ドイツアンチラバーの世界に、また一石を投じるラバーが出てきました。その名もサボタージュ(Sabotage)。ドイツメーカーなのに、フランス語で命名されたこのラバー、その意味は「妨害」「破壊工作」(労働争議)です。
日本語でもサボるという言葉がありますが、この語源がフランス語のサボタージュ。これまでディフェンシブなSabotage DEFは存在していましたが、今回はDEFがOFFに変わっています。一体どんなアンチラバーなのか、ディアボリックスペシャルと比較しながら、インプレッションしていきます。
パッケージは星の戦争?明らかに暗黒の人いるよね?
まずは、目を引くパッケージ
とりあえず卓球台はありますが、宇宙空間で光る剣をもった黒い人・・・。各所に権利大丈夫でしょうか?と聞きたくなる感じ。(ボールは全部半分に切られてるし)
とまぁ、突っ込みどころ満載なパッケージですが、中を開けると、出ましたよツルツルアンチくん。
モールドデザインはいつものマテリアルスペシャリスト同様、しっかり左側にサボタージュと入っていますね。
シートの感じは少し硬いかなという感じ。ディアボリックスペシャルほどのカチカチな感じではなく、薄さも感じるツルツルなシートです。
粒びっしり見えますね。光の感じでツルツル感分かりますでしょうか。
で、問題がこの緑色のスポンジ。守備主体になるはずのアンチラバーに、なんと攻撃系のスポンジを搭載しています。
スポンジの気泡はほとんど確認できず。ただ、従来のアンチラバーのようなフカフカなスポンジではなく、締まりがあって弾力があります。
そのため、今回用意したのは2.0mmですが、スポンジが厚くなればなるほど弾みが小さくなるアンチラバーの定説を覆し、2.0mmの厚さでもしっかりと跳ねる。
球突きするとその違いは一目瞭然。ディアボリックスペシャルではボールを落とせば3バウンドすればいいくらいのビタどまりですが、サボタージュOFFは6バウンドくらいします。ラケットを握りボールをこんこんやると、マークVの中くらいの弾みは感じられ、ツルツルな表面を抜きにすると、初心者用裏ソフトくらいの弾みがあるんですよ。
弾み方は、シートではなくスポンジで反発してる感じ。そのためボールの離れはめちゃくちゃ早いです。
ラバーカット前の重量は42.3g。アンチとしては重い方ですね。それでも裏ソフトに比べれば軽いですが。
カット後は31.2gになりました。接着はいつものバタフライ接着シートです。
打ってみるとどうなるのか、さっそく試打いきます。
基本的には何もしない!それがサボタージュと生きる道
まずは基本の面出し打ちから
ファーストタッチの瞬間からアンチではありえない飛距離が出ます。そしてボールが速い。押しも引きもせず、ボールの来る場所に面を出して待っていて、そのまま当てれば返球終了!まさに人間が卓球をサボっている状態です。
打感としてはふわっとした感じ。ほぼスポンジで打っていて、シートの硬さは感じられません。
シートのツルツル具合は最上級に近いのでは?と思うほど。回転の残り方は尋常じゃなく、軽いドライブでもしっかりと下回転がかかって返球されます。
ディアボリックスペシャルのように食い込ませて切るとか、弾き押すとかそういう感覚は一切必要なしという感じ。必要な感覚は、滑らせるかそうではないかということだけで、滑らせれば短く、そのまま当てれば長くボールが伸びていきます。
自分でコントロールしている感が、少し薄いのが怖いところ。私のようなマニュアル感覚好きな人だと、面をいじったり、切りに行こうとしたりして、滑ってミスが多くなります。粒高OXの打感ではなく、これは本質的にアンチの打感。ラバーを信じて自分は面を出し続け、ボールの後ろにラケットを持っていくというシンプルな動きができる方が、最大の威力を発揮するでしょう。
シート自体に引っ掛かりがほとんどないので、ボールに触った高さで、そのまま相手コートに飛んでいきます。ボールの上昇期に触るのはアンチの基本ですが、それをネットの高さで合わせられると、ネットスレスレを這うように飛んでいく。これには驚きました。
ツルツルアンチといえど、どこかしらは多少の摩擦が残っていて、ドライブ処理の際にはボールの上昇しすぎる点を、少し抑え込む必要があるのですが、サボタージュのシートはこれを必要としません。永遠に同じ高さで触り続ければ、低くビームのようなボールが飛んでいきます。
