筆者はラケットコレクターではないです。しかし、廃盤ラケットを比較的多く使います。その理由は安く手に入るからが大きいのですが、名品が見つかることもしばしばです。そんな筆者が出会ってきた、現在廃盤になっているラケットたちを紹介しながら、思いを馳せていきます。
中古卓球ラケットを購入する方の参考に。また現在、特殊素材ラケットが多い中で、昔の7枚合板のような、木の密度が高く、弾みの落ち着いたラケットを探している方にも、見ていただきたい内容です。それでは、いきましょう。
中古ラケットを選ぶうえで重要なポイント
廃盤ラケットの多くは、誰かの手に渡った中古品です。使用され、その状態は個体によってまちまちとなります。一昔前にはヤフオクしかなかった中古品売買のプラットフォームも、メルカリやラクマなど、初心者にも使いやすいものが増え、中古ラケットの取引件数は、10年前よりも格段に増えています。
つまり、現在は廃盤ラケットを手に入れやすい環境にあるということです。
中にはプレミアがついて、とんでもない値段になっているものもありますね。例えば、バタフライの旧蝶ロゴが付いたビスカリアとか、プリモラッツカーボンとか。今回は、こういったコレクター案件の話ではありません。
実際に中古ラケットを購入して、プレーに使用することが前提です。この前提に立って、購入する際に注意するべき部分をいくつか紹介しておきます。
ブレードに剥がれがあり、それが大きいものは避ける。ブレード修正品は避ける
中古品は傷ものであるのは仕方ないのですが、最も大切な、ブレード面に大きな剥がれがあるものや、素人が修正したラケットは、購入を避けたほうがベターです。ラケット本来の性能が発揮できないばかりか、重心がずれていたりして不具合が発生する可能性が高いです。修正に自信のある方のみ、ブレード面剥がれのラケットを購入するようにしてください。
ラケットサイドの凹みは許容、ただし削れや中の素材が出ているものなどは避ける
こちらも傷に関する部分ですが、ラケットサイドの汚れ、小さなへこみは許容範囲です。ただし、過度なへこみや、特殊素材ラケットのカーボンなどが見えるものは、避けたほうが良いでしょう。前述の通り、ラケットとして使用できる範囲を超えている可能性があります。
重さはできるだけ測ってもらうこと。重さまで商品説明に記載されているものが良い
ラケットは天然の木材を使用したもので、個体により重量差が大きくあります。さらに中古となると、保存状況や使用状況で、水分、汗などを吸い込み、変質しているものも多くなるでしょう。その時に目安となるのが重量です。
昔のカタログは、インターネットで簡単に見つかるので、そのラケットの規定内重量は確認できるはずです。その規定内重量から大幅に外れたラケットは、目に見えない内部の状況に不安があると考えていいと思います。
ラケット選びで重さは重要なファクターになります。商品説明にラケット重量が記載されている出品者は、卓球のことがある程度わかっており、その保管状況にも信頼がおけるのではないでしょうか。
気になる汚れは、水と歯ブラシで落とせることも
特にグリップに残る汗シミや汚れが気になるということも多いでしょう。これは、ある程度自分で解決することができます。用意するのは要らないタオルと水と歯ブラシ。歯ブラシに水を付け、グリップの中の汚れを掻き出すように擦ります。すると、タオルに汚れた水が、たくさん出てきます。グリップ自体の完全清掃はできませんが、簡易的に汚れを落とすことはできるので、お試しください。清掃後は、しっかりと乾かすことです。
また、削れる部分の汚れなら、紙やすりで削ってしまうのも良いでしょう。破損よりも汚れに対しては対応策が多くあるので、あまり気にする部分ではないです。
大きくはこの4点に注意して、購入相談をしてください。商品ごとの個体差があるのがラケットですので、調べられる情報は自分で調べ、適切な買い物ができることを祈ります。
往年の名作ラケットを紹介
私が実際に使ってきた廃盤ラケットたちを紹介します。廃盤になると分かってから新品購入したもの、中古で購入したもの等、入手経路は様々です。
スティガ:クリッパーウッドWRB(コニックグリップ)
私が使ってきたラケットの中で、最も歴が長く、現在も困った時には戻ってくるラケットです。クリッパーウッドは現在もモデルとして残っていますが、今のモデルは、昔のモノに比べて板厚が厚くなり、打球感が違います。また、もう歴史上のモノとなっているコニックグリップがあるのも、このモデルまでです。
現在のモデルとは配色が違い、グリップエンドにはYASAKAの文字が。スティガの輸入代理店をヤサカが請け負っていた頃のモデルになります。
私が使用するようになった時から、既に中古品でした。社会人選手が使用していたものを譲り受けた形になります。密度の高い木材の、少し曇った打球音、手に響く打球感は、一級品です。スティガラケットの中でも、YASAKAロゴが付く7枚以上の合板モデルは、しっかりと使用され、適切に保管されていると、ワインのように味わいが深くなる印象です。新品時には味わえなかった、奥深さが出てきて、より扱いやすく、柔らかさが感じられます。
既に生産されてから約30年を超える歴史をもつラケット。まだまだ現役で使えます。先日の全日本ラージ予選も、このラケットで戦ってきました。
