ドイツ系テンション裏ソフトラバーのGEWOネクサスシリーズも取り上げてきて第4弾となりました。これまで、Nexxus EL Proシリーズの50度、53度、43度のスポンジ硬度の違いを見てきましたが、今回はスポンジ硬度48度のモデルです。WRMのXiaさんも本職ラバーに変更した、このNexxus EL Pro48とはどんなものなのか、解説していきます。
過去のNexxus EL Proシリーズの記事はこちらから
Nexxus EL Pro43
安定の品質、そしてスポンジは黄色に
Nexxus EL Proシリーズの特徴としては、安定した品質、そして強めのトップシートです。ここに様々な種類のスポンジが組み合わされることで、抜群の攻撃力や安定感が生み出されます。
Nexxus EL Pro48のパッケージは黒基調のものになり、43と似ています。斜めの線が入る位置がちょっと違うだけですね。シンプルでカッコいいです。
さて、開封してラバー表面を見ていきましょう。
トップシートのモールドデザインは、Nexxus ELシリーズで共通になっていて、そこからは43なのか48なのか、53なのか50なのかは見分けがつきません。厚めの弾力のあるトップシートは各ラバー共通のものとなっているようです。
スポンジは鮮やかな黄色です。こちらに48度の刻印が焼き入れされています。各硬度のスポンジ色が微妙に変わっているので、見る人が見えば、これは柔らかめ、硬めということがわかるようになっています。気泡は少なめの密度の高いスポンジですが、しっかりと弾力があり、球持ちは良さそうです。
カット前の重量は70.5gでした。2.1㎜を選んでいるので他のシリーズと同じ厚さなのですが、ぱっと見ちょっと厚めの印象です。おそらく個体差の部分でしょうが、今回手元に来たものは、少し重めの一品となっている模様です。
カット後の重量は50.8gとなりました。こちらは、いつものタイニーダンサー改(157㎜×150㎜のブレードサイズ)に貼り付けたものです。Pro43と比べると5g以上重くなり、Pro50とあまり変わらない重量になりました。この個体が重めというのは間違いないようで、おそらくPro50よりも若干軽くなるのがデフォルトなのではないでしょうか。
普通の打球感と普通の操作性、とびぬけた特徴はないが
では、試打と行きましょう。いつものタイニーダンサー改に、フォア天王星、バックにNexxus EL PRO48を貼って打っていきます。ラケット総重量は194gを超えました。
まずは対上回転の軽打です。
軽く当ててしっかりと飛んでいくラバーになっていて、48度という硬さをあまり感じない打感です。トップシートの球持ちはシリーズ共通で良く、しっかりと食い込ませなくてもボールが落ちることは無く飛んでいきます。相手が打ち込んでくる強いボールは、スポンジにまですぐに食い込んでくれて、安定してブロックが飛んでいき、飛びすぎず飛ばなすぎずの、丁度いいラバーになっています。
他メーカーでも硬度48度程度のラバーは多く展開されていて、現在のテンション裏ソフトラバーのスタンダート的なポジションになっています。テナジー系、ファスタークG1、V15エキストラなど、メーカーのメインラバーになる部分が多くなっていますが、これらのラバーでは「弾み」「ひっかかり」「強さ」というベクトルに、それぞれ主軸を置いているので、キャラクターの違うラバーに感じますが、Nexxus ELの48度は、これらのラバーの性能を平準化したようなラバーになっています。
弾みすぎて使えない、硬すぎて使えない、回転に敏感すぎて使えないというハイスペック裏ソフトの悩みを一手に引き受け、誰でも使いやすいハイパフォーマンスラバーとして提供されている印象です。
とんがった印象は、Nexxus EL PRO50の方が強く感じられ、こちらはスピード特化という感じになっていますが、50ほど早くなく、43ほど柔らかすぎず、なんでもそつなくこなせるラバーなんだなと感じました。
対下回転のドライブは、表面で擦ればしっかりループになりますし、ドライブスマッシュのようにミートを強くすると、トップシートはしっかりと引き攣れを起こしながら回転をかけて速く飛んでいくボールが打てるので、技術の引き出しが多ければ多いほど、それに応えてくれる性能です。回転に対する敏感性は小さいので、しっかりとスイングしミートしてしまえば、ある程度の下回転はドライブにして返せるでしょう。安定性が高い分、一撃の威力は多少劣りますが、安定して返球し続けられるラバーです。
