2021年の新製品として、話題と人気を集めているエボリューションMX-Dを出したTIBHARが、今度は、エントリーモデルの裏ソフトを出してきました。その名も「クレイジーブル」
日本語では狂気的な、狂ったという意味にとられるクレイジーという言葉ですが、英語では、熱狂的なとか夢中になるという意味があります。少々とっつきにくい名前のラバーですが、実際の使い心地はどうなのか、深くレビューしていきたいと思います。
名前とパッケージはイカツいが、トガったラバーではない
さて、問題のクレイジーブルですが、このパッケージ、どうでしょう?
黒地に赤い牡牛、まさにクレイジーブルですね。トップ選手が使用する、高性能ラバーのようなパッケージになっています。日本もドイツも含め、エントリーラバーは、名前やパッケージが優しい系のものが多く、「ザ・初心者」感があって、長く使いたくなくなってしまうんですよね。
その点、このラバーは、名前もパッケージも、なんだか強そう。お店で手に取るときにも、始めたばかりのビギナーから、ちょっと上手くなってきたプレイヤーまで、恥ずかしさがなく買えるはずです。
この辺も、G.Cフォースター氏は狙っているのでしょうか。ビギナー向けに見えないところが良いですね。
それでは、ラバーを見ていきましょう。
トップシートは、こちらです。光沢感があり、透明感の強いシートになります。同社のエボリューションシリーズはマット系の曇りの強いシートですが、クレイジーブルは粒までがしっかりと見えるくらい、透過性の高いゴムが使われています。
モールドはシンプルですが、しっかりと作り込んだ印象です。ゴム表面は柔らかく、球持ちの良さそうなシートになっています。
スポンジは黄色に近いオレンジ色となっています。モチモチ感が強いですが、気泡は小さめ。スポンジ自体はしっかりとした作りになっていて、カッターで切っても、ボロボロと壊れる感じはありませんでした。
少し明るめにしてスポンジ表面を撮っています。メーカー公表のスポンジ硬度は42.5度です。
カット前のラバー重量は58.0g、厚さは2.0を使っています。
カット後の重量は40.7gとなりました。(ラケットサイズ157×150)
トップシートとスポンジを含めた、ラバー全体硬度は43HCです。
柔らかい系の裏ソフトでは
- TIBHAR クレイジーブル 43HC
- VICTAS V11エキストラ 46HC
- GEWO ネクサスEL43 46HC
- ヤサカ マークV 45HC
- XIOM VEGA EUR DF 38HC
となっています。モチっと感が強く、他社のエントリーラバーよりも、触った感じは柔らかく感じました。指で押し込むと、ラバーの戻りも速く、しっかりとした弾力も感じられます。
物足りなさはあるが、エントリーラバー以上の実力はある
では、実際に打ってみた感想をお伝えしていきます。
今回使用したのはラケットにヤサカ・ギャラクシャ、ラバーはクレイジーブル、反対面にはスペクトルS3を貼り付けました。ラケット総重量は165.2gと、ビギナーが使用する程度の重さに抑えています。
フォアバックの軽打
初めに打って感じるのは、「しっかりと飛ぶ」ということです。同社のエントリーラバー「ラピッド」や、「マークV」のような高弾性ラバーよりは、飛距離が出て、テンション技術が投入されていることは感じられます。
打感は柔らかいですが、比較的シートは強めです。ボールを持っている時間は長く、コントロール性は抜群です。弧線は特に高いということはありません。擦ればしっかりと弧線が出ますし、弾けば直線的に飛んでいきます。基本打法を覚え、様々なボールの飛ばし方を覚えるにはピッタリのラバーでしょう。
スピード、スピンに関しては、普段使用しているMX-Dと比べると、大きく落ちますが、同様のビギナー系ラバーと比べると、しっかりと回転がかかり、スピードも乗ってくる印象です。似た感じのラバーでは、XIOMのヴェガヨーロッパや、VICTASのVJ07レギュラーがありますが、これらのラバーと比べると、スピードや回転の質は高めです。