バタフライ:プリモラッツ(コニックグリップ)
私が人生で2本目に手にしたラケットです。中学生時代のほとんどを、このラケットと過ごしました。名前のプリモラッツは、現存した選手の名前です。れっきとした選手モデルなのですが、プリモラッツ選手は、このラケットの上位モデルになる「プリモラッツカーボン」を使っていましたね。
初中級向けの5枚合板ラケットですが、板厚が薄く、しなりを感じやすいのが特徴です。非力な子供でも、ラケットのしなりを感じて打つことができます。軽量コンパクトで、両面に裏ソフトを貼っても重くなりにくく、またOXのラバーとの相性も抜群です。
入門用にしては、木の材質にこだわりを感じられ、20年以上経過した現在でも反りや曲がりが無く、十分使用に耐えられる作りとなっています。
バタフライの黒蝶モデルは、それだけで高値で取引されますが、ラケット自体の作り込みも、現在のモデルとは比べ物にならないくらい緻密で丁寧だったと思います。職人のこだわりを強く感じられるのが、昔のバタフライのラケットたちですね。
ヤサカ:ギャラクシャ
最近のモデルで、廃盤になったのが惜しいラケットの代表格が、ギャラクシャです。ヤサカのTOP GEARというブランドから出ていた、7枚合板ラケットになります。
重めのクリッパーウッド(旧モデル)を感じさせるデザインと、ラケットスペック。そして打球感も、非常にクリッパーウッドに近かったように感じます。ラバーを選ばず、裏ソフトユーザーはもちろん、表ソフトユーザーにとっても、感覚のいいラケットでした。手元にあるのは新品で購入したもの、個体重量は96gなので、ちょっと重すぎたかな?とも思いますが。
非常にスタンダードで癖が無く、広くお勧めできるラケットだっただけに、もう少し販売を継続して欲しかったですね。あまりに特徴が無いのが特徴というか、普通過ぎて無くなってしまったようですが、こうした普通の癖のないラケットって、今探すと少なくて、こういうラケットは希少だったなと感じます。
ヤサカ:シナジー
最近入手したラケットです。今のコーチング用ラケット(両面裏ソフト)は、このラケットを使っています。軽量で打球感が柔らかく、両面裏ソフトを貼っても振り抜きやすいのが良いですね。
このラケット、ちょっと変化球なラケットで、合板数は11枚(バルサ材を含む軽量洋材9枚、グラスファイバー2枚)なんです。それでも重さは80g以下(手元の個体は78.4g)と、特殊素材入り多枚数合板のラケットとしては、異常な軽量ラケットとなっています。
軽いラケットなのですが、打球感は詰まっていて、スカスカじゃないのが良いです。しっかりと強いボールを生み出せて、ブロックも止まる。軽いラケットでもボールに押されにくい木の強さが感じられる一本ですね。
新品の本体価格は7,000円とそこまで高くなく、現在取引されている中古品も3,000円前後からとお手頃です。軽いラケットでも打ち負けないものを探している方は、これおすすめの一本になります。
ティバー:サムソノフα
青いラケットのサムソノフαではなく、灰色のグリップのサムソノフαです。細身のグリップにコンパクトなブレード、それでいてブロッキングゲームにもってこいの長い球持ち、コントロールのしやすいラケットです。
それでいて、飛距離はしっかりと出るラケット(メーカー表示はOFF)なので、攻撃選手でも不満なく使えます。今は特殊素材ラケットが注目されているTIBHARですが、この時代の純木材ラケットも良いものが多いですね。
今では珍しい、グリップ寄りの重心位置を持ったラケットで、振っていても重さを感じにくいです。さらにブレードが小さいため、ジュニアやレディースでも使いやすい。グリップの細さだけをクリアできれば、どの世代のどの性別の人が使っても満足できるスペックですね。
7枚合板ラケットが多いですが、これにも訳があります。新品時の7枚合板ラケットよりも、ある程度使い込まれて、良い感じに木が落ち着いた7枚合板の方が、個人的には好きなんです。5枚合板だと、木の弱さが経年劣化で感じられるんですが、7枚合板は窶れ感が少ない。そして、木が馴染んでいくと、打球フィーリングが優しくなり、ボールの持ちが長くなります。
フォア面に表ソフトを使用する兼ね合いから、カキン系のラケットよりも、少し弾みが抑えられて、柔らかさを感じるほうが、良く感じる自分の好みが大きいんでしょうね。
まぁ、新品7合板が欲しいなら、現行品にいくらでもありますし、滲みた合板を探せるところも中古ラケットの良いところだと思います。
天然の木材を使っているため、生き物といえば生き物ですが、それゆえに味が出るのが卓球のラケットです。保管方法さえ間違わなければ、20年以上使えるものがほとんど、古さゆえの良さもありますから、中古ラケットをあえて選択する意味もあるでしょう。
現代は新たな技術で、バリバリのハイスペックラケットがどんどんと出ていますが、昔はユーザーにその性能を任せるラケットが多かった気がします。それゆえに、守備範囲が広く、多くの人に「良い」と言わせるものが多いですね。
中古ラケットの世界にも目を向けてみると、現代のラケットにはない、面白さが見つかるかもしれません。
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