正しく立っていると、シューズはどうやって減ってくるのか?シューズを新品に交換【卓球用具コラム】

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卓球

正しく立てるシューズとして大人気の「クロスステップ」は卓球王国ランキングでシューズ部門2位に輝く、話題のシューズです。ワールドラバーマーケットさんでの、様々な実験や検証の結果、正しく立つとはどういうことなのかがだんだんと判明してきました。

正しく立つためのシューズ選び

簡単に書くと、踏ん張る力がしっかりと地面に伝わるのか、その力を体がコントロールでき、よろめかずにバランスを取ることができるのか、といった具合になります。検証方法は、立位のままは怪我しない程度に、体側に下ろした片腕を下に引っ張ってもらうのが、シューズを履いて正しく立っているのか、または、正しく立てるシューズを履いているのかの検証になります。引っ張られる力に対して、しっかりと持ちこたえられるのか、それとも倒れてしまうのか、簡単にわかるのでやってみましょう。

今回は、私にとっての「正しく立てるシューズ」のミズノ・ロイヤルフェニックスを新品に交換する時期が来たので、履き込んだシューズのソールを見ながら、どういった変化があるのかを検証していきます。

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全部が均等に減るわけではないが、減っていないところもない

早速、シューズのソールを見ていきましょう。

母指球の少し上が最も減りの大きな部分です。蹴りだしの際に大きな力を受ける部分なので、ここは最も早く消耗していきますね。

つま先側の拡大写真です。内側から外側まで、均一な減り方をしています。

かかと側のアップです。こちらの方がわかりやすいかもしれません。普段の外履きの靴を考えると、かかとの内側や外側など、顕著に削れていく部分がありますが、内も外も同じように減ってきているのがわかります。以前までのシューズでは、一部分の減りが大きく、そこが使えなくなったら終わりということが多かったのですが、今回のロイヤルフェニックスは、靴も長持ちです。

ちなみに新品のソールがこちらです。先ほどの写真と比べてみてください

こちらが、昔履いていた、卓球シューズ、ウェーブドライブとウェーブメダルの使用後のソールの状態です。母指球の削れ方は似たような場所が減っていますが、ソールの外側の部分に関しては、ほとんど新品状態で残っています。クルマのタイヤでいうと「偏摩耗」している状態で、骨格やタイヤの取り付け位置、空気圧などに問題があると、偏摩耗が起きやすくなります。すなわち、体の骨格や筋肉、立ち方や靴の履き方などにより、シューズの偏摩耗も起こりやすく、それは、バランスの崩れた体の時に起きやすいものなのです。自分のシューズの裏、チェックしてみませんか?

特徴的なのが、「減っていない部分がない」という点です。卓球の動きを起こすうえで、シューズのソールを均等に減らしていくのは難しいです。特定の一か所に強い力がかかり、そこが最も早く減っていきます。

しかしながら、今回のロイヤルフェニックスについては、ほとんど使っていない減らない部位がないということが大きな特徴です。ウェーブドライブやウェーブメダルの際には、かかとの外側が特に使われない部位であることがわかり、そこだけソールが新品同様に残っていました。ロイヤルフェニックスでは、普段使われていなかったソールの場所まで、削れた跡があり、足裏全体が接地している時間が長いこと、さらに力が一点だけでなく、ある程度分散してかかっていることが読み取れました。バランスを取るための、力の使い方を教えてくれているのが、これらのソールの現状になります。

先日Xiaさんのクロスステップを拝見する機会があり、ソールを確認させていただきましたが、こちらも減らない部分がないという印象でした。均等な減りはしていないものの、減っていない部分もない、しっかりと足裏全体で必要なバランスをとっているのでしょう。

型崩れしにくいのには驚いた

卓球専用シューズの大きな特徴として、「素足感覚」「柔らかい」というものがあり、シューズ全体が柔軟に作られていることが多いです。特にアッパー部分が柔らかい素材でできており、足入れの感覚は良いのですが、使っていくと靴の形がすぐに変わってしまうことが多くありました。

クロスステップで特徴的なのは、アッパー部分の強度を上げている点です。今回履いたロイヤルフェニックスも同様で、靴自体の形が大きく変わらないように設計されています。

左が長く履いたもの、右が新品です。

バレーボールシューズの中でも比較的柔らかめなものですが、結構くたびれた状態でもアッパー部分からシューレスの部分が落ち込まず、足を入れる空間をしっかり作っていることがわかります。

