卓球ではラバーとラケットが、ボールの威力やスピードに関係していると思われがちですが、実はシューズの影響って結構大きいんです。スイングを速く強くするためには、何と言っても体の土台がしっかりしていないとダメですよね。そこで効いてくるのが、地面と体をつなぐ「シューズ」です。
新年度を迎え、新たなシューズが数多く出てくる中、ひときわ目立っているのが、アンドロの「クロスステッププロ」でした。2024年期待の高性能シューズを、忖度無しのインプレッションしていきます。
この色使いはマジカッコいいぜ
先代となるクロスステップから、性能を大幅アップさせたのがクロスステッププロ。開発には、大島祐哉選手がかかわっています。
まずは、メーカーの公表数値を確認しましょう。サイズは22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29.5、30.5です。一般的な卓球シューズよりも少し小さめなので、普段使いのシューズサイズよりも、0.5cm大きめのサイズが推奨されています。甲材は人工皮革・合成繊維、底材は合成底、メーカー小売り希望価格13,200円です。
カラーは3色から選べます。ネオングリーン、ネオンピンク、ホワイトです。アンドロカラーのグリーンはもちろんですが、ピンクをカラバリに入れたのは素敵です。それも発色のいい蛍光ピンクときたもんだ。当然ながら、この色を買いました。
謳い文句としては、「かかとのブレ軽減で、ホールド感アップ!」、「足の内側に力が入りやすい設計(後述しますが、この点は少し注意)」、「クッション性UPで対衝撃性向上」の3つです。
先代のクロスステップは、1万円を切る価格でアンドロ独自の路線に切り込み、異例の大ヒットとなった一足。その勢いを維持したまま、新世代のシューズは走り出せるのか。検証していきます。
シューズをみると開発者の意図が十二分に伝わってくる
それでは、実際にクロスステッププロを見ていきましょう。
先代のメッシュデザインとは違い、クロスステッププロは人工皮革が多く使われています。それ故に、シューズ全体は硬めです。靴の形に強制力がありますが、窮屈な感じはしません。比較的幅広な設計なので、ウェーブドライブシリーズよりは履き心地は好きでした。
サイズ感としては、ムービングエースとほぼ同じ。少し幅広めなので、ムービングエースよりは大きいですが、ミズノ系のサイズよりは小さい。0,5cmから人によっては1㎝のサイズアップが必要かと。
アッパーが人工皮革なので、足がすっぽりとハマる感じは強いです。足先が広めで、指の窮屈さでサイズアップはしなくていいと思います。シューレースがオーバーラップで通されているのは、ガッチリ締め込んでくださいという意思なのか。ただ締めすぎると甲の部分が折れ曲がってしまい、シューズの形も変形するので、あまりきつく締めるのはお勧めしません。元々の形を守ってこそのシューズだと思うので。
履き口は広め。シュータンはアッパーと一体型ではなく別体になっています。ここまでこだわるならシュータンをアッパーに縫い付けるか、ソール部分からのベルトを通してほしかったかも。シュータンの位置で、結構履き心地が変わるので、しっかり目に引っ張って履いてほしいです。
全体的に、履き口は広く高くなっています。そのため、かかとの密着度は高く、動いても靴の中で足が動きにくいです。シューレースも、つま先部分は緩めにして、履き口近くをキツく結ぶと、足の動きはかなり抑制できます。ローカットですが、ミドルカットを履いているかのような安定感はGOOD。
ソール部分です。中央部の灰色のところには、少し硬めの強い素材を入れています。そのため、ソール部分も屈曲性はそこまで高くありませんが、足の動きに対して、ソールがしっかりとついてきます。無駄なねじれが抑えられており、踏ん張り時のパワーロスはかなり軽減されている印象です。
シューズの外側は、内向きに力をかけたときにグリップを最大限発揮するようなパターンですね。対してソールの内側は、上から面圧をかけたときに滑りにくい構造をしています。足裏の母指球で蹴り出し、母指球で止めるというのが、このシューズのやりたいことなのでしょう。
インソールを見てもそれがわかります。
インソールの内側と外側で厚さが違うのです。
分かりますか?内側が薄く、外側がぶ厚い。
上の写真は、つま先方向から見たものです。向かって左が母指球側(内側)で、右側が小指側になります。このインソールを見ても、足の内側(親指側)に重心を移動させ、親指側で踏ん張ろうとしているのが分かりますね。
さらに母指球への面圧を高くするための手法がこちら。
ちょうど、写真の右手親指が当たっている部分が、少し盛り上がっています。土踏まずよりも少し外側が盛り上がっており、母指球の位置と対角線にある部分です。ここを上げることにより、母指球への体重の乗りが、更に大きくなるのでしょう。