スポンジは、本当に攻撃系のテンションスポンジのような感じ。弾まな過ぎてミスということはほとんどなく、アンチと思いながら触ると、飛んでいきすぎるくらい。少し離れた位置からでも十分に飛距離が出るので、打球点を前で厳しくしなくても、返球できてしまうルーズさがあります。
ただし、勢いの強いボールに関してはしっかりと止める必要があります。反発だけをさせると、そのままオーバーミスなので、擦らないように注意しながらブロックを後ろに引き、勢いだけを吸収する感じ。この打球感覚は、ちょっと独特ですね。
ボールは明らかに速いです。速度が出ます。短く止めるのは不得意なので、コースを狙って深く速くボールを送り、相手を振り回すのがメインの戦い方になるでしょう。そこでチャンスメイクして、アンチの反対側に貼ってあるラバーで仕留めるという形がベスト。
ミート系の技術は非常に難しいし、やるもんじゃない
ミート系の技術は、非常にやりにくいです。スポンジの反発が大きすぎて飛距離が出るのに加えて、シートが薄く、スポンジの反発と相まって、ボールを持つ時間が異様に短い。そのためかなり強くミートすれば、一時的に食い込ませることはできますが、連打となると無理ですね。滑ってネットミスが大量発生です。
一発ミートも、相手のボールに勢いと回転が少ないことが条件。特にループドライブをカウンターなんて考えると制御は不可能でした。
ループをカウンターで触った瞬間に、ボールはラケットを離れ、回転は残ったまま。狙いどころに弾くこともできないうえ、下回転のボールはカットしたかのようにホップして飛んでいきました。ディアボリックスペシャルのようにミート力で回転無効化というのは期待できず、どんな打ち方になっても回転は残り続けるので、「振る」「押す」よりも、当てて入れることだけを考えてプレーするべきです。
返球自体は気持ち悪いほど回転が残るので、横回転は揺れて落ちる、縦系の回転はドライブをブロックなら無条件でぶち切れ、下回転を乗っけると相手コートで加速しながら飛んでいきます。(伸びるボールになる)
プレーヤーがやることは、正しい面を出して、相手コートに収まる勢いだけを計算し、ボールに当てるだけ。自動的にボールが変化し、自分が壁になりきれば、相手は変化のままに踊らされ勝手にミスしてくれるでしょう。
勝手に何もかもをやってくれるアンチラバー。それだけに、人間の方が精密に同じことを繰り返す必要もあり訓練が必要です。さらには、ラバーを使いこなすというのは到底無理なお話。ラバーの性能にお任せして、自分がラバーに使われるくらいの意識の方が、サボタージュとはうまくやれる気がします。
攻撃系スポンジということで、フォア側に貼って打ち込めるかなと思いましたが、イメージとは大きく違う結果に。OFFというのはプレーヤーの攻め気というよりも、ラバーが勝手に攻撃的なボールを送ってくれるという意味らしいです。
アンチのふわふわっとしたボールではなく、突き刺さるような低空飛行の鋭いボールを出したい!速いボールで相手を振り回したいという人には、このラバーはおすすめ。逆にアンチを使いながらも自分で変化を出したいという人には、ちょっと向かないかもしれません。
テンションラバーの多い中で、ボールのスピードが上がり、短く遅い球がカモにされる時代。粒やアンチを使って、ボールの遅さに疲弊しているプレーヤーには一度お試しいただきたい。異次元の高速変化ブロックを体感ください。
テンションラバーで連打しなければならない相手には結構効きます。強く打つための時間を渡さずに済むので、相手がドライブマンだとかなり嫌がるでしょう。
総括として、サボタージュ自体はブロック中心のアンチプレーヤーの中で、ボールのスピードが欲しい人、そしてラバーにお任せして返球したい人におすすめ。それ以外のマニュアル感や、食い込ませる滑らせるという感覚をお持ちの方で、アンチや粒を使っている方には、逆に難しいラバーになると思います。
良くも悪くもラバー次第。人間はサボっていていいですよというのが、サボタージュからのメッセージなのかもしれませんね。
個人の感想としては、ディアボリックスペシャルの方が、いろいろなことができて好きです。サボタージュOFFだと、ボールが長くしかなりませんし、変化は出ますが相手が同じようなボールを打ち続ける球質は単調になりがち。止める弾くのメリハリをつけるのが難しいので、選択候補からは外れてしまいます。
それでも面白いラバーであることには間違いありません。バックアンチ用のラバーとして使い、裏ソフトと組み合わせて、ラケットケースに忍ばせておきます。
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