フラッグシップ系のラバーを使用しているユーザーが打っても、ある程度のスピン・スピードが出ますし、普段よりも安定感があるので、印象は良いですね。一般的なエントリーラバーだと、フラッグシップラバーと同じ打ち方をすると、ボールは落ちるだけ、もしくは滑るだけになってしまうのですが、何とかボールを掴みきって運びましょうという努力を感じられます。
エントリーラバーに多い「この辺り方だと、私もう無理」的な性能ではなく、「何とか頑張るけど、それだけインパクト出せるなら私を卒量したら?」という声が聞こえてきます。安定感を求める中級層にも、十分使用できるラバーでしょう。これで定価4,290円は安すぎる。
強打(スマッシュ・ドライブ)
強く打ち込むと、気持ちのいいカキーンという音がします。柔らかいラバー特有の音ですね。ラバーとしては、強打の時には長めに触ってあげたほうが、ボールは安定するでしょう。
脱力してしっかりと回転をかけること。弾く系の技術でも、ボールの芯を見つけて、フラットに当てること、こういった基本の中でも、ボールタッチを養うために重要な感覚を、教えてくれるラバーです。
回転量が大きく出ない分、相手の回転に対する感度も低くなります。カウンター系の技術も安定し、相手のコートに収まります。ボールとしては深くはないですが、何球も返球できる安心感は、どの技術層が使っても好感を持てるでしょう。
インパクトが強くなくてもボールは走りますし、少々強くインパクトしてもラバーが負けることはありません。シートの変形もそれほど大きくなく、安心して強打ができます。
台上・サービス
硬めのラバーが好きな筆者からすると、ちょっと柔らかすぎてアンコントローラブルな感じは受けました。それは、しっかり切ったり、かけたりしたときに感じるもので、安定して入れるだけのレシーブでは、大きな不満はありません。
ツッツキ系よりも、フリックやドライブ系のレシーブの方がやりやすさを感じました。回転に対しては鈍感なので、下回転のボールでも、安易にフリックしやすいのは魅力の一つです。
エントリーラバーとしては反発が強いので、ストップは少々浮きます。回転を加えてストップを収めようとすると、ポワンと浮いてしますので、角度とボールタッチでどうにかするしかありません。まぁ、この硬度帯のラバーでは仕方ないですね。
サービスは、反発が少々大きいので、押さない、飛ばさないサービスの出し方を身に着けて出しましょう。タッチ感がわかっている人にはいいのですが、初心者が下回転サーブを覚えるという場合には、サーブの切り方を分かったうえで触らないと、回転はかけにくいです。
横回転やツッツキの角度を覚えるには最適なラバーです。回転の影響を受けてドライブが持ち上げにくいと感じている人や、複雑なサービスに対してレシーブができないと感じている方には、このラバーいいですよ。
まとめ
ビギナーにとっては、ボールの触り方を覚えられる良いラバーです。また、ある程度のタッチ感や技術を習得した方で、飛びすぎによる攻撃のミスや、回転の読み違いによってレシーブミスが多く、試合で勝てないという選手は、ある程度飛びはありますが、回転の影響を受けにくい、クレイジーブルのようなラバーは、有効に働くはずです。
ビギナーはフォアバック両面、女子選手も両面クレイジーブルでいいでしょう。男子選手で少し力がある方は、バック面に使用してみてはいかがでしょうか。また、フォアドライブがオーバーミス多く、まだいいタッチ感が得られていないユーザーの、矯正ラバーとしても使えます。
クレイジーブルという特徴的なラバーですが、ラバーの性能は超優等生ですね。とりあえず裏ソフトラバーを使って卓球を始めたい場合には、初めから1年半くらいは、クレイジーブルで十分です。中学校スタートなら3年間クレイジーブルでも問題なしかと。
コスパが高く、性能もまずまずのクレイジーブル、広まっていけば、エントリーラバーのスタンダードモデルになるでしょう。
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