これが左足です。盛り上がりが見てわかると思います。
履いていて違和感はありませんが、なんとなくというかほぼ確実に、足裏の内側に体重をかけないといられません。膝もガニ股よりも内股気味になる感じ。卓球のオーソドックスな立ち方になるように設計されているようです。
この効果か、体重を乗せる系の技術、特にフォアドライブは威力が増しました。ボールの回転量も多く、勝手に伸びる良いボールが出ていくのです。ラケットもラバーも変えていません。ただ、シューズを変えただけ。それなのに、ラバーのレベルを2クラス上げたくらいの良い質のボールが出るようになりました。
基本的に、ドライブマンはこのシューズ履いて損は無いと思います。打球音も高くなり、しっかりと体の軸が出来上がって、ボールを打ち込める感覚。かなりいい感じです。
ただ、一つだけ。作り込みでNGな部分も。インソールを外さない限りわかりませんが、ソール部分の縫製が雑。糸が長めに飛び出している箇所もアリ、オーバー1万円のシューズでは、もう少し何とかしてほしかった。
ちなみに、27.0cmで片足の重量は296.8g(実測値)でした。卓球シューズとしては、少し重めの部類かな。ただ、履いていてその重さはそれほど感じません。ムービングエースが同サイズで267.5gなのですが、クロスステッププロの方が30gも重いとは思えない。逆にクロスステッププロの方が軽く、ムービングエースが重く感じます。
それだけ足へのフィット感は高いクロスステッププロ。今シーズンの新シューズの中では、間違いなく買いの一足です。が、もう少しだけ使用感の説明を続けます。そこまで読んでから、買うかどうかを決めてください!
偏平足はダメっぽいぞ!普段履きのスニーカーが外減りする人は要注意
実は私、このシューズを勇んで買ったはいいものの、現在は使用しておりません。6回の使用、合計24時間ほどの装着で、体に異変が現れました。
まずは、その異変から。変化に気が付いたのは3度目の使用、装着時間が9時間を超えたあたりからです。クロスステッププロを履いているときは良いのですが、脱いでから足の母指球のあたりが痛いのです。初めは動きすぎなのかなと思い放置。数日間隔をあけると足の調子は元に戻ったので、また履いて、違和感を繰り返しました。
4度目の使用後から、足裏の痛みが強くなり、卓球をしない日を作っても治らなくなりました。症状としては、足の親指を握り込む・もしくは反り上げると、母指球のところに痛みが出ます。特に反り上げるときの痛みが大きく、歩行中に足をけり出す動きでも痛みが出るようになりました。
何の異変かと思い、専門医に相談したところ、種子骨障害と診断が出ました。
母指球の裏側にある、軟骨部分に負荷がかかりすぎて、痛みが出ているとのこと。何か変わったことをしたかと問われたので、ケガをしたような動きは思い当たる節もなく、「靴を変えた」と伝えたら、見せてほしいと医師。クロスステッププロを見せると、「あなたの足だと、種子骨に圧がかかりすぎますね、コレ」と言われてしまいました。
安静と、靴の使用を停止し、別の靴を履いてプレーするように言われてしまうことに。クロスステッププロ断念です。
足のアーチが低い(偏平足や甲が低い)足の人は、クロスステッププロの姿勢強制力で、体へ無理がかかってしまう可能性があります。特に、普段履きのスニーカーで、ソールの外側が減っていくような人は、普段から足の内側に体重をかけて動くことが少なく、母指球が強い衝撃や大きな入力に耐えられなくなってしまうそうです。
私はドの付く偏平足であり、土踏まずが少ないです。また普段履きのスニーカーは、しっかりと靴の外側が減っていました。
クロスステッププロの使用を中止し、1週間ほどで症状は緩和の方向へ動いております。
・ガニ股
・偏平足
・靴の外側が減りやすい
・かかと側に体重が乗りやすい
という方は、使用を十分に吟味の上、使ってみてください。私と同じ症状が出るとは限りませんので、使用は個人の判断で。
痛みが出なければ、使い続けたかったクロスステッププロ。それくらい、シューズの性能は高いです。足裏の痛みも、今回はシューズが合わなかったと特定されましたが、万人に当てはまる話ではないのでご注意を。本稿は、クロスステッププロのネガティブキャンペーンではないのであしからず。
個人的には良い靴なので、多くの人に使って欲しいと思っています。自分の足には使えなくて、本当に残念無念です。
まずは一度履いてみることを強くお勧めします。シューズだけはね、ネットで買うと痛い目見ますよ。実店舗でサイズを合わせながら、少し高くても良いから合うものを買うに限ります。