同じくらい履いた、ウェーブドライブがこちらです。アッパー部分の素材は、こちらの方が硬いものを使っていますが、特に右足のシューレスの部分が落ち込んできて、形状を保てなくなっているのがわかります。素足感覚を維持するための構造の違いが、足を入れる空間の変化に繋がっていくようです。

どちらのシューズも、ナイロンのシューズ袋に入れ、さらに持ち運ぶときにはラケットなどをしまってあるゴルフ用の小さめのスポーツバックに詰め込んでいます。使用するときにしか外に出ることは無く、基本的にバッグの中で眠っている状態です。圧迫されながらしまわれているので、シューズにとってはかなり厳しい環境ですが、この環境下でも足入れ空間を変化させないような設計になっている靴の強さは、正しく立たせるシューズの重要要素ともいえるでしょう。簡単につぶれてしまう靴では、強制力があまり働かないため、自分の感覚で正しく立てる人はいいのですが、靴に立たせてもらおうと考える人には向かないでしょう。

ラバーやラケットと同じ、シューズも高けりゃいいってもんじゃない

高い卓球シューズは「軽い」「柔らかい」「ソールが薄め」というのが通説になっていて、アシックス、ミズノをはじめとした、シューズ作りは、この3要素が大きくなるほど、高価になっていきます。

逆に、エントリーモデルや、中位に位置するモデルでは、少し重め、ソールが厚め、アッパーが硬めと、先ほどの3要素をどこかしら削ったモノが多いのが特徴です。

正しい立ち方を会得しているユーザーが、さらなる運動性能向上を図って、軽い、柔らかい、薄いシューズを履くのは理にかなっていますが、それができていないユーザーはどうでしょう。性能が高くなり自由度が増すことによる弊害はないでしょうか?

やっとフォアハンドが打てるようになったユーザーに、アウターカーボンの何万円もするラケットに、ディグニクス05のようなラバーを貼ったらどうなるのか。もちろん打つことはできますが、本人としては何の感覚もなく、ボールがただただ飛んでいくだけですね。打球感覚を養うことは難しくなりますし、用具の性能を生かすこともできません。さらに自分の成長も止めてしまう可能性もあるわけです。ボールが飛びすぎる、それは強く打つことを止めなければならず、飛びすぎる用具でなんとか相手のコートに収めなければならないのは、スイングを止め、当てるだけになり、打ち方のバランスをとることなどできません。

同様に、自由度の高い高級シューズを履くと、どうなるのか。立ち方、動き方がわかる、実践できているユーザーにはまさに飛び道具です。速く動け、力を伝えやすいシューズは、履き心地も良く、軽くて、グリップ力の高いものですから、自分の動きにシューズが機能して、しっかりついてくるのか、それだけが問題になります。逆に、シューズの裏を均等に減らせないユーザーが、この高級シューズを履くとどうなるのか、立ち方が違う、靴の使い方も違うということは、せっかくの高いスペックを使い切ることはできません。さらに自由度が高すぎて、どうやって立ったらいいのかわからない、どうやって体を使ったらいいのかわからないという状態になり、先ほどの高級ラケット、高級ラバーと同様に、バランスを取ることができなくなります。

そういった中で、ある程度自由度の制限される中位層のシューズは、正しく立つためのシューズ選びに有効なのではないかと考えます。クロスステップやロイヤルフェニックスのように、シューズの機能を体に覚え込ませる、体をシューズによって変えてもらう必要があるのであれば、能力数値の高いシューズよりも、中位層の靴を使うことをお勧めします。スポーツシューズは、正しい体の動きを実現したいという思いの元に設計されているものがほどんどです。それらの能力を人間が超えていくのかどうか、つまりシューズを使う側になるのか、まだ使われている側になっているのか。シューズを使う側になれれば、それは性能で選ぶべきですし、シューズの性能の低さを感じられるでしょう。逆にシューズに使われている側にいる場合には、まだまだ、シューズの機能を体に覚え込ませる方が先になります。そのシューズを履いていて、機能をマスターし、体が新たな性能を持てるようになった時に、高級シューズへの変更を検討すればいいでしょう。

まとめ

今回のロイヤルフェニックスの劣化によって、シューズに使われている体の反応や、それに伴うシューズの劣化の仕方がわかりました。ラバーやラケットの状態をみるように、シューズのソールの状態も必ず確認するべきです。使われていない部分がある、それはシューズの性能を使い切れていない証拠でもあります。機能的なシューズが多いですから、まずはその機能を十分に使える体に変身し、そのレベルを上げていかれてはいかがでしょうか。



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