先日のWRM動画の中でXiaさんと話が上がりましたが、「ドライブは守備的な技術に思える」ということが理解できる層には、とても使いやすいラバーなのではないかと思います。
回転量、ボールの速さ、打ちやすさが高いレベルでバランスがとられており、特徴と言える特徴はないのですが、安定して安心してボールを打てる一品です。
台上処理がやりやすい48度
この手のラバーで、48度の硬度をもつラバーでは、トップシートが柔らかくかつ薄めのものが多く、ツッツキが浮きやすいものが多くあります。台から出るボールに対して打ち込んでいく、自分から力をかけて入れていくボールは、薄めのトップシートの方がかかりが良く、打ちやすいのですが、強くインパクトして、ギュッと回転をかけるツッツキや切れたストップをすると、トップシートが限界に達して、回転をかける前にボールが飛び出し、ツッツキが浮きがちになります。
その点、Nexxus EL Pro48は、厚めのトップシートがしっかりとボールをつかみ、台上処理での強い回転をかけるためのインパクトを起こしても、シートがコシ負けしないので、鋭角にボールを送り出すことができます。この感覚は、同シリーズのNexxus EL Pro50に近く、本当に硬い粘着ラバーほどではないのですが、台上で切る技術は、意のままにコントロールできる印象です。ただ角度を合わせて当てるだけというよりは、少し自分の回転をつけて返すことのできるユーザーに是非使ってもらいたいラバーです。
Xiaさんが使う意味も納得
冒頭でもお話ししましたが、WRMのXiaさんが本職ラバーを、Nexxus EL Pro48に変更しました。
片面ペンドラのXiaさんがラバーに求める条件として、Nexxus EL Pro48が合致したということでしたが、それがよくわかりました。
シェークや裏面を使うペンスタイルとは違い、片面しかラバーのないペンドラスタイルは、攻撃から守備まで、様々な技術を一枚のラバーでこなさなければなりません。シェークハンドの場合、フォアは攻撃が得意、バックがブロック重視という場合には、フォアに攻撃のしやすいラバーを貼って、バックに守備のしやすいラバーを貼ればOKですが、こういった考え方が片面ペンドラではできません。
ドライブも、スマッシュも、ツッツキもブロックも、アプローチの違う技術を1枚のラバーで行う場合に、特筆した性能は必要なく、すべてにおいてバランスがとられていて、それが高い次元で融合していることが必要となります。
それらを備えたラバーがNexxus EL Pro48であり、いい意味で普通なのですが、この普通のラバーが今、ラバー市場の中からは姿を消している状態でもあります。
セールスコピーとして「抜群の回転性能」「驚異のスピード」といったものをつけるほうが、売れ行きも良くなりますし、ユーザーも選ぶ際に、コピーが響くので売れやすいという点があります。しかしながら、本当に使用した場合に、その回転量やスピードを使用する機会はプレーの中での一部の割合だけです。その一部のハイスペックな性能を取り、その他の技術がやりにくい、ミスが出るということでは、卓球というスポーツを進めていく中で、大きな壁にぶち当たるのが早くなるでしょう。
中庸的なラバーというのは現在では希少な存在となり、その代表例としてNexxus EL Pro48はトップクラスに君臨するはずです。
まとめ
Nexxus EL Pro48は、普通のハイテンションラバーです。テンションまみれのこの市場の中では、あまりテンションの恩恵を受けられないようにも感じますが、トータルバランスの高いこのラバーは、卓球を上手くやっていくうえで、ユーザーに手に取ってもらいたいラバーの一つです。迷ったらこれを選んでおけば間違いないという存在、昔のマークVやスレイバーに近いかもしれません。バランスの取れたラバーであるNexxus EL Pro48は、ハイスペック競争が進むラバー市場の中に一石を投じる存在になっていくでしょう。
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