個人的には、痛みが出たので、プロよりも先代のノーマルの方が、費用対効果も高く性能もまずまずで良いかな。ただ、クロスステッププロのネオンピンクは捨てがたい。どうせなら、初期のクロスステッププロでも、全部ピンク出してくれませんか、アンドロさん。
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赤井福 Instagram始めました https://www.instagram.com/akaifuku.tt サクッと読める卓球の技術や知識、考え方を発信しています。 ブログでは紹介していない、ココだけの情報もありますので、 是非、フォローしてみてください。
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コメント
初めまして。いつもブログでのレビュー拝読させて頂いています。
用具相談をしたいと思い連絡させて頂きました。記事とは関係無い内容ですので迷惑でしたらスルー、削除して下さい。
高校時代にフォアイップスになり、直そうと試行錯誤しているうちにドライブの打ち方がわからなくなりそこから現在に至るまでこれだ!というフォームが見つからないまま違和感を覚えながらドライブを打ってます。
最近知り合いから「ミート打ちならスイングにバリエーションが少なくフォームが一定になりやすいので表を使ったらどうか」とアドバイスを受けフォア表に挑戦しました。
使ってみると打ちやすくフォームが分からないという事も感じなかったので好感触でした。球が表にしては素直だと言われた事や元明治大学の池田和正さんに憧れていた事もありコバルトαに変更したところナックル具合や台上、十分な体制での対上回転は好感触だったのですが、対下回転でループが打てない、ハーフロングの球が打ちにくい、打点が下がった時にネットミスしやすい、優しくスイングして入れたい時に落ちるなどの難しさが見えてきました。
そこでコバルトαから回転系の一枚ラバーを使えば弧線と掴みがでて欠点を和らげられるのではないかと考え、スピンファイアoxを検討しています。
使用者の佐々木さん的には回転系の一枚ラバーでこれらの欠点を補えると思いますでしょうか?
個人的に擦るループが打てず時間を作れないのが一番気になるのですが、そうなると表ソフトを使ったほうが良いのでしょうか?
現在はSK7 FL フォアコバルトα(変更前はモリストsp) バックエボリューションmxp使用です。
また裏ソフトでの打ちやすさを考慮し特殊素材ラケット(手持ちは張本智和インナーALC、ゼバレート、ヒノカーボン)で合わせる事も考えてますが1枚ラバーには難しいでしょうか?
乱文にて失礼しました。
フォア面のラバーに何を求めるのか、その一点に尽きると思います。
イップスからのミート打ちなら、というアドバイスからフォア表にされて、イップスが良化したのであれば、それで十分なのかではないでしょうか。
「ボールが表にしては素直」と言われたため、コバルトαへというのは、いささか欲張りすぎな感じを受けます。
ナックルが出やすくなればなるほど、ラバーは使いにくくなるのが筋です。コバルトαにしたことで、良くなったフォアのイップスが再発してはいませんか?
元々モリストSPで良くなったのであれば、そこに戻すべきだと考えます。
ちなみに、1枚表でループをする場合には、粒目を同じ方向に倒しながら、粒の角に引っ掛ける感覚を養わなければなりません。
簡単に分かるのは、粒高ラバーをフォアで使って、ループドライブをかけてみてください。出来ていれば、粒高でループドライブが打てます。
もしもこれができないとなると、1枚ラバーでループ系のボールを打つのは難しいでしょう。結論としては、ループが打ちたければ、スポンジを入れてくださいということになりますね。
コバルトαは、緩い回転系のボールを出すのは難しいラバーです。シートが硬くて厚い、粒形状が円柱なので引っかかりにくいから。
ループ系の技術なら、普通のコバルトのX-2の方が、台形の粒なので引っかかりやすくやりやすいと思います。
スピンファイアのOXは、コバルトよりも球の持ちが短いです。確かに回転はかかりますが、現在の打ち方では回転がかかり切る前にボールが離れてしまうことでしょう。
また、コバルトαよりも格段に飛距離が出るので、台の中には収まりにくくなるはずです。
イップスも改善できて、相手も打ちにくい、でも自分が打ちやすく使いやすいラバーは、この世には存在しないというのが、回答になってしまいますね。
私なら、イップスを解消してくれたモリストSPを使い続けます。モリストでも十分にナックルが出ますし、一枚ラバーのようなピーキーなモノではないで、
「打ちやすさ」を最優先に考えて、ラバー選びは行っていきますね。
最後に、特殊素材ラケットを使えば、打感が曇り、ループ系の技術はより難しくなると思います。