さを生かせる感じです。ぶつけ打ちよりも、しっかり擦り打ちするほうが、持ち上げやすいです。 台上はそこそこ。可もなく不可もなくですが、回転に敏感なのは相変わらずなので、自分から切るボールが必要となります。当てるだけ、回転なりにという取り方は、回転を食らいすぎるため難しく感じるでしょう。
総評
ダイナライズAGRについては、本当に人を選びます。毎日しっかり練習して、さらに試合中もフルスイングを止めずに出来る強心臓の持ち主でないと、使いこなすのは難しいかと。硬いラバーの中でも、これまでで最も硬さを感じました。(V15エキストラよりも硬い感じ)数字以上に硬いラバーなので、性能を引き出せるのは、上級層から超上級層です。
ブルーストームZ1ターボは、ドライブマンのフォアには使いやすいラバー。下回転打ちは少し慣れが必要ですが、擦れる人なら好きな打球感だと思います。ラザンター系やロゼナなどが好きな層は、好みのラバーになるでしょう。
どちらも上のレベル向けですが、使いやすさはブルーストームが上です。
カラーラバーの中でも、特徴的なパープルを使えるダイナライズ、そして青でも濃い目で美しいダイナライズと、色の観点からは素晴らしい出来の双方。カラーラバーを検討の際には、こちらを選んでみてもいいのでは。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
赤井福 Instagram始めました
サクッと読める卓球の技術や知識、考え方を発信しています。
ブログでは紹介していない、ココだけの情報もありますので、
是非、フォローしてみてください。
Twitterも更新中
ブログの更新状況はもちろん、ちょっとしたつぶやきから
ラバーやラケット試打のリクエストも受け付けていますので
チェックしてみてくださいね。
コメント
はじめまして。カラーラバーについて検索してたらたどり着きました。パープルはヨーラしか出してないので興味があったので、AGRの記事は助かりました。かなり上級者向けなのがネックですね……
自分も現在ヴェガツアー黒+ヘキサーグリップ緑と、スポンジ色まで統一して使っています。子供の相手をすると「綺麗で良いなー」と言われます。
クァンタムXプロソフトのブルーも使いましたが、スポンジが薄ピンクだったので、次はピンクも試そうか検討中です。こちらはかなり扱いやすいので、試打する機会さえあらば若い子にも普及するんじゃないかと思います。ティバーは近年日本でのプロモーションに力入れてる印象があるので、是非頑張って欲しいです。
好きな色を選んでプレイ出来るなら、子供も大人も関係無く気分良いだろうし、どんどんカラーラバーが普及すれば良いですね。
ティバーが広がってくれると私もうれしいです。
AGRはお役に立てて良かったです。コメントありがとうございます。